電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

金聖響+玉木正之『ロマン派の交響曲~「未完成」から「悲愴」まで』を読む

2009年08月18日 05時23分22秒 | 読書
講談社現代新書で、金聖響+玉木正之著『ロマン派の交響曲~「未完成」から「悲愴」まで』を読みました。
本書の冒頭で、玉木さんはロマン派の交響曲の多くが、心の底から好きにはなれないと苦笑します。ベルリオーズの「幻想交響曲」やチャイコフスキーの後期交響曲三曲などは大好きだが、シューマンとなると微妙なのだとか。メンデルスゾーンにいたっては、「イタリア」や「スコットランド」が「いいなと思ったことが何度かありましたが、とくに繰り替えして聴きたいとは思わない」(p.29)のだそうな。

これに対し、金聖響さんの回答する処方箋は「なるほど」です。まず量でカバーして、耳をその音楽に慣れさせよ、とのこと(p.32)。これは本当だと思います。当方の経験でも、通勤の音楽として繰り返して聴き、自宅のステレオ装置で音量を上げて耳を傾け、携帯音楽プレイヤーとイヤホンで細部まで聴き取るようにしていると、作曲家が心血を注ぎ、演奏家が努力を傾けた作品が、すんなりと心に届くようになるものです。

以下、本書の構成は次のようになっています。

プレトーク ロマン派って何?
第1章 シューベルトの交響曲 夭折の天才が遺した全8曲
第2章 ベルリオーズの交響曲 永遠の青年が描くリアルな「幻想」
第3章 メンデルスゾーンの交響曲 音の風景画家にして近代指揮者の祖
第4章 シューマンの交響曲 楽譜にこめた柔らかな「響き」
第5章 ブラームスの交響曲 知性と品格をたたえた絶対音楽の極み
第6章 チャイコフスキーの交響曲 哀しみが昇華した「快感」の音楽
アフタートーク

どうやら金聖響さんの処方箋は有効だったようで、玉木正之さんもロマン派の交響曲の魅力に目覚めたようです。実に目出度い(^o^)/
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