即席の足跡《CURIO DAYS》

毎日の不思議に思ったことを感じるままに。キーワードは、知的?好奇心、生活者発想。観る将棋ファン。線路内人立ち入り研究。

先ちゃんワールド

2008年01月27日 16時20分07秒 | 将棋
山手線内回りのゲリラ―先崎学の浮いたり沈んだり
先崎 学
日本将棋連盟

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週刊文春のコラム「先崎学の浮いたり沈んだり」の中からの60編。(2003.11~2007.5)

なんと、これ、日本将棋連盟の発行なんですね。
将棋連盟発行のものはほとんど技術書、解説書で、こんな感じの軽い読み物はほとんど史上初と言ってもいいのでは、と思ってしまいました。

ほんと、先ちゃんワールド炸裂ですね。
1話1600字と、さくっと読める軽いエッセーなわけだけど、
軽妙洒脱というのか、独特のユーモアに満ち満ちている。

そして、普段あまり表には出ていない棋士たちの日常、一面、人間関係などもいろいろ窺い知れて楽しいです。

彼の文章の素晴らしいところはいろいろありますが、
まず、つかみ、がうまいですね。

こういう短いエッセーは、タイトルと出だしの部分で、ほとんど決まりです。
これが面白ければ、最後まで読むし、これがいまいちだと、飛ばされちゃうし・・・。

「世界は謎に満ちている」
将棋指しにとって世の中は謎だらけである。
とくに経済というものが、決定的にわからない。

「スランプ百景」
当たり前のことだが、勝負の世界、勝ち星の数だけ負け星がある。

「計算ずくで席を立つ」
将棋の対局室というのは、おそろしいまでに浮世離れしたところである。

などなど、どれもこれも秀逸で、ひきこまれちゃいます。
こういのが、将棋ファン以外orほんと多少の将棋ファンという人たちと、将棋(界)の魅力というものをブリッジさせているんじゃないかと思いますし、そういう意味でも、今回(最近とみに普及に力を入れている)日本将棋連盟が発行している意図があるのではないかと思います。

渡辺竜王新刊という記事で『帰りの電車の中で読んだのですが34ページからの記述には思わず笑ってしまいました』と書いてます。

このエッセー(前からですが)、佐藤棋聖、いや通称「康光君」についての記述が実に多い。何かと登場します。
先ちゃんにとっては、弄りやすい、弄りたい対象NO.1なんだと思います。

以前は「モテ光君」、今回は「デレ光君」、というように、いいように遊んでますね。
ほんとこの部分、吹き出したり、ニタっとしたりのところずいぶんあります。


それから下の欄外に小さな字でちょこっと入っている注釈が、なんとも面白い。

「先ちゃんと康光君との会話・・・・・」(※)
※どんな文章にも多少の誇張はつきものだが、以下の会話はすべて事実である。

「怒られたことがあった。」(※)
※ホントに怒って、ふざけんなと詰め寄られた。

「あるサイコロ」(※)
※島八段が買ったそうである。ヘンなヒト。

「痛飲した。」(※)
※飲むのはいいが、加減がわかっていないのである。

「悪夢のような事実」(※)
※とはいえ、たいしたことがあったわけではない。
ただ馬鹿にされながら飲んだだけである。

「なんでもすぐに勝負だと考え、ムキになる性分なのだ。」(※)
※そばをゆでていて、お湯が吹きこぼれるとそばに負けたような気になる。

もともとこの注釈は、将棋を知らない人のための説明を入れるはずのものだったと思う。
それが、もちろんそういう注釈もあるけど、ほとんどは先ちゃんのやりたい放題になっていて、この部分のさりげないトボケタ表現が最高に面白いです。

栄枯盛衰・前途洋洋先崎学八段の『山手線内回りのゲリラ』を読むという記事でも詳しく感想が書かれてます。

一部引用します。
「昨年11月になくなった真部一男九段邸で師匠である米長永世棋聖と真部九段の囲碁の話も「真部邸の惨劇」という物々しい題で語られている。(この話題は『将棋世界』2008年2月号の真部九段追悼記事の中で、米長永世棋聖自身も書いており、両方読み比べるのもおもしろい)」

はい、両方読みましたが、面白いです。
そして突然夜中に酔っ払いたちに押しかけられたものの、いやな顔ひとつせず歓待する真部九段の人柄も偲ばれ、感慨深いものがありました。
(先日の真部九段のお別れ会、行くつもりでいましたが、行けませんでした。あらためてご冥福をお祈りします。)

家庭を持ち、パパにもなり、以前よりも温厚に丸くなったというのはあるのでしょうけど、今も文章の中にどこか、破滅型、自己崩壊型、と言える様なニュアンス、感じます。
まあ、古くから知ってると、そこが先ちゃんぽくていいわけですけど。

