風邪を引き、ようやく回復してきたようだ。午前中に調子が良いからと起きて無理をすると、午後から決まって熱が出る。無理せず寝床の中であまり固くない文庫本を楽しむこととする。山本周五郎著『人情裏長屋』(新潮文庫)、文字のポイント数が小さく読みにくいが、中では『泥棒と若殿』が良かった。
大名の兄弟のうち兄が病気で頭を病む。当主は素直な弟・成信を跡継ぎに考えるが、幕府に届ける出る前に脳溢血で倒れ、お家騒動。悪い家老により反逆罪で国元の荒れたお化け屋敷に幽閉されている。監視も薄くなるが食料も届かず、三日も何も食っていないところへ間抜けな泥棒が入る。
この泥棒、世話好きな気のいい奴で、若殿とは知らず飯を作り食わせ、飯場で稼ぐ苦労をいとわず共に生活を始める。このひょうきんな泥棒、さすがに人間観察が鋭い。若殿が人間不信という「心を病んでいる」ことを喝破する。やがてそのうちに情勢が変わり、悪家老が失脚し、若殿へ迎えが来る。「信さん、いっちまうのか」という台詞に思わずほろりとさせられるのが、著者・山本周五郎の腕というべきだろう。
大名の兄弟のうち兄が病気で頭を病む。当主は素直な弟・成信を跡継ぎに考えるが、幕府に届ける出る前に脳溢血で倒れ、お家騒動。悪い家老により反逆罪で国元の荒れたお化け屋敷に幽閉されている。監視も薄くなるが食料も届かず、三日も何も食っていないところへ間抜けな泥棒が入る。
この泥棒、世話好きな気のいい奴で、若殿とは知らず飯を作り食わせ、飯場で稼ぐ苦労をいとわず共に生活を始める。このひょうきんな泥棒、さすがに人間観察が鋭い。若殿が人間不信という「心を病んでいる」ことを喝破する。やがてそのうちに情勢が変わり、悪家老が失脚し、若殿へ迎えが来る。「信さん、いっちまうのか」という台詞に思わずほろりとさせられるのが、著者・山本周五郎の腕というべきだろう。