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2-2 イヤイヤ期の本質

2019年11月12日 | 『少子化問題を考える』


2-2 イヤイヤ期の本質

「自我の目覚め」で片づけていいのか

 子どもは2歳になるころにイヤイヤ期を迎えます。何でもかんでも「イヤーッ!!」と拒絶するあれです。それまで天使だったわが子が手に負えない野獣、あるいは悪魔のようにも見える時期です。海外では「terrible two(魔の2歳児)」ともいわれます。

 電車の中で、スーパーなどの店舗で……泣き叫ぶのを見かけますね。何がイヤで何が望みなのか説明してくれれば対処のしようもあるのですが―。
理不尽な欲求に、あるいは意味不明な欲求に親は右往左往。

 イヤイヤ期については研究があまり進んでいないようです。「親はどう対処すべきか」という議論は盛んですが、私が知る限り、他の視点に立っている議論はほとんど聞きません。未開拓の分野といってもよいでしょう。それは確たる定義がないことでも分かります。定義はあらゆる学問において議論の出発点。定義なくして議論なしといってもよいくらいです。
通常であれば、インターネットで「イヤイヤ期とは、」をキーワードに検索すれば、それらしきものがヒットするのですが、グーグルでもヤフーでもヒットしません。そこで、私なりに定義を考えてみました。
イヤイヤ期とは、幼児の成長段階を示す言葉であり、自己主張を始める時期をさす。「魔の2歳児」と呼ばれることもある。主張が認められない、あるいは欲求が充足されない場合、癇癪を起こしたり、激しい拒否反応を示すことが多い―。こんな感じでいかがでしょうか。

 イヤイヤ期は、「子どもの自我の目覚め」と子ども主体に捉えられてきました。そのため第1次反抗期であるとする立場もあります。たしかに、親の加護にくるまれていた乳児期と異なり、自己主張が始まる時期です。しかし、遺伝の見地からは、違った意義・目的があると考えることができます。

 イヤイヤ期を前章で述べた共同養育という生存戦略の観点から考えることはできないか―という問題意識が本書のキモ、核心です。次のページから詳述いたします。

ネコの生存戦略

 山根明弘氏(西南学院大学教授 理学博士)の研究によると、ネコのメスは繁殖期を迎えると、仲間をさしおいてよそ者のオスと交尾するといいます。
 氏は、「ネコの島」として有名な福岡県の相島(あいのしま)で長年にわたりフィールドワークを行ってきました。200匹ものネコを1匹ずつ個体識別した氏の研究により今までに知られていなかったネコの生態が明らかになってきました。私が、特に関心を持ったのは多様性の確保です。

 相島では、地域ごとにネコのグループがいくつかあるとか。グループといっても、群(むれ)というほど強力な絆で結ばれたわけではなさそうです。ゆるい地域コミュニティみたいなものでしょうか。そして、ネコの間で地域(縄張り?)を越えての交流はありません。ところが、繁殖期になると、メスは仲間のオスにぐるりと囲まれているにもかかわらず、隙をついて異なるグループのオスと交尾するといいます。
 この行動の背景は何でしょうか。
おそらくメスネコは、近親交配は生命力を弱めることを知っているのでしょう。誰に教えられたわけでもなく、種の多様性を確保するために、あえて他のグループのオスと交わることで生命力の強い子が生まれるということを経験で学んできたのかもしれません。そのため仲間、あるいは家族を裏切るような行動にでる―。ネコの生存戦略の一環といってよいのではないでしょうか。

 地球の環境は、時代的にも地域的にも普遍的(不変的)ではありません。温暖期と寒冷期が交互にやって来ましたし、植物が豊かに育つ時代・地域もあれば、そうでない時代・地域も。あらゆる生物は、そうした環境の変化、食糧事情の変化……に対応できるよう、多様性を確保する努力を続けてきたのです。

 人間にも多様性を確保するための生存戦略があるようです。その最たるものが、「女の子の思春期」です。幼少期は「パパ、パパ」と甘えていたのが、いつのまにか父親と距離をとるようになります。「お父さん、臭い」「お父さんの服と一緒に洗わないで!」……などとキツい言葉を浴びせることも。
 このような手のひら返しは、近親交配を避けるためといわれています。倫理・道徳の面もあるでしょうが、「近親交配は生命力を弱くする」という経験則が遺伝子に刷り込まれ、時期が来るとそうさせるのでしょう。

余談ですが;
 哺乳類は、同一種のままで多様性を確保してきました。他方、昆虫は、種そのものを増やす戦略をとっているようです。確認されただけでも、約100万種とか。


妊娠は2年ごとに

 グラフをご覧ください。霊長類の妊娠間隔を示すものです。


 

 これによると、オラウータンの場合、妊娠と次の妊娠までの間隔が約7年であるのに対して、ヒトは約2年です。一概に2年とは言いきれませんが、2~3年のスパンで子をもうける夫婦が多いのはたしか。

