波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

「とこしえのお嬢さん」(野見山暁治著)を読む

2015年03月19日 | 読書

 「とこしえのお嬢さん 記憶の中の人」(野見山暁治著:平凡社)の帯のキャッチフレーズ「長く生きるというのは悪くない」、94歳の著者が関わった21人を綴る宝石のような記憶の物語。これ編集者の上手な売り言葉だが、読後感は少し違う。今までも好んで何冊か読んできたかが、惹かれるのは、言葉にできないものを絵にする人が、言葉を使って人間をズバリと表現していること。
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 著者の意味不明な絵に対し、人間世界への「底知れぬ」眼力と描写力に圧倒される。言葉はこう使うんだ。自分の弱さにも躊躇せず踏み込み当方がたじろぐ。人間の儚さ愛しさ悲しさをこんなふうに言葉で表現できるんだ。
    長く生きたから書けるというものじゃない。世間的に功成り遂げた方は、いつしか自分の弱さを忘れ(忘れたふりだったり、実際に忘れたり)、祭り上げられているうちに「役職病」に罹患し、「我こそは」を並べたがるもの。そのことを著者がどう考えているのかもそ想像できる。著者、今年度文化勲章受章。「ただそれだけの夜」(三岸節子)、「ある弔文」(竹富京子)、そして題名が心に沁みる。


 筆入れ見当たらず家中探し回り鬱々とした1週間。再訪した家で見つけたが「波風さんのだったのかい」なんて惚けたことを言う。側にもう一つ筆入れの忘れ物。これは70歳のあの方のだな  誕生日占いで「失せ物」発見の糸口さぐる。性格と金運と恋愛運が面白い。「俺って、そうかもな…」、単純なのである。そして「なんでこんなの見てるんだったかな?」なんて反省する。

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