ブログ de なんで屋 @東京

みんなで「これからの社会」を考えるために、『場』と『認識』を提供する社会事業です。

現実直視の構造観念と、ゴマカシのスピリチュアル

2007-02-22 23:27:49 | 露店紹介
なんで屋のファンの方でセラピストをされている方から、「最近、スピリチュアルに嵌っていてカウンセリングが進まない人が多くて困っている」という話を聞きました。

精神科医の香山リカさんが興味深いコラムを書いておられます。2/17の毎日新聞「スピリチュアル・ブームを考える」からの引用です。

>精神科の診察室を訪れて、「前世療法も受けてみたい」「パワーを送ってくれる治療師にもかかってます」と語る人が増えている。心理学を学ぶ学生たちも、当然のように「霊はあると思う」「死後の世界からよみがえる人もいる」と口にする。(中略) しかも、そういった世界を信じる人の多くは、「目に見えない力や現象を信じる人が増えたのは、社会が進歩して人間の心が豊かになった証拠」とこの傾向を肯定的に捉えている。(中略)「これって本当?」とすべてを疑うのは野暮、という価値観の広まりは、テレビ番組の捏造問題とも強く関係している。

>一方、テレビでは、子どもたちも見ているような時間帯に、「死者の霊からのメッセージ」を読み上げる、といったスピリチュアル系番組が堂々と放映されている。精神医療の現場では最近、「死後の生」を前提にした上で自殺を企てる子どもや若者も目につくが、彼らがこういった番組の影響をまったく受けていない、とは考えがたい。<

>昨今、売れているスピリチュアル系の書籍には、「すべてのことはあなたの意志を超えたところで決まっている必然なのだ」というメッセージがあふれている。その”意志を超えたもの”は、場合によって「前世」であったり「宇宙の大いなる力」であったりするのであるが、いずれにおいてもこれらのメッセージにはふたつの重大な意味が含まれている。<

>ひとつは「だから、今が不本意なのはあなたの努力不足ではない」ということ、もうひとつは「だから、いくら現実社会でがんばっても何も変わらない」ということだ。つまり、「あなたは悪くない」と免責しながら、「少々がんばっても何も変わらない」と努力の放棄や不満の受容をも勧めているのである。少しでも状況を改善したければ、あとは「守護霊」や「宇宙の果て」からのメッセージを媒介してくれる霊媒師や超能力者の声に耳を傾け、それに従うしかない。<

>「なんとかしてほしい」と願う個人が霊や宇宙といった超越世界と直接、つながって救われよう、として起きている今のスピリチュアル・ブームでは、「組織や世の中を自分たちの力で変えることでなんとかなるかもしれない」といった社会的視点が丸ごと抜け落ちている。(中略)日常的に安易に「死後の世界」や「宇宙の力」を持ち出して解決しようとするのは、決して人間や社会の進歩ではなく、むしろ退化と考えた方がよいのではないだろうか。<(引用ここまで)

うまくいかない現実を誤魔化し、正当化することで自分の頭だけを充足させる、それがスピリチュアル・ブームということだと思います。

原始人類も「目に見えないもの」を見ました。精霊信仰です。自分たちを遥かに超えた超越存在たる自然を畏れ敬い、その背後に精霊を見た超越思考。確かにそれが人類固有の観念機能の原点です。但しそれは、現実は変わらないと諦めるためでも、自分は悪くないと正当化するためでもありません。極限的な生存圧力に適応するために、ひたすら目の前の現実世界を直視し続け、見出した可能性が精霊信仰だったのです。

目先の充足を求めてスピリチュアルに嵌る人が増えるのは、現実を突破できる答えが見つからないからです。今必要なことは、自分たちを遥かに超えた超越存在たる社会を直視し、社会の問題を解決することです。そのために必要な超越思考が構造観念です。ゴマカシの超越思考(スピリチュアル)ではありません。

にもかかわらず、スピリチュアル・ブームをはじめとするマスコミのゴマカシ報道が、(香山さんも指摘されているように)人々のゴマカシ収束を加速しています。マスコミ発のゴマカシに代わる、新しい共認形成の場をつくること、それが「なんで屋」の役割です。(本郷)



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11 コメント

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私もちょっと興味がありましたが… (さち)
2007-02-23 07:58:19
>「あなたは悪くない」と免責しながら、「少々がんばっても何も変わらない」と努力の放棄や不満の受容をも勧めているのである。

スピリチュアルにはこんな意味合いがあったんですね
表層だけで、本質を理解してないで信用することが
恐ろしいと思いました

>社会を直視し、社会の問題を解決すること

こっちの方がやる気がでます
本来のスピリチュアリズム (ともこ)
2007-02-23 12:18:43
私は「スピリチュアル」と呼ばれる仕事をしていてつくづく感じますが、残念ながらセラピスト側にもこのような傾向が見て取れますね。(むしろ多いかも)

テレビの影響で、誤った捉え方、スピリチュアルの表面(全ては霊のせい・前世のせいなど)を捉えているだけに終始している人が多いです。

生きていれば、現実を受け止めきれないほど辛いこともありますし、亡くなった人のメッセージを知ることで罪悪感や苦しみから抜け出せる人も多いので、否定は出来ませんが、

本来のスピリチュアル=今、現実に生きていることを大切にすること・生かされていることへ感謝と喜びを知ること・・・それによって、よりよい人生を創造すること

だと思います。
ただ闇雲に霊の世界やオーラを知ることで終わっては、何の意味も持たないと思いますね。

このような世界をマスコミに「エンターティメント」にして欲しくないですし、テレビを見たり、本を読んでいる人にもスピリチュアル=現実逃避のツールではないということを知って欲しいと思います。

