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「5年間ノーワックス」広告に逆転判決

2005-08-13 | 裁判
自動車用コーティング剤の広告で、「5年間完全ノーワックス」などと虚偽の表示により消費者に誤認を与えたことにより損害を被ったとして、ワックス販売会社が起こした裁判の控訴審判決が8月10日に出ています。
原告の主張を認めた一審判決を取り消し、その主張を退ける内容となりました。

     ◇

●当事者
一審(東京地裁)
原告:株式会社ウイルソン(東京都中野区)
被告:中央自動車工業株式会社(大阪府大阪市)

今回の控訴審(知財高裁)
控訴人:中央自動車工業
被控訴人:ウイルソン

●控訴審に至るまでの概要
中央自動車工業は、自動車用コーティング剤「CPCペイントシーラント」(以下、「CPC」)の輸入・販売を行う事業者で、その広告において、次のような表示を行っていた。
「新車時施工 輝きを!5年間保証」
「確実な施工によるテフロン被膜は水洗いなどで長期間落ちることが無くオリジナルペイントの輝きをいつまでも維持させる『5年間完全ノーワックス』という夢を実現したのです」
「新車でCPCペイントシーラントを施工された場合は、5年間保証(新車登録時1年以内なら3年間)もちろん効果は保証期間以上に維持される品質を持っています」

これに対し、ワックス販売会社のウイルソンが、これら表示はCPCの品質・内容を誤認させるものであり、不正競争防止法2条1項13号の行為に該当するとして、これらを記載したカタログの廃棄、販売の差し止め、謝罪広告の掲載、1億1000万円の支払いなどを求めた。

一審の東京地裁(平成16年9月15日)は、ウイルソンの主張を認め、当該表示の禁止、1000万円の支払いなどを中央自動車工業に命じた。
これを受けて、中央自動車工業は即日控訴した。

●控訴審での検討
「施工後5年間、新車時の塗装の輝きが維持される」との表示は、CPCの品質・内容を誤認させるか?
(※ウイルソンは、CPCについて、新車時の塗装の輝きが5年間持続する効果がないとする根拠として、耐候性試験の結果を提出していますが、裁判所はこれについて検討したもののうち、主なものを紹介します)

【甲126試験】
(財)日本塗料検査協会がウイルソンの依頼を受けて、ブランク試験片とCPC施工品3種の試験片について1000時間耐候性試験を行い、光沢度の測定をした。
その結果は、いずれもほとんど差異がなく、当初の光沢度から2分の1以下に低下していることが認められる。(つまり、CPC施工品でも光沢度が維持できない)
▽ブランク試験片 94→38(洗浄後37)
▽CPC施工試験片(10日屋内放置) 94→37(洗浄後38)
▽CPC施行試験片(10日屋内放置+メンテナンスクリーナー使用) 95→39(洗浄後40)

しかしながら、この検査方法は必ずしも適切とはいえない。
・この試験の試験片は、わが国で80年代前半以降、自動車上塗り塗料として使用されていないアミノアルキド樹脂塗料の塗板が用いられている。
・アミノアルキド塗料は、その後使用されるようになった熱硬化ポリエステルや熱硬化アクリルなどに比して劣化しやすい。
・自動車塗装板の上に施工されるCPCの効果を検査するに当たって、そのような現在の自動車に用いられていない劣化しやすい塗料を使用した試験片を用いて実験を行うことは必ずしも適切とはいえない。
・また、CPC施工試験片の具体的な作成手順・方法が明らかでないことを併せ考えると、同試験の結果からCPCの効果を的確に認定することは困難であるというべきである。

【甲168等試験・甲170試験】
上記の点を考慮して、ウイルソンが新たに日本塗料検査協会に依頼して行った試験である。
それによれば、1000時間後の光沢度は、CPC施工品と未施工品とでほとんど差異がなく、いずれも50%前後となっている。
この結果から見る限りは、CPCには塗装面の光沢度の劣化を防止する効果すらないということになる。

しかしながら、この結果には以下の欠陥がある。
・CPC施工試験片でアミノアルキドは平均値70に対し、熱硬化ポリエステルは43と光沢度が著しく劣る結果が示されている。
・熱硬化ポリエステルよりも劣化しやすいとされているアミノアルキドの方がかなり優位にあるというのは通常考えにくいことである。
・この点についての合理的な説明も見当たらない。
・また、この試験では、光沢度が経時的に大きく下落している結果が示されているが、その一方でウイルソンが行った実車光沢度測定報告によると、CPC未施工品4年~10年程度の中古車10台について光沢度を測定した結果、その洗車後の平均光沢度は91.8であった。
・ウイルソンの提出する証拠自体に相互に整合しない結果が現れており、その点についての合理的な説明も見当たらない。
・上記の点からすると、耐候性試験の結果が必ずしも自然条件下における実際の状況の変化と常に一致するとは限らないことが窺われる。

