電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山本一力『旅の作法、人生の極意』を読む

2019年12月24日 06時03分13秒 | -ノンフィクション
2019年10月にPHP研究所から刊行された単行本で、山本一力著『旅の作法、人生の極意』を読みました。題名のように、若い頃に従事した旅行代理店の添乗員の仕事や取材旅行を中心とした旅と、パソコンを見続けて視力に衰えを感じたために運転免許を返上し、それまでペーパードライバーだった奥さんがハンドルを握ってあちこちをドライブする話など、様々な人や店などとの出会いを描くエッセイ集です。

大きな構成は、

第1部 もの想ふ旅人
 日本にて
 日本とアメリカー比べてみれば
 アメリカにて
 台湾・中国・香港にて
第2部 ドライブ道すがら

となっていますが、初出は第1部が日本ホテル協会の「Hotel Review」に、第2部がトヨタ・ファイナンス協会の「Harmony」に連載されたもののようです。なるほど、それで第2部には「ヤリス」などというトヨタ車の名前が出てきて褒めているのだなと納得しました(^o^)/

読了して印象深かったことが2点。

  • 『ジョン・マン』の取材は2009年から始まっていること。現在(2019年)の段階で十年の時間をかけて、ようやくゴールドラッシュまで来たところで、どうやら著者は本作をライフワークにする心づもりのようです。なんとか完結してもらいたい。
  • 若い頃に国際文通していた米国のペンフレンドの女性と再会するくだりは、ちょいといい話です。相手の女性が精神科医になっていて、手紙をみな保存していることに驚き恐縮するところなんぞ、作家の冷や汗が伝わるようです(^o^)/

ところで、旅に出れば食事は自前というわけにはいきません。自然に、それぞれの土地の飲食店に入ることになります。ガイドブックの星の数を誇るような有名レストランなどではなく、頑固親父が厨房に立ち続け、いい仕事をしているような、下町の風情を残す店が印象深い。これは共感するところ大です。

特別なもの、珍しいものだけを求めて歩くのは、特別天然記念物だけを珍重し、今そこにある生態系の価値を見ないことに似ています(*1)。ガイドブックの星の数などとは無縁な、下町の飲食店で地元の人たちが注文して食べる料理は、やっぱり美味しいだろうと思いますね〜(^o^)/

(*1):疾風と勁草と松林〜「電網郊外散歩道」2015年3月
コメント