電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

村山市で山響「大地の祈り」コンサートを聴く

2018年08月12日 06時01分57秒 | -オーケストラ
お盆前の土曜の午後、村山市の市民会館で山形交響楽団ユアタウンコンサート村山公演「大地の祈り」コンサートが開かれましたので、妻と二人で出かけました。
曲目は、次のようなものです。

  1. ベートーヴェン/歌劇「フィデリオ」序曲 作品72
  2. ベートーヴェン/交響曲 第5番 ハ短調「運命」作品67
     〜休憩〜
  3. スーザ/行進曲「美中の美」  村山市立楯岡中学校吹奏楽部
  4. ベッリーニ/歌劇「清教徒」より〝あなたの優しい声が" 斎藤智子(Sop)
  5. モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲 K.492
  6. モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」K.492より"楽しい思い出はどこヘ" 斎藤智子(Sop)
  7. 陳越/大地の祈り 村山混声合唱団フェブリエ、村山市女声コーラス、村山市立楯岡小学校合唱部
     指揮:田中裕子、山形交響楽団、斎藤智子(sop)、

開演前に、西濱事務局長が登場、開催地を代表して村山市長が挨拶。そして指揮者の田中裕子さんが登場して、ベートーヴェンの二曲を紹介します。「フィデリオ」序曲については、女性が男装して様々な困難を突破し、夫を救出するオペラであること、交響曲第五番については、特に第三楽章から第四楽章にかけて、苦悩を突破して解放に至るところを味わっていただきたい、とのこと。山響については、ティンパニとホルン、トランペット等でナチュラルタイプを用い、作曲家が当時思い描いたような音を再現している、国内では稀有なオーケストラと評価します。

さて、ステージ上の楽器編成と配置は、正面左から、第1ヴァイオリン(8)、第2ヴァイオリン(7)、チェロ(5)、ヴィオラ(5)、その右後方にコントラバス(3)と、弦楽器が8-7-5-5-3で並びます。正面奥には木管楽器が前後二列、すなわちフルート(2)、オーボエ(2)、クラリネット(2)、ファゴット(2)、さらに奥には金管楽器がトランペット(2)、ホルン(4)、左手後方にバロック・ティンパニというものです。2曲めの交響曲第5番ではホルンが(2)となりますが、ピッコロ(1)とトロンボーン(3)、コントラファゴット(1)が加わり、さらに迫力が増します。

ベートーヴェン2曲は、しなやかさと活力とが感じられる演奏で、ふだんクラシックの演奏会などに縁の薄い方々にも、「ジャジャジャジャーン」以外の部分の魅力を伝えることができたかな、と思います。個人的には、大好きな「運命」の第2楽章を実演で再び楽しむことができ、満足、満足。

15分の休憩後は、山台の上に楯岡中学校の吹奏楽部がずらりと並び、両サイドのバスドラムやスネア、シンバルなどパーカッションとコントラバス(2)をあわせて40名近い人数が勢揃いして、実に賑やかです。スーザの「美中の美」は、なかなか迫力がありました。特に、熱演の中学生だけの部分に山響が加わるところで、表現力が一段と深まるところが「なるほど〜!」でした。

続いてソプラノの斎藤智子さんが登場、ベルリーニの「清教徒」第二幕から、エルヴィーラの狂乱の場面です。錯乱の様子を技巧的なアリアで表現するもので、なるほど、イタリアオペラの名場面の一つでしょう。
山響お得意のモーツァルト「フィガロの結婚」序曲を軽やかに楽しんだ後で、今度は「フィガロの結婚」から伯爵夫人が歌う悲しみのアリアを。まあ、今はスザンナを追いかける軽薄な夫とはいえ、もとは「セヴィリアの理髪師」に描かれたような愛の場面もあったわけで、人間の声による歌の力と魅力をあらためて痛感いたしました。

考えてみれば、ソリストは今でこそ藤原歌劇団で活躍中ですが、楯岡小→楯岡中→楯岡高とバリバリの地元出身。以前は村山市で冬に山響の演奏会を聴いていたように、聴衆も演奏会の経験が豊富なようで、楽章ごとにパラパラと拍手が出るようなこともなく、いい雰囲気で進みます。

そして最後は、ソプラノ独唱と合唱による「大地の祈り」を山響のバックで。東日本大震災の際に、中国人研修生を避難させ、全員が避難できたかを確認に行って亡くなった会社の専務さんのこと(*1)を、中国の作曲家が作詞作曲したものだそうです。ピアノ伴奏でソプラノが歌ったものは動画で聞いたことがあります(*2)が、これはまあ、大勢の老若男女が歌い上げる、なんともインパクトのある演奏でした。良かった〜。

(*1):藤村三郎『なぜ162人全員が助かったか』を読む〜「電網郊外散歩道」2014年7月
(*2):YouTube より。
大地の祈り 作曲:陳越 ソプラノ:森麻季 ピアノ:山岸茂人

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