No Speed Limit

風を感じていますか

Faust

2005-05-28 01:36:18 | Weblog
怪我というのは大体調子が悪い時に起こる物だと思っている人がいるかもしれない
でも自分はむしろ好調の時に起こる確率のほうが高い。

以前スキーで脚を怪我した時
その年はブーツを新しくして絶好調だった。
とにかくスキーが変わった。
まず何よりも雪の感触がかわり、ターンのイメージが別世界に入った。
ライン取りやスピードも変わったし、時々ポールを滑っていてもスローモーションのように感じられた時もあった。
もう嬉しくてたまらなかった。
本当に怪我するまでは絶好調だった。
しかし今考えればスピードが前年より上がって
自分のポテンシャルがそれに追いつかなくなった事が原因の一つだった事は否めない。

驕りととられるかも知れないがスキーやスケートに限って上達の壁という物をあまり感じた事が無い。
振り返ってみても、成長の進度はともかく、上達はしていたし、前年より今年、先月より今月、昨日より今日と。
練習すればするほど身体を虐めれば虐めるほど自分が変わるのが楽しくてしかたなかった。

でもここに落とし穴がある。
スピードやバランスを伴うスポーツ、スキーやスケートは
ある日突然、昨日まで出来なかった事が
今日、突然出来たりする。
地味な基礎練習や反復練習がある日突然、実を結ぶ。
だがそれはきっかけや偶然の産物で
身体に染込んでいなかったりもする。
そう自分が上のステージに上がった時に必ずしも肉体はそれに付いてきてない。

スキーでは普通3年かかることを1年で出来たりもした。
北海道出身のコーチに
自分が雪国出身のレーサーだと勘違いされた事もある。
まさか26歳からスキーを始めたとは信じがたい事のようだった。
むろんそれなりの努力はした。
しかし同じ結果でもそこにいたる過程がないな為
どうしても付け焼刃的にならざるをえない。
技術の成長に身体の成長が追いつかないのだ
それが年齢的に若くないのだから尚更だ。
急ぎすぎた為に失った物は大きかった。


スピードには麻薬のような魅力がある。
得る為には失う物も多い。
それは肉体だったり、時間だったり、金銭だったり、社会的立場だったり色々だ
でも後悔はしていない。
誰もが体験できる事ではない、
欲したからといって簡単に手に入る物でもない

しかし、それを体験した者、手に入れる喜びは
そこに到達した者でなければ理解できないだろう
スピードとはそういうものだ。

スピードを手に入れる為ならなんでもする
悪魔に魂を売ってでも。

Hrnia

2005-05-23 12:21:42 | Weblog
まったく痛みが引かない腰痛に
脚の痛みが増してきたのでこれはもしや・・・と思い
きちんと検査したら。
椎間板ヘルニアになってました(大泣)

太股の裏側や膝の裏が痛いし
時々痺れるからおかしな~とは思ってましたが
やっぱりです。

きっかけは判りませんが
思い返してみれば腰の痛みは3月ぐらいから兆候があったし
太股は去年肉離れをしたのでその痛みがまだ残っているのかと勘違い
していたみたい。
でも確かにこれも3月ぐらいから痛みがあったよな~。
なんにしてもしばらくはスケートはもちろん
運動もしばらくお預けです・・・・・・。





全日本

2005-05-22 21:49:23 | Weblog
早いもので、もう5月下旬ですね
SWICのレポートがやっと一段落しましたが
その間に全日本大会があったり、その前日にギックリ腰になったりと色々でした。

そのぎっくり腰ですが
大会前日、また不用意にクシャミをして腰に電気が走りました
これはヤバイな~と思ったんですがもう前日
どうにもなりません・・・・。

で全日本当日、朝会場にきてアップのジョギングをしている頃から
痛みが段々増してきて滑り始めたら足に力は入らないし腰は曲がらなくなってくるし
もう悲鳴をあげてきました。
レース前に、CMSの大会にはいつも来ているスポーツトレーナーの方に身体を見てもらうと
開口一番、「これで滑れるんですか?、クロスできないでしょう!」の一言。
一通りマッサージみたいな事はして頂いたんですが
「もうこの状態ではどうにもなりませんと、あとは病院でないと・・・・」とキッパリ!

