電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

果樹園と宅地化、原野化

2019年06月30日 06時02分53秒 | Weblog
農家の高齢化が進み、後継者もなく果樹園も維持できない年齢になると、農地を手放すケースが増えてきます。基本的に湿地帯にある水田とは違い、果樹園は畑地ですので地盤も安定しているため、宅地に転用し購入した不動産会社は、アパートや戸建住宅を建設することが多いようです。とりわけ道路に面した畑地・果樹園は、工業用地になるほど広大なケースを除き、ほぼ例外なく宅地化されることになります。

すると、隣接する園地の持ち主はどうするか。新たに入居してくる住人との摩擦を考慮し、まず窓際の果樹を伐採し、住宅やアパートとの間に空間を作ることで早朝の草刈り等の騒音の問題をやりすごそうとします。また、境界に防風ネットを張り、農薬の散布で窓や洗濯物を汚すことを防ごうとします。こうした努力をしても、非農家にはそれらの努力はなかなか理解されません。結果的に、苦情により隣接園地を保有する農家は果樹園農業を継続する意欲を失い、農地を手放すことになってしまいます。すると、さらに隣接する園地が…(以下同様)

こうして、一箇所から始まった宅地化は急速に広がっていき、道路に面した果樹園地帯はあっという間に宅地になってしまうのです。

こうした宅地化の条件からは大きく外れている園地は、担い手が高齢のため果樹園を維持できなくなり手放そうと思っても、おそらくは買い手がつかないでしょう。維持管理されない耕作放棄地はあっという間に原野と化し(*1)、しかもそれが徐々に広がっていきます(*2)。長い目で見ると、町(宅地)と原野の間に緩衝地帯として存在した農地(果樹園地帯)が消失し、宅地と原野がしだいに接近していくことになります。野生動物との遭遇などの事案が珍しくなくなるでしょう。

橋や道路やトンネルの重要性は多くの人に理解されていますが、農地もまた実は重要なインフラ(*3)なのではなかろうか。

(*1):果樹園を放置するとどうなるか〜「電網郊外散歩道」2016年6月
(*2):耕作放棄地の現状〜「電網郊外散歩道」2009年4月
(*3):農地はインフラストラクチャ〜「電網郊外散歩道」2011年6月

【追記】
果樹園に隣接して住宅を建てようとする方の考え方は、例えばこんなふうなものでしょうか。最初から警察に被害届を想定……なんだか悲しくなります(^o^;)>poripori

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