【メンテナンスクリーナー使用について】
・中央自動車工業提出の「乙148試験」は照射200時間ごとにメンテナンスクリーナーを塗布しているので、ウイルソンが行った試験条件とは異なっており、ウイルソンはこの条件設定が不合理である旨主張する。
・しかし、CPCにはメンテナンスクリーナーが付属品として付いており、CPCの従前の販促用カタログでは次のように書かれ、CPC施工後にメンテナンスクリーナーの使用を推奨している。
 「水洗いをしていて落ちない汚れが目立ってきたら早めにボディー全体にご使用下さい」
 「ご使用の頻度は年に2~3回ボディ全体に・・・」
・もともとCPCは付属しているメンテナンスクリーナーとの併用を前提とすることを表示しているといえる。
・したがって、上記試験の条件として必ずしも不合理・不適切なものであるということはできない。
・両社の試験はどちらも、ASTM-G53という同じ規格に従った耐候性試験でありながら、著しく異なる結果が現れており、メンテナンスクリーナーの使用の有無のみならず、それぞれの試験における具体的な手法・条件・試験片の調整等の微妙な違いなどに大きく影響されていることによるものであることを窺わせるものといえる。

【まとめ】
・耐候性試験は、試験方法・条件・試験片の調整などによる影響を受けやすいものである。
・まして、一方において、CPC施工品の光沢度保持率が91.9%であることを示す中央自動車工業側の試験結果がある。
・また、実際にCPC施工から5年経過後の複数の車両の平均光沢度が、93.7%、96.1%という高い数値を維持していることを示す測定結果もある。
・これらに照らすと、ウイルソンの各耐候性試験結果による、新車時の塗装面の光沢度を5年間持続する効果がCPCにはないとまで的確に認定することはできないといわざるを得ない。
・「新車の輝き」が持続しているかどうかということ自体が、多分に見る者の主観によるところが大きく、ある程度の幅を持つものである。
・これらを併せ考えると、本件全証拠をもってしても、「新車時の塗装の輝きが5年間維持される」との表示が虚偽であり、その表示が需要者等に被告商品の品質及び内容を誤認させるものであると認めることはできない。

●結論
ウイルソンの請求する表示の使用差し止めおよび損害賠償は理由がないから、棄却する。

     ◇

地裁と高裁で反対の結果となりました。
新車時にCPCを施工して、メンテナンスクリーナーで一定期間ごとに手入れをしていれば、新車時の輝きが5年間保証されるというもの。
一般的に「5年間保証」などと言うと、いろいろなイレギュラーなケースが出てきて、苦情になることが多いかと思うのですが、この商品はどうなんでしょうか。
私の周りにはこれを施工した人がおらず、実際のところどうなのかが分かりません。

もし、5年より前に光沢がなくなり苦情を言ったとしたら、「あなたのメンテナンスが悪い」と言われてしまったりしないのでしょうか。
5年という長いスパンであること、判決でも言っているように「新車の輝き」とは主観によるところが大きいことなどから、トラブルになるケースも多いのではないか、と気になります。

報道によれば、ウイルソンは上告するようです。
ちなみに、ワックス販売会社は「ウィルソン」ではなく「ウイルソン」です。(イが大きい)

H17.8.10知財高裁 平成17(ネ)10029等 不正競争民事訴訟事件(最高裁判所HP)

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11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
強力な布陣 (駒沢公園日記)
2005-08-14 12:10:07
こんにちは。お盆休みいかがお過ごしでしょう。



