電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ヘルマン・プライの「冬の旅」を聞く

2005年11月22日 22時27分04秒 | -オペラ・声楽
音楽なしで通勤することになって二日目、お天気でもよければまだ楽しみもあるが、曇天の下の単調なドライブに、いささかうんざりする。その反動なのか、家に戻ってから昔から親しんでいる音楽に手が伸びる。
今日は、ヘルマン・プライのシューベルトの歌曲集「冬の旅」を取り出した。
一つはLP(EAC-30015)で、カール・エンゲルがピアノ伴奏をつとめる、1961年の録音。プライの歌声も写真も、若々しさを保っている。もう一つは、フィリップ・ビアンコーニが伴奏をつとめ、ハンブルクのフリードリヒ・エーバート・ハレにおいて1984年にデジタル録音されたCD(DENON COCO-70467である。CDのスリーヴの写真を見る限り、プライの頭髪には白髪が増え、表情には老いが感じられる。
だが、「冬の旅」の歌唱は大きくは変わっていない。むしろ、多くの曲で、テンポや表情づけなど、驚くべき共通性を見せている。微妙な表情づけやニュアンスなどは、もちろん変化しているが、曲集の前半では甘く明るさを失わず、後半で次第に虚無感が深まるような、そんな基本的な構造は変わっていない。当たり前か。

LPには、ウィルヘルム・ミュラーの全曲の歌詞について、西野茂雄氏の対訳がついている。残念ながら、CDにはない。仮にあったとしても、老眼にはつらい小さな文字がぎっしりとつまっているものになるだろう。したがって、LPを脇においてCDを聞くという妙なことにもなる。携帯に便利なメディアほど、歌曲集には不向きになるということか。全曲の歌詞もドイツ語で全部頭に入っているのなら良いのでしょうが、私のような単なる音楽愛好家には、それはいささか過大な要求です。
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