*スピリチュアルケアについて説いている経済学者の飯田史彦さんの本は、本質的な本だと思います。

スピリチュアルって? (クリリン)
2007-02-23 13:05:24
ウィキペディアで調べてみると
>スピリチュアルとは、「黒人霊歌」「白人霊歌」と呼ばれてきたものの総称である。
奴隷としてアフリカからつれてこられたアフリカ系アメリカ人にキリスト教が広まり、賛美歌とアフリカ独特の音楽的感性が融合したものである。

国語辞典では
>〔「精神の」「霊的な」の意〕一八世紀後半から一九世紀末にアメリカ合衆国で生まれた宗教的民謡。伝統的な詩編歌や賛美歌と区別するための呼称で、白人のホワイト-スピリチュアルズと黒人のブラック-スピリチュアルズ(黒人霊歌)に区別される。

どうにもならない「奴隷」と言う現実から逃避する為のものだったのでしょうか?

ともこさんのコメントが興味深いです(以下引用させていただきます)

>現実を受け止めきれないほど辛いこともありますし・・・

⇒現実を見る事無しにはその辛さは解消しない。

>亡くなった人のメッセージを知ることで罪悪感や苦しみから抜け出せる

⇒歴史事実を知れば、「何でこうなっているかがわかる」→「じゃどうする?」と可能性に向かう思考が進む。

>本来のスピリチュアル=今、現実に生きていることを大切にすること・生かされていることへ感謝と喜びを知ること

⇒現実を直視して、感謝と期待が出来る様になる事が本当の救い(=充足)なのだと思います。

そのために必要なのが現実を解明できる理論なのだと思います。
辛い現実、上手く行かない現実、この逆境が「どうして?」「どうする」に転換する以外には何も解決しないと思います。
古代宗教と同じ倒錯思考といった状態ですね。 (わたしん)
2007-02-23 16:02:14
現実は変わらないものとして目を背けさせて、実際に見えないもの(スピリチュアル)に可能性がある。そして、うまく行かない現実や努力しない自分は決して悪くないとする
完全に現実捨象し、頭の中だけでの充足を求める。

古代宗教に似たものを感じます。
まさに倒錯思考といったじょうたいですね・・・
マスコミのやっていることは霊感商法 (本郷)
2007-02-23 16:31:55
みなさん、コメントありがとうございます。

>スピリチュアルケアについて説いている経済学者の飯田史彦さんの本は、本質的な本だと思います。

この方のお名前は聞いたことがあります。飯田さんの他にも、精神世界のことを研究している方には真っ当な方もたくさんいるはずです。

問題なのは、そういう方々ではなく、マスコミです。

なんでも前世や霊のせいにして自己正当化する現在の「スピリチュアル」を、エンターティメントにしているのは、マスコミです。人々の不全を商売のネタにするマスコミは、二束三文の壷を法外な値段で売りつける「霊感商法」と何ら変わりがありません。

鋭い! (nomura)
2007-02-23 20:36:24
引用した香山リカさんの考察は鋭い!ですね。

本郷さんの解説もわかりやすい。

スピリチュアルブームとは現実を捨象する思考そのものであることがはっきりわかりました。
スピリチュアル (のだおじさん)
2007-02-23 22:03:00
これまで、精神の世界は神秘的な世界として、だれもまともに追及してこなかった。

心理学が比較的科学的な手法で人の心を捉えようとしているが、フロイトもユングも神秘の世界から脱しきれていない。

それに対して、人の精神が本能、共認(自我)、観念から構成されていることを、生物、猿、人類の進化までさかのぼって解明したのが実現論。

このような構造認識が出来て初めて、精神の世界が神秘の世界から、誰もが分析議論できる現実世界の問題になった。
怪しい (社会人)
2007-02-24 18:05:55
私は「変だ」とか「信じない」とか思っていましたが、これも単なる価値観でしかないなぁ~と思いました

>今必要なことは、自分たちを遥かに超えた超越存在たる社会を直視し、社会の問題を解決することです。そのために必要な超越思考が構造観念です。ゴマカシの超越思考(スピリチュアル)ではありません。

答えが出せていない以上こういった類のものはいっぱい出てきそうですが、それに対して重要なのは「信じない」とかいう価値観ではなくて構造観念だと思いました

さらにそれを発信するのも重要なので「なんで屋」の役割は重要ですね
見る側の体制と理解。 (新山 砂名)
2007-02-26 13:09:28

私は、受け取る側にも課題があるように思えます。
現実の問題がおきたとき。
占い師や友達は、ただ、アドバイスを与える存在。
行動するのは自分自身だし、それがすべてだとなん
でもそのせいにする人に、正しく理解するという
事ができていないように感じます。
感じ方は人それぞれですが、自分の問題にたいする
言葉だとおきかえられないで現実から目をそむけて
見ているひとがおおいというのは、正しく理解して
いないことのように感じます。
Unknown (本郷)
2007-02-26 15:05:31
>自分の問題にたいする言葉だとおきかえられないで現実から目をそむけて見ているひとがおおいというのは、正しく理解していないことのように感じます。

スピリチュアルに嵌る人の意識はどうか?という問題ですね。それもその通りで、どうすればいいか?答えが見つからないから目先を充足してくれるものに流れる。その一つが「スピリチュアル・ブーム」。この目先収束という意識潮流があって、それに拍車を掛けているのがマスコミという構造です。