YOSHIの果てしない旅(人々との出会い、そして別れ)

ソ連、西欧列車の旅、英国滞在、欧州横断ヒッチ、イスラエルのキブツ生活、シルクロード、インド、豪州大陸横断ヒッチの旅の話。

仕事と部屋探し~ミルスおじさんのお陰で部屋が見付かる

2021-09-22 08:28:32 |  「YOSHIの果てしない旅」 第6章 ロンドン滞在
・昭和43年9月22日(日)曇り(ミルスおじさんのお陰で部屋が見付かる)
 恐怖の一夜が明けたが、何も起こらなかった。2人とも同時に起きた。彼は尿瓶を持ってトイレへ行き、その排尿を流した。昨夜の『チュル、チュル』と言う異様な音は、トイレが家の中にあるにも拘らず、彼はそこまで行かないで、私の頭の上で尿瓶の中に大きな音がしないよう、少しずつ『チュル、チュル』と用を足していた。その音が恐怖心を抱いていたとは、まったく滑稽であり、親切にしてくれた彼に疑いを抱いたとは、恥ずかしい限りであった。
 彼の話しによると、「夜中にトイレで用を足すと、排水音で隣人に迷惑を掛けるから、いつも枕元に尿瓶を置いて、用を足したくなったらそれを使っている」との事であった。イギリス人は隣近所に迷惑を掛けないよう、生活音には常に注意しているのであった。私は彼等の心遣いに感心したのでした。 
 彼はベーコン エッグの美味しい朝食をご馳走してくれた。彼の名前は、Mr. Albert Mills(アルベート ミルスさん)、奥さんはおらず(未婚で独身)1人で年金生活をしているとの事でした。如何して結婚をしなかったのか、尋ねようと思ったが、しなかった。それは大きなお世話であり、昨夜遅く出逢った私が、聞くべき事柄ではなかった。
 彼の部屋は12畳程の部屋に台所、トイレ兼浴室の間取りであった。朝食後、ティーを飲みながら「私は貸し部屋を捜しているのです。この附近で安い部屋を借りたいのですが、どうしたら良いのですか」と彼に聞いた。
「そうですか、分りました。それでは私が部屋を探して上げよう」と言ってくれた。本当に嬉しく、有難かった。昨夜、私は彼を枕探しの類と疑ったりして、本当に申し訳なく、心の中で謝った。
 ゆっくりティーを飲んだ後、彼はここからそんなに遠くない住宅街の中にあるレント ルーム一覧表掲示板に私を案内してくれた。彼は安そうな部屋を2・3ピック アップし、公衆電話ボックスから家主さんへ電話して、週3ポンドの貸し部屋を探してくれたのでした。 
「それではYoshi、これが週3ポンドの部屋の住所だ。詳しくは家主さんと話し合うように」と言ってミルスさんは、メモ書きした物を手渡してくれた。
「泊めて下さったり、食事を頂いたり、そして部屋を探して下さったり、本当に有り難う御座いました。御恩は生涯忘れません。落ち着いたら又、寄らせて頂きます。本当に有り難う御座いました」と何遍もお礼を言って別れた。
 ミルスおじさんがメモ書きした住所を頼りにその場所へ早速、契約しに行った。イタリア系の家主のおばさんが出て来て、部屋へ案内をしてくれた。その部屋は3階で、広さ12畳程であった。部屋に備えられている物は、バス、シングル ベッド、タンス、テーブル、椅子、小物入れ引き出し、暖炉(暖炉にはガスストーブが設置されていた)、ガスコンロ、鍋類、ナイフ、フォークまで揃っていた。因みにおばさんは背の高さは普通、太り気味タイプ、イタリア人丸出しで早口で話す人であった。
 日本では部屋を借りる時、生活するのに色々な所帯道具を揃えなければならないが、イギリスでは話をよく聞けば、部屋と共にそれらが付いてワンセットになっている、との事であった。テーブル、椅子やタンスは、貧弱な物ではなかった。寧ろ、しっかりした物であった。部屋に対する概念が日本と違うので、驚いたり感心したりした。                                            トイレは2階と3階の中間、そして、バスは別部屋にあるが、これを使用する場合、別途料金が掛かった。                                       
裸一貫で来たのであるが、その日から何も用意せずに生活が出来たので、本当に有り難かった。それに昨日尋ねて行ったアルチュウェイの貸し部屋の半分以下、ここの週3ポンドの部屋は、最高に有り難かった。それと、おばさんが週2回、掃除をしてくれるとの事であった。
 私がここを借りる事に決めたら、「部屋代は、前払いです」と言うので即払った。おばさんは、私の個人的な事(国籍、名前等)を何にも聞かないし、日本の様に『敷金だ、権利金だ』と言う事もなかった。前払いをしたので契約は、成立したのだ。次の週も部屋を借りたいなら、その前に払えば良いのであった。
 契約成立後、昨日部屋を借りる事に迷っていたアルチュウェイの家主さんの所へ行って、預かって貰ったトランクを取りに行った。それにしても昨日、直ぐに契約しなくて夜、向こうから契約を断り、そして真夜中の街でミルスさんに出逢った事が反って幸いした。
 アルチュウェイから戻り、私は疲れていたのでベッドで少し寝た。その後、軽い食事をしてからウィンピー ハウス レストランへ仕事に出掛けた。それにしても本当に、ミルスおじさんに出逢えて良かった。仕事も見付かったし、これで何とかロンドンでやって行ける目途が付いた。『良かった。本当に良かった』とつくづくそう思った。


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