今回の不正競争事件、控訴側弁護士は牧野先生をはじめ多くの弁護士を揃えましたね。



いったい、いくらかかったんだろう・・・
Unknown (管理人Nancy)
2005-08-15 09:33:49
さすがに15日で、電車がすいてること。

こういうときは出勤するにかぎります。電話も鳴らないし。

弁護士いっぱい並んでましたねー。
Unknown (メック)
2006-02-02 22:04:32
はじめまして。メックと申します。

CPCペイントシーラントってなんだろうと思って検索していたら、こちらのブログを見つけて読ませていただきました。

CPCペイントシーラント自体の話題では無かったけれど、非常に興味深い話でしたので、トラックバックさせていただきました。



記事が読みやすく判りやすかったので良かったです。



またこれからも、良いブログ、期待しております。



それでは、失礼いたしました。
Unknown (管理人Nancy)
2006-02-02 22:35:25
メック様

ご丁寧にありがとうございます。

読みやすく判りやすいとコメントくださり、まさにそれを心がけて書いているので、本当に嬉しいです。

車がお好きなんですね。

今後ともよろしく。
CPC一年目です (セダン)
2006-08-11 16:58:31
紺のメタリック車です。

水洗いで完全に光沢回復してます。

もうすぐ1年なのでディーラーさんにきれいにしてもらいます。
( 。・_・)/コンニチハ (ごんたろう♪)
2007-02-27 02:15:13
はじめまして。何気にワックスの所を検索していたココに来れました^^ごんたろう♪と言います。よろしくです。
そうですかぁ~。ウイルソンがネ~。やはりノーワックスと謳われると自分の所のワックスが売れなくなるからその謳い文句を消したかったのですね^^。
自分は、中央自動車ともウイルソンとの両方取引のある問屋に長い間いたのでよくわかっているつもりです。

ちなみに、nancy_9さんの言われている、≪もし、5年より前に光沢がなくなり苦情を言ったとしたら、「あなたのメンテナンスが悪い」と言われてしまったりしないのでしょうか。≫の件ですが、答えは、「はい。言われます^^」。CPC自体の皮膜は市販されているワックスやコーティングの皮膜より厚く硬いですが、メンテナンスをしないと5年という年月、光沢など維持できません。専用のメンテナンス液がワックス成分を含まない簡易コーティングなのでノーワックスと謳っているのと思います。
メンテナンスには専用のメンテナンス液を条件にしていますがシュアラスターワックスなど研磨剤や汚れを落とす成分の入っていないものだったらOKだったりしますね^^CPCはディーラーと中央の囲い込みの作戦ですか聞いたらもちろんダメって言いますけれど^^;
長くなってすいません。
本当に面白い記事でした。思わず頷いたり笑ってしまいました。  また、来させて下さいo┐ペコ
Unknown (管理人)
2007-02-28 20:41:29
ごんたろう様
コメントありがとうございました。
私は自動車やワックスにぜんぜん興味がなかったので、単に表示の問題としてこの判決に興味を持っただけなのですが、分かる方が読むと興味深いかもしれないですね。いろんな試験が出てきて、私にはややこしかったです。(笑)
またいらしてください。
( 。・_・)/コンニチハ (ごんたろう♪)
2007-03-01 20:29:15
また来てしまいました^^;
関係者にしてはとても興味深い判決になるでしょうね~^^中央自動車側は売り上げ的にトヨタ等のディーラーも関わって来る事になり、ウイルソン側はエンパイヤ自動車(卸問屋最王手の一つ)も関わる結果になるでしょうから・・・^^記載一つで売り上げが変わってきますしね~^^
自分は、いつも、こういった判決やニュースを書くブログを見たことが無かったのですがフムフムって感じで読みいってしまいました^^
29年仕事している (滋賀県のテフロン加工業者)
2008-11-08 19:25:08
もともとペィントシーラントは手塗り用にだからメンテナンスがいる、機械仕上げ用テフロン液は摩擦熱により硬化してぼでい保護して1年に一回ノーワックス加工して最高継続 15年新車に近い光沢維持した実績がある。だから今では3年から5年持つ類似加工が多いけど10年以上光沢もっているのはまだウチしかまだないかな
1年に一回コーティング (滋賀県テフロン加工業者30年)
2009-02-22 07:41:41
1年すると鉄粉取りや汚れ傷取り等々して再加工すると10年以上光沢継続出来ます。他のコーティングは塗装研磨する事によって塗装が薄くなって光沢がかなり悪くなるから長く新車光沢継続できないです、ポリマー加工ガラスコーティングは新車から研磨する事によって光沢が薄くなるまたペィントシーラントはテフロン液配合薄めた手塗り用だから光沢継続3年から5年しか光沢継続できないメンテナンスも必ずいる当社のテフロン機械仕上げ用はディラーの社員がかなりコーティングしている、自分たちの会社のポリマー加工ペィントシーラントガラスコーティング有るのに私に依頼してくれ長い年月光沢継続した実績があるからだ

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