当然その状態で300mを走っても
結果は見えていました。練習でも出しことない35秒台(遅)

2種目目の1500mも殆んど泣きながら滑ってました。
結果は最悪。
これはもう予選通る筈がないと思っていたらそれでもなんと準決勝へ。 

間の時間に座っていても腰が痛いので
トレーナー方にお願いをしてマットの上に横にならせてもらう。
辛いでしょうからとアイスパックを腰の上に置いてアイシング。
少し楽になったが、レース前、ブーツ履くのに前に屈むのも辛かった・・・。

で準決勝のレースというと、もう恥の上塗り・・・・・。
もう情けないったらありゃしない!
レース後、動けなくなってベンチに座るのも手伝ってもらうありさま。
当然その後のレースを見ることも無く早々に帰宅しました。

帰宅後、土曜日だったので整形外科は休み
馴染みの整体へ。
やはりここでも「こんなんでスケートしてきたんですか?」と言われ。
「筋肉が炎症を起こしてますからあまり身体をいじれません。とにかく冷やしましょう」と
氷攻め。
湿布と痛み止めをもらって帰ってきました。

日曜日の朝、予想通り起きれません。
EB北原さんに大会棄権の電話をして
痛み止めを飲んで、しばらく様子を見る事に。
10時頃、まあ何とか動けるようになったんでコルセットをして起き出すが
椅子に座っても屈めないんで靴下が自分で履けない
仕方なし、嫁さんに履かせてもらう(涙)

でも頑張ってCMSへ
午後からのレースは見ることが出来ました。
レースの感想はまた何時か・・。
実はとにかく見ているだけで精一杯、脂汗タラタラ状態。
それでも我がEB部隊の活躍が見れたので良かった。
カトタクさんとも話が出来たし。

まあ今回は自分にとって散々な全日本でした。







SWIC 8

2005-05-14 03:50:30 | Weblog
ここからが本当のレースだ

序盤、雨で濡れた路面に思うように滑れずドンドン遅れていった事に落ち込んだ
そして不本意なレース展開に嫌気と情けなさも感じた
それを今やっと吹き飛ばす事が出来る、
今やらなければ、今しかない!
 
集団から飛び出したのだが誰も追ってくる気配は無い
それが余計に腹がたった。
最後の悪あがきか、たぶん直ぐに潰れると思われたようでしゃくだった。
ならば振り切ってやると、力を振り絞りドンドンペースを上げる。
橋を渡りきると最後の下り坂が現れた
頼れそうな選手は回りにいない
いやそんな考えは捨てよう
一人で下るしかない。
長い下り坂をクローチングスタイルで下っていく。
棒立ちで滑っている20kmの選手達をドンドン抜いていく

下りが終わり目の前にロッテワールドの高層ビル群が!
あともう少しだ。
その時後ろに気配を感じた。
誰か後ろにきている!
一人では無い
しまった、集団にやっぱり追いつかれたか?

自分は急に左へ飛び出しレーンチェンジをする
そして右を振り向く。
驚いた、サロモンプロチームの女性選手二人だった。
たしか折り返しの近くの19km地点辺りで抜いた筈だったが
という事は自分のいたパックの後ろにずっといたのだ
彼女らも自分を追いかけるように集団を後にしたのだろう
彼女らの後ろには追ってくるような選手の姿はない。

相手がどうであろうと横に並ばれたら
闘争心というものが沸く
それが先にスタートした女子選手だろうと
プロの選手だろうと
でも逆に相手がプロで女性選手という事に余計
負けられない気持ちになった。

自分と彼女ら3人で代わる代わる先頭を変わりながら
そして牽制しながら先に進む
ロッテワールドを横目に見ながら最後の左折
あとはオリンピックススタジアムまで一直線。

