電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形弦楽四重奏団第77回定期演奏会でオネゲル、ベートーヴェン、モーツァルトを聴く

2020年10月13日 06時01分04秒 | -室内楽
久しぶりの室内楽の演奏会、山形弦楽四重奏団第77回定期演奏会に行ってきました。10月12日の月曜の夜、勤め先から山形市の文翔館に向かい、議場ホールに入ります。入場前にはまずアルコール消毒、検温があり、万が一の感染事態に備えて連絡先住所を記入して入場。ホール内は、いつもよりも間隔を広げてゆったりとした座席配置です。これも、新型コロナウィルス対策の一環でしょう。

開演前のプレトークでは、ヴァイオリンの中島光之さんが、現在の山形の状況を概括して話しました。山響入団以来20年以上になり、何度か経営危機があったが、今度こそ駄目かと思ったら、山形市がすばやくクラウドファンディングを立ち上げてくれて、県も聴衆の皆さんも応援してくれて、今は山形県内はコロナが落ち着いているので、普通に演奏活動ができている。これはほんとに稀有な事態で、山形県民が文化を大切にする現れだろうと感じる、とのこと。近隣の小学生の社会科の勉強で新県民ホールに見学に来るのだそうですが、新しいホールで山響の団員が交代で対応し演奏を聴かせるようにしているとのこと、今朝も中島さんが当番にあたっており、小学生に話と演奏をしてきたのだそうです! それはいいことですね。なんだか楽しくなります。

さて、本日の曲目は、

  1. オネゲル ヴァイオリンとチェロのためのソナチネ H.80 (1932)
  2. ベートーヴェン 弦楽三重奏曲第4番 ハ短調 Op.9-3
  3. モーツァルト オーボエ五重奏曲 ハ短調 K.406 柴田祐太(Ob)、田中知子(Vla)

というものです。

最初の曲、オネゲルの「ヴァイオリンとチェロのためのソナチネ」は、ヴァイオリンの中島光之さんとチェロの茂木明人さんの二重奏です。作曲されたのが1932年といいますから、大戦間期の作品です。耳にするのはもちろん初めてで、イメージとしては重厚あるいは晦渋といった性格が強く、軽妙洒脱といった作風とは遠いものと感じました。

続いてベートーヴェンの弦楽三重奏曲第4番。ステージ左から、ヴァイオリン:中島さん、ヴィオラ:倉田譲さん、チェロ:茂木明人さん。第1楽章:アレグロ・コン・スピリト、第2楽章:アダージョ・コン・エスプレッシオーネ、第3楽章:スケルツォ、アレグロ・モルト・エ・ヴィヴァーチェ、第4楽章:フィナーレ、プレスト。作曲家の個性の差が大きいとは思いますが、ヴィオラが加わっただけで響きがずいぶん変わったと感じられ、ベートーヴェンの音楽がいきいきと流れます。

ここで15分の休憩。ざっと見たところ、お客様は60名〜70名くらいでしょうか。いつもよりも少しだけ少なめかなとは思いますが、それでもほぼ山Q定期の人数が入っているみたい。新型コロナウィルス禍の渦中にある今どき、人口二十数万の地方都市で開催される室内楽演奏会としては多いのか少ないのかわかりませんが、ありがたいものだと感じます。

最後の曲目は、モーツァルトのオーボエ五重奏曲。以前、オーボエ四重奏曲を実演で聴き、バランス的に五重奏は難しいのではなどとほざいた舌の根も乾かぬうちにオーボエ五重奏曲の記事を書くというあんぽんたんな記憶(*1)が新しい音楽です。
ステージ左から、Ob:柴田祐太さん、Vn:中島光之さん、Vla-1:倉田譲さん、Vla-2:田中知子さん、Vc:茂木明人さん、という配置。歌劇「後宮からの誘拐」との関連が深いらしい音楽は、弦楽五重奏曲第2番の第1ヴァイオリン・パートをオーボエで演奏する形を取るのだそうな。第1楽章:アレグロ。Obの音色の開放性はあるけれど、それにしてもこの曲調はセレナードの音楽ではないな。第2楽章:アンダンテ、優しい音楽です。第3楽章:メヌエット・イン・カノーネ。「カノン風のメヌエット」という意味でしょうか。とても魅力的なカノン風。第4楽章:Obはけっこう音が大きいのですね。勢いのある音楽、名曲と感じます。

コロナ禍の中、アンコールは自粛。次回は2021年1月22日(金)、18時45分〜、クラリネットの川上一道さんがゲストで、R.コーカイ、マルティヌーやペンデレツキなどを取り上げる予定とのこと。聴かないと後悔するかもしれない。いや、コーカイさんの音楽というのは聞いたことがないものですから、つい(^o^)/dajare

(*1):モーツァルト「オーボエ五重奏曲ハ短調」を聴く〜「電網郊外散歩道」2019年6月

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