最近の通勤の音楽は、何を思ったか、モーツァルトの交響曲第40番、あのト短調交響曲をずっと聴いております。演奏は、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団、1970年五月に来日時のライブ録音です。
季節は秋、麓まで下りてきた紅葉が見事な郊外路を走る車の中で鳴り響くト短調の交響曲は、なんとも見事の一言。39年前の初夏の夜、NHK-FMに耳を傾けていた若い日々(*1)を思い出します。
添付のリーフレットに記載の、大宮真琴氏の楽曲解説によれば、作曲年代は1788年だそうで、楽器編成は Fl(1), Ob(2), Fg(2), Hrn(2), 弦楽5部、(改訂版ではClを追加)とのこと。
第1楽章、モルト・アレグロ、ト短調、2/2拍子。例の、タララン タララン タラランタンという主題の続きが、タララン・タララン・タラランランであって、タララータララータララーラーではない。このあたりに見られるようなリズム感の切れの良さが、愛聴する要因の一つです。一時代前の濃厚なロマン的演奏とは異なり、リズムのしなやかさは、一流のスポーツ選手の体の動きのようであり、かつ劇的な要素もあって、どこかしらロマン的な香りを感じさせます。
第2楽章、アンダンテ、変ホ長調、6/8拍子。緩徐楽章ではありますが、夢見るように優しく穏やかなものというよりは、繊細で気品をたたえながらも、どこか憂いや不安を秘めた音楽であり、演奏です。弦楽が中心ですが、さりげなく用いられる木管の響きが効果的。
第3楽章、メヌエット:アレグレット、ト短調、3/4拍子。優雅なメヌエットというには異形の、緊張感に満ちた楽章です。弦楽セクションは、高弦と低弦と、異なるリズムを刻む二つのグループが対比され、提示のときのバランスとはだいぶ異なる形で、反復時にはチェロやコントラバス等が強調される、その迫力にどきっとします。いっぽうトリオ部は、木管楽器の見事さがたいへん印象的です。
第4楽章、アレグロ・アッサイ、ト短調、2/2拍子。前楽章から持ち越された緊張感が激しい情熱として噴出する楽章です。鋭い明暗の対比と、速いパッセージでも少しも乱れないアンサンブルが、切れ味鋭いリズムで劇的なクライマックスに向かう様子は、オーケストラ音楽におけるフィナーレの醍醐味の一つでしょう。
当日、NHK-FMでは、セル指揮クリーヴランド管の練習風景も放送していました。このモーツァルトの40番も取り上げており、セルがフレーズを歌いながら練習を繰り返す様子(*2)に、音楽家たちが目指すものの高いレベルに感銘を受けたものでした。
それにひきかえ当方は、通勤の車中でCDを反復して聴いております。少しばかり申し訳なく思いながら、でも内心では、ずっと聴きつづけてきた40年来の音楽愛好家の幸福を、かみしめるのです(^_^)/
参考までに、演奏データを記します。ベーム盤は、晩年テンポが遅くなる前の、60年代の録音。こちらも、いい演奏です。
■ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団(1970年来日演奏会)
I=8'15" II=8'21" III=4'58" IV=5'09" total=26'43"
■カール・ベーム指揮ベルリンフィル(1961年12月)
I=8'21" II=8'02" III=4'46" IV=5'03" total=26'12"
(*1):セル/クリーヴランド管の来日公演ライブ録音のこと~「電網郊外散歩道」
(*2):どこかのブログで、この練習風景でのセルの指示内容を聞き取り、日本語に訳した記事を見かけた記憶があるのですが、ちょいと探せませんでした。残念(^o^;)>poripori
季節は秋、麓まで下りてきた紅葉が見事な郊外路を走る車の中で鳴り響くト短調の交響曲は、なんとも見事の一言。39年前の初夏の夜、NHK-FMに耳を傾けていた若い日々(*1)を思い出します。
添付のリーフレットに記載の、大宮真琴氏の楽曲解説によれば、作曲年代は1788年だそうで、楽器編成は Fl(1), Ob(2), Fg(2), Hrn(2), 弦楽5部、(改訂版ではClを追加)とのこと。
第1楽章、モルト・アレグロ、ト短調、2/2拍子。例の、タララン タララン タラランタンという主題の続きが、タララン・タララン・タラランランであって、タララータララータララーラーではない。このあたりに見られるようなリズム感の切れの良さが、愛聴する要因の一つです。一時代前の濃厚なロマン的演奏とは異なり、リズムのしなやかさは、一流のスポーツ選手の体の動きのようであり、かつ劇的な要素もあって、どこかしらロマン的な香りを感じさせます。
第2楽章、アンダンテ、変ホ長調、6/8拍子。緩徐楽章ではありますが、夢見るように優しく穏やかなものというよりは、繊細で気品をたたえながらも、どこか憂いや不安を秘めた音楽であり、演奏です。弦楽が中心ですが、さりげなく用いられる木管の響きが効果的。
第3楽章、メヌエット:アレグレット、ト短調、3/4拍子。優雅なメヌエットというには異形の、緊張感に満ちた楽章です。弦楽セクションは、高弦と低弦と、異なるリズムを刻む二つのグループが対比され、提示のときのバランスとはだいぶ異なる形で、反復時にはチェロやコントラバス等が強調される、その迫力にどきっとします。いっぽうトリオ部は、木管楽器の見事さがたいへん印象的です。