3車線の右より一車線だけ路面が乾いていた。
スピードを上げる事が出来る!
急いでその車線に入り
渾身の力を込めてプッシュする
今日初めて自分らしいスケートが出来る、やっと自分の持っている力が出せる。
スピードは上がる
しかし同じ事を考えている選手はたくさんいる、それも20kmの選手達が・・・。

そして直ぐに前をいく20kmの選手に追いついてしまう
そう乾いた路面の進路は塞がれてしまい
仕方なくまた濡れた路面に戻る。
急激な路面の変化に戸惑う、せっかく良い感じだったのに・・・。
乾いた路面のように力をこめてプッシュするとまたウィ-ルは滑りだす
そして離しかけたサロモン女性選手に追いつかれる。

その内サロモン女性選手の一人は疲れたのか後ろに下がり
残ったもう一人の選手と
二人で横に並んで進む
テールツーノーズといった具合で
横に並んだり、前後になったりしながら
3車線の中を右に左に20kmの選手や遅れている42kmの選手を
掻き分けながら自分達はゴールを目指す。


横に並んだ時、サロモン女性選手に目をやる
一瞬お互い目が合う
お互いを確認しあい、意識する。
彼女は真剣勝負の鋭い眼をしていた。
そしてそれがなぜかとても嬉しく
その瞳が自分を更に奮い立たせた

負けられない
その気持ちで一杯になった。

右側にオリンピックスタジアムが見えてきた。
この先はゴール前の最後の右折
選手が段々3車線のコース右側に寄って来る
選手間が狭くなり思うように進路を取れなくなってくる
そしてなだれ込むように右コーナーに選手が飛び込んでいく
自分もサロモン女性選手と右コーナに向けて突っ込む
だがインコースを狙った自分の前には遅い選手の壁が
サロモン女性選手はその隙に大回りで自分の左から前に出て行く

コーナを曲がって最後の直線は少し登りになっていた
直線にでて最後の力を振り絞る。
そして前に出たサロモンの彼女に追いつき並ぶ
その後は抜いたのか並んだままだったのかはわからない。
ゴール間際、目を上げるとゴール地点のタイム表示板には1時間28分台の数字が
とにかくそのままゴールマットを通過
計時用のゴムマットは詰まるような抵抗感と
柔らかい感触があった。


ほぼ放心状態のままゴールエリアで感じたのは
感情より身体が発する激痛だった
腰が痛い、脚が痺れるように痛い。

先に行くとオフィシャルが完走選手に水を配っている。
水を受け取ると先にゴールしていた20kmエントリーの
すーGさん、りゅうパパ、kameyamaさん、いのエうさん達
が声を掛けてくれる。

みんなで健闘を称えあう。
しばらくすると
イムさんや、ちえ蔵らがゾクゾクとゴールしてくる
みんないい顔をしている。

が立っているだけでも身体が辛い
ゴールエリアを後にし自分達の荷物を置いているところに移動する
身体の痛みが激しくなり
よろよろ滑っている自分が滑稽でたまらない

荷物のある場所に帰ってきて
しゃがもうとすると腰が痛くて
ブーツを脱ぐ事さえままならない感じだった
そして、しばらく動けなくなってしまった。



賑やかさをます会場の雰囲気とは裏腹に
自分はレースが終わってしまった事に寂しさを感じた。

苦しかった、長かった
とにかく終わった、帰ってきた
転ばずにすんだ


初めての国際大会
そして厳しいコース
安堵感、充実感もある
嬉しくもあった

でも悔しかった。
雨に、水浸しの路面にどうする事も出来なかった自分に
それが一番だ

重たいけど動画です。
mms://kictv.cafe24.com/kictv/SWIC_2005_women_42km.wmv
mms://kictv.cafe24.com/kictv/SWIC_2005_Men_42km.wmv


