日々のうつろい日記

四季のうつろい、心のうつろい、 残しておきたいもの・・・

カメを呼ばない女

2007年07月01日 | Weblog

6月30日、なんという・・・美しい月夜になってしまった。
煌煌と輝く満月の夜。この日私は、前日カメの上陸の多かった前浜へ配置された。ペンライトも細工をしなければならないくらい、ウミガメは警戒心が強い。端から端までカメの姿を確認するために1キロほどの浜を歩くのは結構大変な仕事。端まで歩いて一休み。昼間、ヒルとの格闘で、少々疲れていた私は、砂浜に座ると、コクリコクリ居眠りをしてしまった。どういうわけか、前日のにぎわいはなく、今日の前浜は静かそのもの。どうやら今夜はいなか浜の方が騒がしい。トランシーバーからは常に「カメが上陸・・・」「カメが産卵を始めました・・・」「アオウミガメを確認・・・」・・・前浜はいぜん静かな浜・・・とうとう、私は「カメを呼ばない女」の称号をもらってしまった。(「嵐を呼ぶ男」の裕次郎、「狼と踊る男」のケビン・コスナーは素敵だった・・)



午前2:00過ぎ、ようやく月が雲に隠れ、前浜にも次々にカメが上陸を始める。15分ほどで浜の上の方まで上がってきたカメは、あたりを用心深く偵察する。気に入った場所を見つけ穴を掘りはじめる。砂をかいた片足をスコップのようにすぼめ、すくった砂を静かに横によける。もう片方の足で砂をはらう。左右交互に動かしながら着々と仕事を進める。10分~15分くらいだろうか、細いきれいな穴を60センチほど掘ったところで足が宙を切るようになると、穴掘りは終了し、すぐさま産卵が始まった。ピンポン玉を少し大きくしたような卵をポロポロ穴に落とす。1回に産む卵は130~150個くらい。最後の卵を産み終えると、すぐさま穴を塞ぐ作業に入り、最後の仕上げはカモフラージュのための砂均し。このとき、あまり近くで覗き込んでいると頭からいやというほど砂をかぶってしまう。とわかっていても、案の定体中砂でジャリジャリ。新しい命を産みおとした母は、後ろを振り返ることもなく海に帰っていく。
さて、このあとが私たちの仕事。堤防近くの狭い砂浜や、台風や強い北西の風による波で砂が流出する場所で産卵した卵を安全な場所に移植する。穴を掘り起こし卵を保護する。産卵場所の目印の棒付近を掘るが、少し方向が違っていたのか掘れども掘れども卵を探り当てられないこともある。一度は自分が入ってもあまりそうな深い穴を掘ってしまった。うまく掘り起こすことのできた卵は、いなか浜の保護区域に新しい穴を60センチ掘り、埋め戻す。かなりの重労働。日の出前。そろそろ空が薄明るくなってきた。さあ、保護した卵をいなか浜へ移そう。午前4:55、道具を抱えて、前浜をあとにする。

  

疲れ果てた私は、いなか浜で懸命に穴を掘るU氏の後ろでまた船を漕ぐ。すみません。午前5:50、いなか浜をあとにする頃には、すっかり夜が明けていた。

左:母ガメが陸に上がった道。 右:産卵を終えた母ガメが海に帰った道。

カメを刺激しないように、明かりは最小限にしましょう。お産の立ち会いもカメのうしろ。ウミガメ見学の方も、ルールはしっかり守りましょう。