現代では、子どもの受験を考えて計画的に子を設けるカップルもいるようです。受験は、精神的なストレスを家族に与えますから、高校受験と大学受験が一度に済むようにという考えがあるのでしょう。
いずれにせよ、2年~3年の間隔が一般的のようです。兄弟間の年齢が近いと「年子なんだ」と、長いと「年齢差がある兄弟だね」……と違和感を示す人もいるくらいですから。
とはいえ、他の霊長類と比べ、ヒトの妊娠間隔が短いことの不自然さはぬぐえません。
この点について、山極壽一氏(京都大学総長 霊長類学)は、「妊娠のサイクルを短くして多子化・多産をはかった」と解きます。次の妊娠まで本来は5年~7年かかるところ、意図的に短縮したのでしょう。
 独り立ちまで母親が子育てに従事するのが理想ですが、数を増やすためには、できるだけ妊娠と妊娠の期間を短くして、新たに子を設けることが望ましいわけです。 そこで、子どもが2歳になると、親子関係を解消することにした、それが人類の生存戦略―と解することができます。

余談ですが;
 クマは、生後1年くらいで「子離れ」をするようです。それはそれは、見事な手のひら返し。ある日を境に、母グマは子グマを突き放すのです。突然に親子関係から敵対関係へ180°転ずるといいますから、コペルニクスもびっくりの転回ですね。

 人間は、他の動物に比べ成長が遅いというか、大人になるまでに時間がかかる動物です。だから、2歳での独り立ちはムリ。そこで、妊娠間隔の短縮と子育て期間の確保という相反する問題を同時に解決すべく共同養育のシステムを構築したのです。
 「子どもは2歳になったのだから、もう大丈夫。後は私たちが育てるから、あなたは次の妊娠の準備をしなさい」と働きかけて親子の関係を断つ。さらには、「あなたは別のパートナーを見つけて、その人との子を設けなさい」と働きかけて夫婦の関係をも断つ。そして、実親でない者による養育へと移行する―そういう共同養育のシステムを構築した。そう考えることはできないでしょうか。


余談ですが;
 かつて地球上には、我々ホモサピエンスとは傍系にあたるネアンデルタール人が存在していました。彼らは、屈強であったにもかかわらず、滅亡しました。その理由は、喉があまり発達していなかったので音声表現が上手でなく文化の継承がなされなかった、男女の役割分担がなされていなかった(全員が狩猟に参加?)……などといわれています。加えて、共同養育がなされていなかったのではないでしょうか。あくまで私の想像ですが。

 「甘い新婚生活もせいぜい3年」といいますが、夫婦間の関係が悪化するのは、この多様性を確保するためではないでしょうか。営々と積み上げた生存戦略が遺伝子の情報に組み込まれて、それがタイムスイッチの働きでテストステロンのような攻撃性や敵対感情をもたらすホルモンが分泌されるのかもしれません。
幸せホルモンとして知られるオキシトシンの副作用とする立場もあります。「オキシトシンは愛情を強めるホルモンといわれてきたが、愛情を邪魔する相手には攻撃性を強めるはたらきもある。たとえ夫でも」と唱えるのは、ジェニファー・A・ハンホルブルック氏(チャップンマン大学心理学部 准教授)。

 その生存戦略とイヤイヤ期に何の関係があるのかというと、それは親子の関係を解消しやすいための工夫ではないでしょうか。

 写真をご覧ください。ライオンの親子です。

  
(C) アフロ

母親が子どもを咥えています。子どもを危険な場所から安全な場所へと移しているのでしょう。ネコ科の動物によくみられるシーンです。
この時、子どもはどうしていますか。なされるままにしています。たとえ直前まで暴れまわっていたとしても。見方を変えると、体を丸めた姿勢を保つことで、母親による救命行動に「協力」していると見ることもできます。ここにも生存戦略があります。危険を回避、そして生き残るために双方が協力する例です。

 子どもが「イヤーッ!!」とだだをこねるのは、「こんな子、もう知らない!!」と思わせて、離別の際に罪悪感を残さないような工夫かもしれません。



7:33 2019/11/12


参考:
「『イヤイヤ期』再考」坂上裕子『教育と医学』2018年 12月号
『ねこの秘密』山根明弘〔文春新書〕
NHK『ダーウィンが来た「北の森のオキテ 母グマ愛情物語」』2010年7月4日放送
NHK 日曜カルチャー「人間を考える~人間へのメッセージ」山極壽一 2014年12月7日放送
NHK『あさイチ』「夫婦を壊す?!“産後クライシス”」2012年9月5日放送
攻撃性と不安が増強される! 幸せホルモン「オキシトシンの副作用」とは?
https://re-curious.com/oxytocin-side-effect/

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