電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

J.S.バッハ「ブランデンブルグ協奏曲第3番」を聴く

2016年02月22日 06時02分15秒 | -協奏曲
このところ、通勤の音楽として聴いているのは、トン・コープマン指揮アムステルダム・バロック管弦楽団による演奏で、J.S.バッハの「ブランデンブルグ協奏曲」全6曲をCD2枚に収めた、1983年のデジタル録音です。つい最近、カラヤン指揮ベルリンフィルの録音がパブリック・ドメインになり(*1)、ストリームで聴いたりダウンロードして聴くことができるようになっていましたので、比較をしながら、おもしろく聴きました。

ブランデンブルグ協奏曲は、言ってみれば就職活動のための思惑があってまとめられた作品でしょうが、この第3番は、Vn(3)-Vla(3)-Vc(3)という構成による、各3声部、計9声部の音楽です。管楽器を使いませんので、弦楽器だけの、明るいけれども実に密度の濃~い音楽になっています。中間の楽章では、楽譜上では単にフリギア終止を形成する二つの和音が記されているだけなのだそうですが、この演奏ではチェンバロのカデンツァに相当するところに、「トッカータ」ト長調BWV916のアダージョを演奏しているとのことです。

そういえば、先の12月の山響第248回定期演奏会では、この第3番を取り上げていました(*2)。あのときには、コントラバスが加わっていましたし、間にやはりチェンバロによるかなり長いカデンツァを置いていました。この点から言えば、近年のバロック音楽の演奏習慣に従い、自由な装飾を許容するものとしてバッハの音楽をとらえているようです。

これに対して、カラヤン指揮ベルリンフィルの録音では、この第2楽章を、さらりとチェンバロで演奏し、わずか20秒ほどで終えて、終楽章に入ってしまいます。カザルス指揮のマールボロ音楽祭管弦楽団による演奏でも同様で、CDのトラック分けも二つだけです。

また、演奏表現の面からも対照的です。トン・コープマン盤では、速いテンポ、快活なリズムと表情で、思わずワクワクするような動的なブランデンブルグ協奏曲になっていますが、カラヤン盤のほうは、しかつめらしい顔をしてひたすら流麗な表現を求めると言っては言い過ぎでしょうが、いわば静的なブランデンブルグです。

うーむ。1980年代、グスタフ・レオンハルトらが古楽器で演奏した録音がLPとして出始めたときには、かなり違和感を感じていたのに、今では古楽奏法の側を自然で活力があっておもしろいと好感を持ち、逆にかつての有名大家による演奏に、なんだか違和感を感じるようになっています。オリジナル楽器や古楽奏法を取り入れた山響のモーツァルト定期を九年間も聴き続けたことにより理解が進んだ面が大きいですが、一番大きいのは、やっぱり「時代の力」でしょうか。

■トン・コープマン指揮ABO盤
I=5'38" II=2'05" III=4'43" total=12'26"
■カラヤン指揮ベルリンフィル
I=6'46" II=0'20" III=5'50" total=12'56"

(*1):J.S.バッハ「ブランデンブルグ協奏曲第3番」~カラヤン指揮ベルリンフィル~「クラシック音楽へのおさそい」~Blue Sky Label
(*2):山響第248回定期演奏会でベートーヴェン、バッハ、ハイドンを聴く(2)~「電網郊外散歩道」2015年12月

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