すぐ酒を飲んでしまう、ポカをしてしまう、恥をかく、
そして、
自分を冷笑する、嘲笑する。

そんな風に、クールで客観的な目で自分を見ている。
棋士や棋界を見ている。

もちろんその底にあるのは、将棋や仲間の棋士に対する深くて大きな愛情。

当然、将棋界全体のことも考える年頃なわけだし、
もとより世間のこと、裏のこと、人生の機微のことなど、
先ちゃんしかわからないこと、できないこともたくさんあるはず。

昨日の記事フェアルックトのこと書いたけど、エッセー界のフェアルックトとして、今後ともますます僕らを楽しませてほしいと思っています。

そして、書き手としてだけでなく、順位戦をはじめとした各棋戦でも「先ちゃんらしさ」を縦横無尽に発揮してがんばってほしいと心から思っています。
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4 コメント

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記事を引用いただきありがとうございました (拓庵)
2008-01-28 00:49:34
私のブログの記事を引用いただき、ありがとうございました。

「真部邸の惨劇」については、同じことを書いても、師匠と弟子でこうも違うものかと思ってしまいます。

引用していただいた記事とその後に書いた真部九段についての記事をトラックバックさせていただきました。

今後も、たまにお立ち寄りいただければと思います。
読んでませんが・・・ (ssay)
2008-01-29 21:04:18
先崎八段は、誰をライバルと思っているのかを聞かれて、佐藤康光の名を挙げています。
羽生善治と言うと、なんか嘘っぽくなってしまうのかもしれませんが、それ以上に、佐藤二冠との対局に、何か通じるものがあるのかも知れません。

nanaponさんならご存知かと思いますが、その先ちゃん、これまで確か2回タイトル戦の挑戦者決定戦に出場していて(もっと多かったらゴメンナサイ)、10年以上前の竜王戦と数年前の王位戦ですが、いずれも佐藤さんに挑戦への道を阻まれています。
しかし、挑戦者となった佐藤さんは番勝負でいずれも羽生さんに負けてしまっているのを見ていて、どうせ負けるのなら先ちゃんに挑戦させてあげたっていいじゃないかと思っていました。
生涯にタイトルに挑戦することができる棋士もほんの一握りである。
厳しい!プロの将棋界とは、かくも厳しいものか!
しかし、だからこそ、私たちファンが魅かれていくのかもしれません。

一流棋士も、そうでない棋士も、みんな頑張れ!!
(応援團?)
先ちゃんの今後 (nanapon)
2008-01-31 21:35:34
☆拓庵さん、こんばんは。

>「真部邸の惨劇」については、同じことを書いても、師匠と弟子でこうも違うものかと思ってしまいます。

そうですね。ほんと、面白かったです。

>今後も、たまにお立ち寄りいただければと思います。

ありがとうございます。また寄らせていただきますね。

☆ssayさん、こんばんは。

>先崎八段は、誰をライバルと思っているのかを聞かれて、佐藤康光の名を挙げています。羽生善治と言うと、なんか嘘っぽくなってしまうのかもしれませんが、それ以上に、佐藤二冠との対局に、何か通じるものがあるのかも知れません。

基本的に全く違う性格だけど、なんか通じ合うものがあるのだと思います。

>nanaponさんならご存知かと思いますが、その先ちゃん、これまで確か2回タイトル戦の挑戦者決定戦に出場していて(もっと多かったらゴメンナサイ)、10年以上前の竜王戦と数年前の王位戦ですが、いずれも佐藤さんに挑戦への道を阻まれています。

忘れていましたが、そうですよね。
挑戦者になることだけでも、普通の棋士にとっては、大変なことです。
数々の歴史的な超一流棋士が戦った全国の一流旅館・ホテルを転戦し、和服で番勝負を戦えることって、タイトルを取るにも等しい称号ですものね。

先ちゃんに挑戦させてあげたかったですよ、本当に。

ってまだあきらめたわけじゃないですよね。

これから、40代、50代になった時の先ちゃん、どんな棋士になり、どんなものを書き、どんな話題を提供してくれるのか、想像するだけで楽しみですし、そういう意味でも末永く応援したい棋士の一人です。
いい本ですよね♪ (多良 剛)
2008-02-02 07:43:02
先日トーク&サイン会が東京のジュンク堂でしたので福岡からおのぼりしました。先崎プロのみならずバンカナちゃんまでもが♪すごくおとくなイベントだったです。
今将棋でアマA級福岡で県代表を夢見ていますが、私の将棋のライバルは将棋の有名人でもまったくなく数年前から「将棋を完全に極める存在」。今はその1人だけです。
2008年彼の分身がこの世に姿を現すかも。
将棋っておもしろいGAMEですよね♪

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