公式タイムは 1:24:21.925 でした。

SWIC7

2005-05-14 01:07:41 | Weblog
現在地点からゴールまでは昨日下見をしていたので
コースプロフィールは頭に入っている。
20km合流直後の登り、その後に続く長く緩い下り、
ここはもう過ぎた
これから先の問題はおそらく高速道路のICだろう

大きな高層ビルの前の交差点を過ぎると
ICの入り口が登りになっている。
我々のパックは相変わらず20kmの選手の間をすり抜ける様に進む。
昨日の下見で分かっていた事だが
この高速道路はアスファルトを敷いたばかりで車線の白線が引いていない
その代わりに車線の目印に何か緑色の小片が道路に何メートルおきにか刺さっている
まず、それにスケートを取られないように気をつける。
また敷いたばかりのアスファルトは油っぽいせいか少し滑りやすい
登りの後に続く下りが結構急だったので余計慎重になった。

下りでパックが割れた。
というか集団で下る事にいい加減、危険を感じた
あまりの人の多さにパックで進路を取るより
もっと少人数で動いたほうが機転が利くし進路変更がしやすい。
皆考えは同じ筈だ、自分の前の集団はこの下りでおのおのバラバラに動き出した。

自分も単独で20kmの選手の間をすり抜けながら下る
前の選手の行動を気にしなくて良いし
視界が開けたのでかえって精神的に楽になった。
でも前の選手と離されてもいけない、
距離を置きつつも、しっかり前の選手をマークする。

下りが一段落すると
お互い引き寄せ合うように
また集団が形成される。
でも後ろは少し離れたようだ。
今まで感じていた物が感じられない。
これはなんといったらいいか、プレッシャーのような圧力ではない
人の意思みたいな、そういった圧力を感じなかった。

自分の前は同じメンバーがまた同じ順番で並んでいる
そして自分は少しこの状況にイライラしてきた。
もちろん20kmの選手を間を行くのでスピードを出せないというのが一番の原因だが
このままの状態でゴールまで行きたくはない
少しでも速くゴールしたい
一人でも多く抜いて前に行きたい
そして順位を上げたい。
ここまで、このパックに助けられたが運命共同体みたいにこのまま終わってしまうか?
嫌悪感と焦りを感じた。
でも焦って今飛び出しても直ぐに追いつかれるだろう
やるなら最後の登り、トンネルを登った後だと判断した。

下見ではトンネルに続く長い下りにスピードが出すぎるのではと心配したが
実際に下り始めると、ここまで来る間に慣れてしまったのか
全然スピードは感じられない。
我々はパックのまま行く
ただし道幅が2車線と狭く、そこに20kmの選手が大勢いるものだから
先頭はまた大声で叫ぶ羽目に、そしてとうとう怒りだした。
怒鳴り散らさなければ気が付いてくれないし、前の進路を開けてくれないからだ。
言葉は判らなくても喜怒哀楽っていうのは感覚的に判るもんだ

トンネルの内に入るとそれほど暗くは無い
オレンジ色の水銀灯が中を照らし、むしろ明るい
車でなくスケートでトンネル滑るスケーター達
初めて体験する光景に興奮した。
そして一瞬だがレースである事を忘れ
この不思議なオレンジ色の世界の中に夢見心地になり
その空間に自分がいる事を幸せに思った。

トンネル出口の登り坂が現実に引き戻す
このコース最後の登り坂だ
距離は短いが急に感じる
やっぱり疲れているのか?
足が重い、思うように登っていかない。
これが最後だと、
気持ちだけで登っていく

上りきると反対車線にも大勢のスケーターの姿が!
この光景はいったいなんなんだろう
片側3車線道路、合計6車線に
スケータが溢れている・・・・。
目を疑うというがこの時はまさにそうだった。

しばらくすると折り返しの地点に
折り返しの際、
集団の前に出ようとインコースを回る
先頭の選手の後ろにつこうとしたが
直ぐ後ろの選手にあからさまに手でブロックされ
仕方なく後ろに下がる
またその後ろの選手間の隙間隙間に手を入れパックに入ろうとするが全て拒否され
結局、自分が元いたポジションまで下がってしまった。

