丹波明 Concert Portrait

2013-02-19 | 音楽
このところ、丹波明 Concert Portrait のリハーサルで忙しかった。
練習に立ち会われた丹波さんと作曲について音楽についていろいろお話しをさせてもらった。
氏の作品は一昨年のリサイタル以来だが、一貫した技法が使われている。その技法はある意味シンプルである。

簡単にいえば、Cellules (細胞組織)の組織された偶発性音楽である。
それぞれの細胞は時に気ままに勝手に奏者の意思で選ばれて演奏されるが、限られた時間内での規則がある。
ここまでは技法上の問題で、にたような事はたとえばルトスラフスキーもしている。

その事を氏に尋ねたら、全く偶然に二人が同時期に同じ事をしていたらしい。お二人は全く面識がなかったそうだ。
ハープと弦楽四重奏の為の「Quinque」は1976年にラジオフランスの委嘱で書かれ初演された曲だが、
初演はパリ管奏者で現代音楽の先鋭だった Francis Pierreの他、パリ管のコンマスヨルダノフ等の一流演奏家を集めた演奏だった。
ぼくはそのころちょうど音楽院の学生でラジオ等でTambaの名を知っていた。

さて、その音楽。一見単純なようでいざ演奏となると楽譜の扱い方がまず物理的に難しい事に気付くがなんとかクリアできた。
縦のリズムを合わせるという面倒な作業がないぶんラクと言えばラク、しかしそう言う作業に慣れたクラシック音楽家にはどこか心もとない。
ハープは様々な特殊奏法が駆使される。

一応出来上がりかかって来るとそこから醸し出されて来る、ある種のうつろいやすい
「幽玄」的美しさにはっとする。「とき」と「時間」の流れの違いと氏はおっしゃっているが、
水平方向に完全に管理され尽くしたた西洋音楽に対するある種のアンチテーズなのだろう。

あの頃はいろいろ試していたからとおっしゃるが、能や雅楽に精通された丹波さんの丹波たる音楽だろう。

コンサートは3月2日、横浜みなとみらい小ホールで19時から。

愛媛県西条市でのコンサート

2013-02-02 | 音楽
愛媛県西条市総合文化会館大ホールでの海老彰子さんとのジョイントコンサートは盛況のうちに終わりました。

文楽を弾いたあと聴衆の皆さんに、「クラシックは誰でも、、、」調の安易な呼び込みスピーチじゃなくて、
音楽はスピーチ、物語、ストーリだから(文学的な意味ではなく)、聞く側もスピーチが解らなく
ならないように、それなりの努力をして聞かなければ、ただ退屈だけですよ。とか喋りました。
(わざとちょっと教育的に^^)

プログラミングがちょうどストーリー性多い曲が多かった事も手伝ってくれたのか、
コンサートは殆ど熱狂の内に終わりました。アンコールも沢山。

チェロとピアノの間の海老さんのソロの選曲は概ね海老さんにおまかせしたのだけれど、
ソデで聞いていて考え抜かれた選曲に舌を巻く思いでした。プログラムが進むにつれて、ある種の高揚感を自分も覚えました。

プログラムは主催者のご挨拶のあと、
黛敏郎「文楽」
(上記の僕のスピーチ。)
ドビュッシー 「月の光」「亜麻色の髪の乙女」「ピアノの為に」チェロソナタ。
休憩
シューベルト 「アルペジョーネソナタ」
ショパン 夜想曲Op48-1、「雨だれ」「英雄ポロネーズ」チェロとピアノの「序奏と華麗なるポロネーズ」

調性的なつながりも抜群だったのも偶然ではないと思う。
前半はリクエストのあった「文楽」から始めなくてはいけなかったのでその後どういう風につなげるか、
難しかったが、「月の光」は驚くほど違和感がない。「ピアノの為に」のトッカータである種の絶頂に達した時に
「チェロソナタ」も非常に効果があった。
実はチェロソナタは「月のピエロ」からインスピレートされた曲。
暖かい月夜でした。

後半はシューベルト独特の「光と陰」「悲しみと喜び」の交錯。
そのあとに夜想曲、「雨だれ」、英雄ポロネーズという風につながって行き、初期の比較的表面的で解りやすい
コンサートピースのチェロのポロネーズも弾いていて上手くつながっているなと思った。

愛媛の皆様ありがとうございました。