電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ビゼーの歌劇「カルメン」を観る

2019年08月12日 06時02分40秒 | -オペラ・声楽
お盆前の日曜日、午前中に仏壇の飾り物をあらかた済ませ、昼食もそこそこに、天童市民文化会館にでかけました。真夏の太陽の下、列に並んで開場を待ちましたが、いや〜暑かった。風があるのが救いでした。本日の演目はビゼーの歌劇「カルメン」で、オーケストラは山形交響楽団、演出が藤野佑一、カルメンが藤野恵美子、ドン・ホセが宮下通の各氏で、山形オペラ協会のメンバーを中心とした出演陣は、さすがの人気です。県の補助が入って料金が前売1100円(全席自由)というお値段もあってか、1200席が全部満席、当日券も完売、あらかじめ購入しておいて良かった〜(^o^)/



ホールに入ると、ステージ前の、いわゆる「かぶりつき」の席が取り払われ、オーケストラ・ピットに変身しています。暗くて詳しくはわかりませんでしたが、楽器配置はおおむね次のような感じ。まず、指揮者が中央に座し、左手側に弦楽器とハープ、右側に管楽器とパーカッションが位置します。管楽器は、Fl(2:Picc持替え)、Ob(2:うち1はコールアングレ持替え)、Cl(2)、Fg(2)、Hrn(4)、Tp(2)、Tb(3)という編成で、右奥にティンパニとパーカッション(トライアングル、シンバル、大太鼓、小太鼓、タンブリン)が並びます。弦楽器は5部で、第1ヴァイオリンが6、第2ヴァイオリンが5、ヴィオラが4、チェロが3、コントラバスが2という、通常よりも少し編成を縮小した 6-5-4-3-2 というものです。コンサートマスターは犬伏亜里さん。



拍手に迎えられて指揮者の佐藤寿一さんが登場、おなじみの第一幕の前奏曲が始まると、聴衆の期待がぐっと高まるのが感じられます。この場面は、まあ、セヴィリヤのタバコ工場で喧嘩騒ぎを起こした女工カルメンを連行する途中で、衛兵が色気に負けて女を逃がしちゃう話。衛兵ドン・ホセは、やっぱりダメ男でしょう(^o^)/
でも、ドン・ホセの故郷の母がホセの婚約者ミカエラに託したものは、手紙と「お小遣い!」でした。いつの時代も母心は…というところでしょうか。

ここで幕間の休憩(10分)。

ベルの後でチューニングが始まります。第二幕への前奏曲「アルカラの竜騎兵」は、いかにも勇ましく調子が良い。でも、物語はダメ男ドン・ホセが婚約者ミカエラを振りきり、カルメンの色香に迷って上司と対立、ジプシーの密輸団に身を投じます。ここのイングリッシュ・ホルンの音色が実に良いですなあ。義務に縛られる兵士と自由奔放な女の恋は、悲劇に陥るしかないのかもしれません。

再び幕間の休憩(15分)。

第三幕の場面は実に暗い情景なのに、対象的に前奏曲のほうはフルートとハープの爽やかで美しい音色で始まります。密輸団の仲間になり、カルメンと暮らしているドン・ホセをたずねて故郷の婚約者ミカエラがやってきます。ミカエラのアリアは勇気をふるってホセに訴えようという健気な歌。ミカエラが隠れていると、ドン・ホセはカルメンをめぐって闘牛士エスカミーリョと決闘騒ぎになる始末です。さすがのアホ息子も、お母さんが危篤だと聞き、未練たらたら密輸団を去ります。

幕間の休憩(10分)。

第四幕は、群衆の場面から一転してホセとカルメンの深刻な二人劇に変わります。指輪を投げるカルメン、激昂したホセがカルメンを刺す場面は、赤い照明で表現。オーケストラによる音楽もまた緊張感を高めます。自由奔放なジプシー女と軍隊崩れのストーカー男の痴情のもつれによる殺人劇と言ったところでしょうが、音楽はこのなんとも救いのない物語を緊迫のドラマとして描き出しています。

歌い手の皆さんについては、テノールの宮下通さんのホセが、苦悩するダメ男をうまく表現していました。藤野恵美子さんのカルメンは、声質的に可憐なヒロインになってしまわないかとちょっぴり懸念しましたが、杞憂でした。さすがにベテラン、うまく奔放なジプシー女を声でも演技でも演じきっていました。エスカミーリョは、鈴木集さん。闘牛士らしいカッコよさですね〜。原作にはない可憐な役柄のミカエラは、真下祐子さん。純情可憐な乙女の役柄がお似合いで、拍手が多かったですね〜。もしかすると、一番の役得(*1)だったでしょうか(^o^)/
その他の出演者の皆さんも熱演、要所に加わる合唱も良かった。オーケストラ演奏も、また演出、背景、照明も、陰惨なはずの愛憎のドラマを、劇的な緊迫感を減じることなく音楽的にも視覚的にも楽しませてくれた公演だったと思います。あ〜、良かった! いいオペラ公演でした。



(*1):なにせ、「コシ・ファン・トゥッテ」での「別れても好きな人じゃなくって、別れたら次の人よ!」の衝撃的なセリフの印象が強かったものですから(^o^)/
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