これが原因で抑えていた気持ちに火がついた。
もう我慢できない
このままずるずる行ってしまう事の嫌悪感や
少しでも前に行きたいという焦りに耐え切れなくなっていた

行くしかない
自分はパックを飛び出し集団を後にした

水没

2005-05-07 21:59:26 | Weblog
携帯電話を水溜りに落としました・・・・・
本当に一瞬の出来事だったんですが、完全に壊れました。
動きません(泣)

慌ててお店に行き相談しましたが機種変更するより修理の方が安上がりみたいなので
メーカー修理に出しました。一週間ほどで直るそうです。
代替の機種も借りられました。
電話番号もアドレスもそのままなのでとりあえずは安心です。

ただし困った事に携帯のデーターは全部消えて帰ってくるそうなので
そう電話帳にいれてあった数々の電話番号とメールアドレスが消えました・・・・・。
私は韓国では女性に嫌われている”B型の男”なので
PCにデーター残しているほど几帳面じゃありません~!

という理由でこのBLOGをご覧になった方で
私の携帯アドレスを知っている方は
恐れ入りますがメール(名前と電話番号を入れてくれると助かります)
を送って頂けると助かります。
すみませんがよろしくお願いしま~す   

SWIC6

2005-05-06 01:08:47 | Weblog
滑りが安定してくると余裕が生まれるのか
今まで見えなかった所に目がいくようになる
前の選手だけではなく、ちょっと半身を出すだけで先頭の選手の滑りが解る
やはり先頭は先程の韓国エリート女子選手、その後ろの大柄な男子選手が2名。
この3人だけ滑りが一段上のランクだ。
体重移動が綺麗だし安定している。
その後ろから自分の前の選手は、技術よりパワーという感じだ。

そして今日初めて後ろを振り返る。
そして驚いた!
後ろには長い列が・・・。
10~15人ぐらいはいるんじゃないのか?
という事はこのパックは20人以上の大所帯だ!
中村選手は?小竹くんは?ついて来ているだろうか?

まだ先は長い。
頭には、楽な滑りをしたいという気持ちが常にあった。
正直、前の選手は下手で一緒に足を合わせていると疲れる
それならばストライドが綺麗な先頭の3人につくのが一番だ。
でも前から4番目だと風の抵抗も増える、体力も今のポジションより消耗が速いだろう。
仕方がない、今のポジションをキープした方が懸命だと動かないことにした。

その後だった
左後ろからMSKの3選手がアタックをかけた。
自分の横を通り過ぎ、力強くグイグイ前に出て行く
先頭を抜き、このまま逃げるのかな?と思った時
MSK先頭の選手が尻餅をつく様に転倒した。
他のMSKの2選手はそのまま滑るのを止めた
我々を追ってこない。
きっと転倒した彼を待っているのだろう。
登りで助けられただけに彼らが少し心配になった。


膠着状態が続く
誰も逃げない。ポジションを替えもしない。
それが先程のMSK選手の転倒で分かった。
今のスピードが我々には転ばないギリギリのスピードなんだと。
逃げたいし、追いたい、前に出たい気持ちは皆あるのだ
でも焦って今以上にスピードを出せば待っているのは
濡れたアスファルトに足をすくわれ、転倒だ。

視界が開けてくる、
もうカーブや大きな下り坂はない、このまましばらく真直ぐだ
遠くにソウル市内の高層ビルが見えてきた。
もうすぐ20kmとの合流地点だ。
これだけトップから遅れると、もうコースには20kmの選手が来ているだろう。

そして遠くに合流のSegok-dong交差点が見えてくる。

見えてきたのだが・・・・・・
よく見れば、交差点の向こうに黒々した道路は見えない。
そこには人、人、人、スケータの群れが道路を埋め尽くしている。

この中を我々は行くのか?
この交差点で31,9km地点。
あと残り約10kmだ。

交差点に差し掛かり
前方にみえるスケーターの数にも驚いたが右側から此方に向かってくるスケーターの数にも驚いた。
いったい20km出場選手の何人目ぐらいなんだ?

