屋久島の森は深い。大雨の後であったため、木々も苔も瑞々しく、緑が冴える。水場ではヤマヒルも元気に活動している。気づいたときは足に小さめのヒルがついていた。小さいものは指ではじいて落すことができるが、しばらくして、靴の中に潜んでいたヒルを発見。今度は少し存在感がある。休憩の度に入念なチェックが必要である。ヒルは靴から忍び寄ることが多いが、木から落ちてくることもあるそうで・・・首や腕に落ちてこられてはたまったものではない。木々から滴り落ちる水にもヒヤリとする。このあと、しばらく体がムズムズするたびに、もしや!と体中確かめる。
スパッツを付けていればよっかったと思ったが、後から聞くと、スパッツもあまり役には立たないそうで、上に上にあがってくる性質のヒルは、静かに忍び寄ってズボンのウエストのあたりで溜まっているという。靴の中にショウノウを入れておくといい。とか、塩がいい。とか、いろいろ聞いたが、決定的なヒル除けはわからないまま・・・それにしても、小さい体でこんなにぞっとさせるとは、大したものだ。
ウィルソン株に負けないくらい素敵な株に出会う。ハートの空は見えなかったものの、見上げた緑と空は私のために輝いているようだった。
屋久島には、縄文杉よりもっと長生きしている杉があると聞いたことがある。森を歩いていると、森のずっとずっと奥にはまだ誰にも見つからず何千年も長生きしている杉があっても不思議じゃない気がする。
大きな杉の間に、薄茶色のすべすべした木肌の大きなヒメシャラが何本もある。背丈が高いので樹の上の花は見つけづらいが苔の上に落ちた花がいくつもある。シャラの花は夏ツバキのことと聞いたことがあるが、ヒメシャラは夏ツバキを小さくしたような花だから姫シャラというのだろうか。
「沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす」平家物語の一節を思い出した。純白の落花は少しずつ色が衰え始めたようだ。
山から下りて気づいたことに、同行のN氏、足首が血だらけ。私を笑っていた彼は、どうやら里まで森のお友達を連れてきてしまったようだ。