奈良のむし探検

奈良に引っ越しました。これまでの「廊下のむし探検」に倣って「奈良のむし探検」としましたが、動物・植物なんでも調べます。

虫を調べる ルリアリ

2021-04-21 20:48:33 | 虫を調べる
先日(4/15)、家の近くの道路脇で小さなアリを見つけました。折角、大和郡山に引っ越してきたのだから、アリも1種1種調べていこうかと思って、採集してきました。





この間見つけたアリというのはこんなアリです。小さいのですが、拡大して見ると、ちょっと光沢のある体をしています。

検索には次の本を用いました。

[1] 寺山守ほか、「日本産アリ類図鑑」、朝倉書店(2014).

検索をしてみると、カタアリ亜科のルリアリ属のルリアリになりました。その検索過程を書いておこうと思います。検索では次のような事項を調べていきます。

①腹柄は1節(腹柄節)からなる;腹部末端の背板は単純で、微小な刺の列はない;頭楯前縁側方に小突起はない
②腹柄節は小さく、側方から見て丘部の幅は狭い;腹部第1節と第2節の間はくびれない;腹部第1節の背板と腹板は融合していない;腹部末端に刺針をもたない
③腹部末端の開口部はスリット状で、周囲に顕著な環状の毛列はない  カタアリ亜科 Dolichoderinae
④腹柄節は鱗片状もしくはこぶ状;腹部は腹柄節におおいかぶさらない
⑤腹柄節は鱗片状で高く薄い;前伸腹節後背部は顕著に後方に突出せず、後面は弱く膨らむか、わずかに凹む;頭部および胸部表面はなめらかで粗大点刻はない
⑥触角柄節は短く、頭部後縁をわずかに越える程度;前伸腹節後面は、側方から見てほぼ直線状でわずかにへこむ  ルリアリ属 Ochetellus ルリアリ O. glaber

これらの項目を写真で確かめていきたいと思います。



まず最初は横から見たところです。体長を測ってみると、2.3mmになりました。



検索では、腹柄節と前伸腹節に関する項目がたくさんあります。これらの項目はこの写真を見るとだいたい確かめることができます。まず、腹柄は1節で、鱗片状で薄くて高いことなどはすぐに見て取れます。また、前伸腹節後面は少し凹んでいます。ということで、これらの項目はいずれもOKです。



次は腹部末端の写真です。①はクビレハリアリ亜科を除外する項目なので、OKでしょう。②もすぐに分かります。最後の③の開口部は、ヤマアリ亜科が富士山のような形をして中心が凹んでいるのと比べるとだいぶ異なります。これをスリット状というのでしょう。



頭楯は中心が凹んできますが、側方に小突起はありません。小突起はクビレハリアリ亜科にはあるようなので、これも大丈夫でしょう。



触角柄節は頭部後縁まで届かないようです。これは柄節の長いアルゼンチンアリを除外する項目です。

ということで、ルリアリ属に到達するのですが、ルリアリ属はルリアリだけなので、これでルリアリということになります。



ついでに撮った写真も載せておきます。

雑談1)アリを見た途端にヤマアリ亜科かなと思って、その先の属の検索を始めて苦労しました。やはり最初からきちんとやらないと駄目みたいです。これが「大和郡山のアリ」第1号になりました。今日はもう一種のアリを採集してきました。まだ、検索はしていないのですが、フタフシアリ亜科で、たぶん、トビイロシワアリではないかと思います。そのほか、まだ、採集していないのですが、クロヤマアリは山ほどいます。「日本産アリ類画像データベース」によると、近畿地方に産するアリは、最普通種22種、普通種43種、稀な種36種、極稀な種6種の計107種です。どこまで行けるでしょうね。ちなみにルリアリは普通種でした。

雑談2)撮影は最初から3番目の写真は実体顕微鏡で撮り、4番目から8番目の写真は生物顕微鏡で10倍の対物鏡を使って撮っています。いずれもトレーシングペーパーを用いた覆いで拡散光にしてから撮っています。1つの写真を得るのにだいたい30枚くらい焦点位置を変えて撮り、後でCombineZPというフリーソフトを用いて深度合成をしています。でも、例えば、頭の下に脚があるときなど、頭の部分だけに焦点を合わせて撮影すると、深度合成すると脚の部分がまだらになって汚くなってしまいます。これは仕方がないのですが、通常より露出過多にして撮り、深度合成した後、明度を調整すると、少しましになるようです。しばらく撮影していなかったので、そのことを忘れていて、最初に撮った写真はすべて汚くなってしまいました。それですべて撮り直しました。