いよいよ交差点を通過、人の群れに突入する。
ここは緩い登りだが20kmの選手はドタバタ登っている。

先頭の選手達が大声で何度も叫ぶ!
なんと言っているか判らないが想像はつく。
退いてか邪魔か、進路をゆずれ、もしくは後ろから抜くよといった感じだろう。
声のニュアンスが殺気だっている。

速度差が凄い。
20kmの選手達がまるで止まっているかのように感じる
前方はまるで森の中か林のようだ。真直ぐに進む事など出来ない。
彼らの間をすり抜けるかのように進む。

スピード様のブーツを履いてそれなりの格好をした選手もいるが
どう見てもCity Runのような感じの人のほうが多い。
手をつないで滑るカップルや親子連れ。
パックを組んでいるグループなど無く
みな思いのままコース幅いっぱいに
和気あいあいとノンビリ滑っている。

パックは彼等の間を左右に蛇行しながら進む。
路面は時間がたったせいか、都心部に入ったせいか
徐々に乾いてきているようだ。
折角スピードを上げる事が出来るのに
度重なるレーンチェンジや遅い選手達を避ける為に
スピードが上がらない
我々は一秒でも速くゴールに辿りつきたいんだ!
焦る気持ちに拍車がかかる。

緩い下り坂が続く
前方に道を塞ぐように転んで動けない人がいるようだ。
そしてその人の周りを囲むように他の人まで立止まっている!
自分も初めて日本語で”退け”と叫んでしまった。
もちろん先頭も怒鳴り散らすように叫んでいる。
どうする?先頭はどっちに行くんだ?
このパックが急に止まれる筈が無いし、減速もできない。
一瞬の判断だ!右か左かを選らばなければいけない。

立止まっていた一人が気が付き、慌てて進路を開ける
右だ!
人間一人分の隙間めがけて先頭は突っ込む。
そして我々後続も後に続く・・・・。
良かった、ぶつからずにすんだ。

気を抜いたら危ない。
今度は濡れた路面ではなく
前に立ちはだかる大勢のスケーター達だ。

SWIC5

2005-05-02 01:28:03 | Weblog
Pangyo ICの右折でMSKの選手を含め、また数人をパスする。
みな右折は苦手のようだ、これで自分はパックの前から7、8人目。

右折後も見た目には解らないが緩い登りだ。
脚がそういっている。
スキーで以前、ガスで視界不良、上も下も解らない時に斜面を足裏で感じろなんて
良く言われたのを、こんな時にふと思い出す。

しばらくすると右前方に見慣れた選手が一人でいる
ST紳の中村選手だった。
どうしたのか?明らかに滑りがおかしい、転んだのか?
お互いに気が付いたので彼に後ろに付けと手で合図をする。

帰国してから彼に確認したらやはり転倒していたそうだ。
不幸だったのは、この後にまた転倒し、なんと左足のフレームからウィールが1個外れしまったそうだ。
その時の絶望感や無念を思うとタイムや順位は不本意だが完走は良く頑張ったと思う。


反対車線、前の方からオートバイのヘッドライトの光が近づいてくる。
先頭集団だ!

