電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第179回定期演奏会を聴く

2007年03月25日 07時44分39秒 | -オーケストラ
年度末の土曜の夜、山形交響楽団の第179回定期演奏会を聴きました。指揮はギリシアの国立アテネ管弦楽団の常任首席指揮者であるバイロン・フィデチスさん。背の高い、ちょっとスポーツ選手を思わせる風貌の、しかし物腰はたいそう穏やかな人です。

恒例の指揮者のプレトークは、ドイツ語で行われました。小熊さん(?)というすてきな女性の通訳がつき、フィデチスさん、もっぱら通訳の女性のほうを向いて話します。曲目選定の理由、特に最初に取り上げたギリシアの作曲家アクシオーチスGeorgios Axiotis(*)について、など。自分のイメージの中の日本は、「日出づる国」なので、太陽に関係する曲目を選びました。また、アクシオーチスがロシアで生まれていることから、ロシアのチャイコフスキーの交響曲を選びました、とのこと。

■アクシオーチスについて

ギリシア人の両親のもとにロシアで生まれたアクシオーチスは、アテネに戻り、音楽の才能を見出され、イタリアのナポリの音楽院で学ぶ。基本的な音楽性は、レオンカヴァルロやマスカーニ、プッチーニなど、ヴェリズモの影響を受けているとのことです。その後、ギリシアに戻り、学んだものがギリシアの民族音楽と結び付き、作曲を続けますが、不幸なことに狂犬に噛まれ、49歳で亡くなりました。その後、彼の作品を出版しようという動きがあり、この音楽「Daemmerung(黄昏)」が、日本の画家の美しい絵画に通じるものを感じます。

■山形についての印象は?

私はギリシア北部の出身で、山が多く雪が降る風景がよく似ており、とても気に入りました。リハーサルで時間はなかったのですが、公園と城跡を見に行きました。人々が礼儀正しくきちんとしていることにたいへん好印象を持ちましたし、オーケストラの人たちも、たくさん親切を示してくれました。


1曲目、アクシオーチス作曲「Daemmerung(黄昏)」、静かな弦楽と分散アルペジオのようなハープで始まる中に、澄んだトライアングルの音が静かに響きます。そっとホルンが入って来て、木管が加わり、静かなゆっくりした美しい音楽が展開されます。やや哀切な響きの中に感情が盛り上がり、やがて静かに潮が引くように終わります。いい音楽を聴かせてもらいました。指揮者のフィデチスさん、胸に手を当てて聴衆に感謝です。聴衆からも、あたたかい拍手がおくられました。

2曲め、シベリウスのヴァイオリン協奏曲。ライトの加減か、やや水色っぽく見えるグレーのドレスの滝千春さんが登場。今年二十歳になる小柄なお嬢さんで、指揮者のフィデチスさんと並ぶとずいぶん違いますが、ステージマナーも堂々としていて、もう立派なソリストです。ゆったりめのテンポで、小柄な滝さんのヴァイオリンから、豊かな音が放出されます。オーケストラの演奏の間、体をゆらして音楽に入り込み、独奏部は見事な技巧を聴かせます。歌うところは充分に歌い、素晴らしいヴァイオリン!山響も、チェロとヴィオラが頑張り、充実した音になっていました。特に第3楽章、オーケストラの総奏に続き、ヴァイオリンが天馬空を翔けるような活躍!

休憩の後、チャイコフスキーの交響曲第4番です。第1楽章、始まりはゆっくりしたテンポで、流れるようにていねいに指揮します。第2楽章、弦に木管が森の小鳥のように歌うところなど、木管セクションがお見事、良かった~。第3楽章、弦がピツィカートで通すと言う、なんとも度胸のある(?)音楽、ステージ上で強弱が左右に動く様子が面白い。ObとFgが入り、Flとピッコロが入るところあたりから活気づき、繰り返しの後金管もちょっとだけ出番があって、ピツィカートで終わり。第4楽章、気持ちよく寝ていた人もびっくりして目覚めるような大太鼓とシンバルの衝撃で始まります。大太鼓の女性奏者の方、気分よさそう。一転して快速テンポも衝撃を強め、トライアングルが効果的。金管の低音の咆哮と突然の全休止。このあたりは作曲者のうまさでしょう。Hrnが場面を巧みに転換し、ティンパニが盛り上げます。再びシンバルの炸裂と大太鼓の衝撃を経てオーケストラの総奏の中に盛り上がり、大拍手。いや~、チャイコフスキー節ですねぇ。堪能いたしました。

山響でシベリウスのヴァイオリン協奏曲を聴いたのは、今回で二度目です。前回のソロは、千住真理子さんでした。まだ若く、ぐんぐん成長すると思われる滝千春さん、ぜひまた実演を聴きたいものです。今度は、プロコフィエフの第一番あたりがいいなぁ。終演後のファンの集いで、フィデチスさんも、さっそくアテネ管のソリストとしてアプローチするつもりだ、と話していました。

会場は山形県民会館、ホールのキャパシティはあるのですが、響きは山形テルサホールのほうが好きです。でも、いい演奏会でした。

(*):パンフレットには、Gergios Axiotis と表記されていましたが、Google で検索すると Georgios Axiotis と出てきます。もしかすると、パンフレットの誤記でしょうか。
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4 コメント

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いいプログラムですね (よし)
2007-03-25 21:11:29
シベリウスのVn協もチャイコの4番もは大好きです。
私もボチボチ地元のオケを楽しめるようになりました。やはり生が1番ですね。
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このプログラムは、 (narkejp)
2007-03-25 22:17:36
ギリシアの作曲家の初めての曲というマニアックな面も持ちながら、若手の実力派ソリストによるシベリウスのヴァイオリン協奏曲という人気曲を中核に、聴衆が喜ぶチャイコフスキーの四番の交響曲という組み合わせ。このプログラムは、かなり工夫されたものですね!なんてったって、地元オーケストラの演奏を楽しめるのがなによりですネ(^_^)/
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チャイ4 (Souffle)
2007-03-26 04:12:11
こんにちは。演奏そのものは良かったですね~!
県民会館の批判というか「新会館」建設要望を山響のBBSに書いてしまいました。。。(^^;;;

チャイコの4番。高校の時、ブラバンでこの4楽章の編曲版に挑戦したことがあります。あの速い速いパッセージを「空中分解!」と絶叫しながら演奏した苦労を思い出し、思わず体をゆすりながら聴いたため、一緒に言った家内に「あなた、体動かしすぎ!のけぞりすぎ!」とたしなめられてしまいました。。。(悲)
その時、一緒に演奏した仲間に、前山響正指揮者で先日『コジ・ファン・トゥッテ』を振った佐藤寿一氏がいたのですよ。
演奏そのものは小さなアクシデントはありながら、なかなかいいものでしたが、どうしても2ヶ月前に胸震わせた「テルサ」での「ブル4」と比較してしまってだめですね。
narkejpサンも、あの公演後のインタビューの場にいらしたのですね。う~ん、近くに立っておられたのかも知れませんね。
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Souffleさん、 (narkejp)
2007-03-26 06:55:59
コメントありがとうございます。チャイコフスキーの4番の交響曲は、速いテンポで一気呵成に突進するタイプの演奏が勢いがあって好きですが、演奏するほうは大変でしょうね。佐藤寿一さんの「コジ」は楽しかった!ベーさんは内容がお気に入りではなかったかもしれませんが、あの重唱オペラは、声楽好きにはほんとに面白いですね。今回は、家内が用事でダメでしたので、私一人でいい席を取って楽しみました。
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