第4楽章、アレグロ・アッサイ、ト短調、2/2拍子。前楽章から持ち越された緊張感が激しい情熱として噴出する楽章です。鋭い明暗の対比と、速いパッセージでも少しも乱れないアンサンブルが、切れ味鋭いリズムで劇的なクライマックスに向かう様子は、オーケストラ音楽におけるフィナーレの醍醐味の一つでしょう。
当日、NHK-FMでは、セル指揮クリーヴランド管の練習風景も放送していました。このモーツァルトの40番も取り上げており、セルがフレーズを歌いながら練習を繰り返す様子(*2)に、音楽家たちが目指すものの高いレベルに感銘を受けたものでした。
それにひきかえ当方は、通勤の車中でCDを反復して聴いております。少しばかり申し訳なく思いながら、でも内心では、ずっと聴きつづけてきた40年来の音楽愛好家の幸福を、かみしめるのです(^_^)/
参考までに、演奏データを記します。ベーム盤は、晩年テンポが遅くなる前の、60年代の録音。こちらも、いい演奏です。
■ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団(1970年来日演奏会)
I=8'15" II=8'21" III=4'58" IV=5'09" total=26'43"
■カール・ベーム指揮ベルリンフィル(1961年12月)
I=8'21" II=8'02" III=4'46" IV=5'03" total=26'12"
(*1):セル/クリーヴランド管の来日公演ライブ録音のこと~「電網郊外散歩道」
(*2):どこかのブログで、この練習風景でのセルの指示内容を聞き取り、日本語に訳した記事を見かけた記憶があるのですが、ちょいと探せませんでした。残念(^o^;)>poripori
ベーム、ベルリン・フィルは持ってます。十八番であるカラヤン、ベルリン・フィルとウィーン・フィル。バーンスタイン・ウィンフィルといったおなじみのものやピノック、イングリッシュ・コンサートといった古楽器のもの。そんな中で「DENON CREST1000」シリーズのサヴァリッシュ、チェコ・フィルやブロムシュテット、シュターツカペレ・ドレスデンはN響指揮者であり、オーラを感じさせる。やはり、余計な演出を加えないのか、古典派モーツァルトにマッチしたサウンドとなっています。
こちらは諸事情から更新を一時停止してしまいましたが、narkejpさんは毎日更新され、私とは気力が違いますね。
日本語訳ではありませんが,セル/クリーブランド管のリハーサル風景はエキスポ’70クラシックス(http://sound.jp/maplelab/fmbc/fmr.htm)にあります。ご存じかもしれませんが。
それにしても,クリーヴランド管の弦のソノリティの美しさは格別です。本当に素晴らしいね。
音楽そのものからは少し離れますが,私はライナーの表紙の写真も大好きです。厳格で有名だったセルが,着物姿の2人のお嬢ちゃんの手をとりながら笑顔で万雷の拍手に応えています。コンマスも満面の笑み。マジェスケでしょうか。
この演奏会の模様は私も録音しました。
デッキはソニーのTC-6360、テープは同じくソニーのSLHというものでした。
大事に聴いていたのですが、ある日間違って録音に使ってしまい大変ガッカリした思いをしました。このCDが発売された時はほんとうに嬉しかったものでした。
セルとクリーヴランド管の練習風景は、近年にもNHK-FMで放送されたことがありましたが、録音技術の恩恵を感じます。ご指摘の、二人のお嬢ちゃん、今は何をされているのでしょうか。興味深いですね。
そういえば、来年は2010年、セルとクリーヴランド管の来日そしてセル没後40年になるのですね。たしか、演奏会時の国歌演奏もエアチェックしてあったはず。機会を見て、練習風景やら二枚のCDの中身やらをパソコンに取り込み、あの日の演奏会を連続して完全再現してみようかと計画しております。幸い、5月22日は土曜日のようですね(^_^)/
仰るとおり冒頭の“タララン タララン タラランタンという主題”、
これが耳に入ったとたんに、時の流れがまったく特別な意味を持つような、そんな感覚になります。
セルの演奏では、このことが手にとるように分りますね。
音楽を支える土台がとてもしっかりしているのでしょう。
それを確実にしかも美しく表現できるセルとクリ-ブランド管、
ほんとうに素晴らしい演奏と思います。
セル好きの私ですが、
1970年の来日時は残念ながらまだクラシックに目覚めておらず
それから五年近く経ってからセルに出会いました。
これは私にとっては一生の不覚、
ちょっと大袈裟ですけれどそんな思いです。
国歌の演奏は、2000年に発売の『セル没後30年記念・ジョージ・セル/クリーブランド管弦楽団の芸術』にプレミアムになっていましたね。『没後30年記念』のCDの帯(だったか?)を何枚か集めて送ると貰えました。めったに聴きませんが、その8cmCD、手元にあります。
国歌の演奏は、プレミアムCDだったのですか。なるほど、それでNHK-FMで放送できたのですね。納得できました(^_^)/