あっという間にバイクがすれ違う。
その後ろを5人の選手がまた物凄いスピードですれ違う。
あれが本当のワールドクラスの滑り、そしてスピードなのか!
我々のパック全員が左側をいくワールドクラスの選手に釘付けになった。
大柄な身体からRBの優勝したボテロがいるのは解った。
それ以外はユニフォームからサロモンとFILAの選手がいるぐらいしか解らない。

その後を少し離れて20人ぐらいの第二集団。
すれ違いざま、自分はPSの山本選手を探す。
居ない?どこにいるんだ?
パックの一番後、同じPSのスーツはチャドだ!
なんだか辛そうに見える。

その後ろをまた少し間をおいて第三集団がやはり20人ぐらいで来る
後ろのほうにPSのスーツが見え、真横をすれ違う時に山本選手と確認した。
がんばれ!日本チャンピオンなんだ!もっと前にいける!
心の中で叫ぶ。

その後を女子の先頭集団と14,5人のパックが数グループ続く、
また明らかに先程の集団とすれ違うスピードが違う。

もうすぐ折り返しかなと思っていたら
反対車線をTEの小川大介選手が一人でパックにも入らず滑ってくる。
彼にガンバレと左手を上げ合図する。
分かっただろうか?それどこではないだろうか?
でもなぜ先程の中村選手もそうだが一人なんだ?
なんでパックにいない?落ちたのか?それとも逃げたのか?

その後に大きなパックはなく数人のグループが続き、女子選手のパックとすれ違う。
そして折り返しの地点に。
片側3車線の計6車線の折り返しだからそれ程のカーブではない
長良川に比べれば天国だ!
でも路面が濡れている為に慎重にターンする。
ターンの際に始めて先頭の選手が女子選手だと気が付いた。
右腰には白地に赤色の番号、インターナショナルのゼッケンが。
韓国の州選抜、代表級のエリート選手だ。
なぜそんな選手がこんな所に?とは思ったがやはりこの路面コンディションだ
不得意な選手がいてもおかしくはない。

折り返し後、どんどんパックのペースは上がりスピードは増す。
当たり前だ!行きが登りなら帰りは下りだ!
緩い下り坂がこの先の突きあたり、左折ポイントまで2~3キロ続く。
今日のレースで初めて出くわすスピードに焦る。
足下は相変わらず濡れている。
ウィールはグリップせずに空回りしているような感覚だ。
とにかく転ばないようにと神経を集中する。

左折ポイントが見えてきたあたりで10人くらいの女子選手のパックに追いつく
その中にTE大嶽選手の姿が、気が付くかどうか解らないが彼女に手を振った。
がんばれ!

突き当たりのPangyon ICの左折は下りでスピードが出ていたのでかなり慎重になる。
不思議な事にここでもまた前の選手を数人パスする。
どうやらみんなターンは苦手らしい?

自分の前の選手の脚が時々自分に当る。
明らかに後ろ蹴りになっていて時々よろけている。
こんな奴の後ろは危ないと前に出るチャンスを伺っていたが
次から次へと現れる下り坂にそれどこではなくなった。
気を抜くとその前の選手に離されるのだ。ただダウンヒルしているだけなのに
おかしい下りで離されるなんて?
キュルキュル音がしていたがとうとうベアリングがイカレタみたいだ。
仕方なく下りで前の選手の腰を持って引き寄せ、離されないようにする。

しばらくは、そのまま逃げもなく膠着状態が続く。
だが行きの登り坂は全て下り坂だ!
何度も現れるダウンヒル状態に転倒してはいけないと神経が張りつめる。
大きな立体交差の坂を下る時、胸と腰のゼッケンが物凄い音を立ててバタついていた。
こんな音を聞くのはスキーレース以来だなと思うが、
これは体感で時速50~60kmぐらい出ているのは大体解る。
当然路面は濡れているし、もうなるようにしかならない。
どうにでもなれと自分でもこの状況に呆れ果てた。

そのせいか、吹っ切れたのか分からないが
下りの後、時々現れる登りに逆に安心したりもする。
この辺りで自分の心配をよそにスケートが安定してきたのに気が付く。
上りもドタバタしない、パックの一体感がそうさせるのか
頭ではなく身体が濡れた路面の滑りのコツを掴んだようだ。

SWIC4

2005-05-01 22:55:44 | Weblog
遠く先に長い一列になったパックが見える
どれくらい離れているんだろうか
抜かれた人数を考えればあれが先頭集団であるはず筈がない
いったい先頭集団とはどこまで差が開いたんだろうか。
今の状況を無視してそんな事を考えた。
現実は今いるパックにしがみついているのが精一杯なのに

