電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩。時々は実際に散歩を楽しみます。

池井戸潤『下町ロケット・ガウディ計画』を読む

2018年10月24日 06時03分53秒 | 読書
小学館文庫で池井戸潤著『下町ロケット・ガウディ計画』を読みました。2012年の冬に、前作『下町ロケット』を読んで(*1)から、もう六年以上経っていることに驚きながら、佃製作所に舞い込んできた謎のバルブ部品の試作の話を読み始めたら、もう大変、思わず引き込まれて一気に読んでしまいました。

今回の話は、帝國重工に継続して納入しているロケット用バルブ部品の話にも、新規に試作依頼があった人工心臓「コアハート」のバルブ部品の話にも、共通して絡んでくるライバル企業サヤマ製作所との軋轢です。佃 vs サヤマ。経歴も社風も考え方も違う対立に加えて、貴船 vs 一村 という医科大学の心臓血管外科の医師どうしの対立もあり、以前の帝國重工におけるトラブルで佃製作所を憎んでいる者や、許認可権限をかさに威張る役所の人間なども、複雑な動きをします。そういったしがらみの中にあって、娘を失ったサクラダの社長の思いや佃製作所の若い社員たちの奮闘など、思わずじんとくる場面もありました。

あらすじを追うことは、これから読む方々にとってはせっかくの作品の興趣を損ねる面がありましょうから割愛いたしますが、思わず一気読みしてしまう面白さでした。



心臓外科手術といえば、先年老母の経カテーテル大動脈弁置換術に立ち会う経験(*2)をしたばかりです。トイレに行くためにわずかな距離を歩くにも、途中で一休みしなければいけなかったのに、手術後は90歳を過ぎてなお、再び畑に出て二時間程度の畑仕事で野菜作りを楽しめるようになっています。大動脈弁と言えば、まさにこのバルブに相当するものではなかろうか。たかがバルブ、されどバルブなのです。心臓という収縮型ポンプシステムのキー・デバイスと言っても良いでしょう。その意味でも、リアルに面白く読むことができました。

(*1):池井戸潤『下町ロケット』を読む~「電網郊外散歩道」2012年2月
(*2):リアルタイムに見る経カテーテル大動脈弁治療(TAVI)に感動する~「電網郊外散歩道」2017年7月


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