電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

デュ・プレの演奏でディーリアスの「チェロ協奏曲」を聴く

2010年11月13日 06時02分47秒 | -協奏曲
エルガーのチェロ協奏曲を目当てに購入したジャクリーヌ・デュ・プレ盤を、通勤の音楽として繰り返し聴いていると、振幅の大きい演奏が、エルガーの音楽をダイナミックに表現していることがよくわかります。と同時に、併録されたディーリアスのチェロ協奏曲が、これもまた素敵な演奏、音楽です。あまりおなじみではなかったこの音楽に親しむきっかけとなり、若い頃は心惹かれなかった英国音楽の魅力を再認識しました。

曲は、レント~コン・モート・トランクィロ~レント~コン・モート・トランクィロ~アレグラメンテと、全曲が切れ目なく演奏されます。最初のごく短い「レント」で、デュプレのチェロが魅力的に登場すると、ハープを含む多彩な管弦楽の響きが移り変わる中で、独奏チェロが、ゆらぐように優しく歌います。この気分は、たぶん刻苦精励型とは違う、遊び人の優しさに通じるのかも(^o^)/
ゆったりしたテンポで展開される音楽に浸っていると、手足を伸ばしてまどろむような気持ちよさがあります。

ディーリアスは、1862年、英国で羊毛会社を営むドイツ人の両親の間に生れ、1934年にパリで没しているとのこと。家業を継ぐのが嫌でアメリカに渡り、音楽院に入学したのは成人してしばらくしてからでした。30代半ばまで芽が出ず、おそらくボヘミアンな生活を送ったのでしょう、晩年は梅毒による脊髄瘻で車椅子生活となりました。時代的には、サルヴァルサンの発明(1910年)の恩恵にあずかるはちょいと早すぎた世代かと思われます。

イギリスの指揮者ビーチャム卿は、ディーリアスの音楽を支持し紹介したことで知られていますが、このCD(EMI TOCE-14049)では、同国・やや若い世代の指揮者サージェントが指揮するロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団がバックをつとめています。録音は1965年で、御大サージェントは貫禄の70歳、デュ・プレはといえば、恐れを知らない21歳。彼女は、16歳の劇的デビューから難病発症までの10年間の、ちょうど中間頃の時期です。エルガーの劇的な悲壮感もいいけれど、このディーリアスの、たゆたうような優しい響きも、実にいい演奏、録音です。

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