パックに入っていると視界は前の選手の背中ばかりで
景色を見ている余裕なんか無い
とにかく足が重い、脛が痛い。息は比較的落ち着いてきたがこの苦しさはなんだろう

普通ドラフティングで流していれば余裕が生まれ楽になる筈なのに
太股は段々辛くなってくる
それからだ真直ぐなこの道が実は登り勾配だと気が付いたのは
そして、今頃気が付いたのかとまるでこのコースに嘲笑われるかのように
その先の右カーブの向こうに見えてきたのは急勾配の長い登りだった。

パックのスピードは急に落ち、誰もがドタバタしはじめる
ペースの違いかテクニックの差か、
パックは左右に広がりばらつき出す

自分も目の前の選手がいなくなると途端にリズムが無くなり
いきなり苦しくなる
脇を後ろの選手に抜かれていく
その中に小竹くんもいた。
軽快なピッチで彼は坂を上っていく
やっぱりA2Aのような長距離ロード、まして雨レースを経験しているだけあって流石だ。
彼はパックの先頭の方に、自分は坂を上りきるとパックの後ろ方になってしまった。
しばらく平坦な道が続く、しかしそう見えるだけで緩い登りだ。

しばらくして先頭の方で逃げがあった、それに小竹くんは着いて行く。
置いていかれると思ったが追いかける体力はその時はない。
このパックにいるだけで精一杯だった。
疲れて顔は下を向きがちになる

頭を上げ目を前に向けると先に行った筈の小竹くんが一人で滑っていた。
落ちたのか前がまた逃げたのか。
瞬間、彼が左にいきなり倒れた。
時々ある道路の繋ぎ目に左足を取られたみたいだった。
転がる彼を横目に「大丈夫?」と声を掛ける。
一回の転倒でも身体には相当なダメージになる、心配になった。


そこから先はどの選手も一番辛い時間だった思う。
水が溜まった路面に登りで体力を使い、その後の緩い下りでもまた滑る足元を抑えるために必要以上の筋力を使ってしまう。
気がつけばパックはバラバラになり、周りは自分とMSK(maple skate korea)2選手の3人に。
しばらくはこの3人で進んだ。
何度も続く急な上り坂、もちろん日本ではこんな坂をスケートで登った事はない。
大柄なMSKの選手は決して上手ではないのだが力強い、少しでも気を抜くと先に行ってしまう。
離されてはいけないと必死になった。
途中後ろから4、5人のパックが抜く、だが登りになると後ろに下がってしまう。
自分の後ろの付く気配も無く、また離れていく。
どうやらこの二人は登りに強いみたいだ。
正直この2選手には本当に助けられた。もしここで彼らについて行かなかったら
あの坂たちを一人で登っていたら完全に潰れていたろう・・・。

この二人に引ぱってもらっているせいか、自分も身体は疲れているが
濡れた路面に、登りに徐々に慣れてきたのが分かる。
比較する選手がそばにいないので分からないがペースは上がっていたようだ。

急激な上り下りが続く立体交差を登りきると前に10人ほどのパックが見えた。
考えは同じなんだろう!
追いつこうとMSKの二人は急にピッチが上がる。
自分も必死になって追いかける。
徐々に差がつまり、とうとうパックを捕まえた。

そのパックにMSKの選手がもう一人。
言葉が解らないが、彼らは声を発し、前のMSK選手が後ろに下がると3人がパックの中で縦に揃う
そしてお互いの健闘を称えるかのように声を掛け合う。
「追いついた、ここまで辛かったぜ」そんな事を言っているようだった。

しばらくすると先の交差点で右折の案内をしているオフィシャルが見えてきた。
右折の先は折り返しがまっている。距離にしてコースのやっと半分。
もうちょっと頑張れば折り返しだという安堵感を少し感じた。