ソプラノ歌手 中川美和のブログ

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これで最後。

2011-03-22 23:44:17 | ドイツのこと
長くなりましたが、最後に。今回の日記で、これ以降は、もうあまり震災の話には触れないと思います。もちろん、必要を感じたら触れる事もあると思いますが。
でも忘れていません。忘れられるわけがありません。
敢えて、今までのようなブログに戻ると思います。不謹慎と思われる方もいらっしゃるかも知れません。

しばらくはそういった、オペラを観たり、などといった普通の日記を書いたりする事を自粛した方が良いのかとも思いました。でも、書くのを自粛しても、自分がドイツで遊んだり、オペラを観に行ってるんだったら、それは何の意味がないと思ったんです。
これはあくまで、私自身の行動の意見です。

でも自粛と言っても、いつまで自粛すればいいのか私にはわかりません。
自粛するなら、おそらく復興が完全にできるまで。

でも復興と言っても、ひとくくりにはできない。被災地に暮らす人が親戚にいる友人から話を聞きました。親戚たちは、
「ここを捨てるしかない」
と言ってるそうです。
私は又聞きなので、くわしくは延べませんが。その位の惨状だと。そして報道されない部分に、いろんな事情があるという事もくわしく聞きました。だからこそ復興はそう容易ではないという事も。

そこをまた取り戻すために復興だ、頑張れ、と言い続けるのも酷な事なのかという事に気づかせてもらいました。
その人たちの人生をただ、復興のみに使えというのかと。

でも、それでも、やはりそこに住みたいと思う人もいるでしょう。一生かけても、それでもそこで生きたいと思う人も。

正解なんてないと思いました。
復興するまで自粛、なんて言えませんでした。(あくまで、私自身の意見です。)
ですから自粛するなら、そんな彼らの気持ちが全部癒えるまで、ではないのかと思ったんです。

そして、被災された方はもちろん、おびえている東京の家族や友人知人が地震の事をすっかり忘れ去る事が出来るまで。自粛するなら、私はその時期まで自粛すべきだと思いました。(しつこいですが、あくまで私自身の意見です。)
でもそれは、無理です。一生自粛し続ける…無理です。

じゃあせめて、買うつもりだったオペラのチケットや、旅行のお金も寄付しようかと思いましたが、じゃあどれを寄付すればいいのか、となった時、線引きができなかった。
この公演のチケット代は寄付して、この公演は観るの?
それだったらそもそもこの、海外暮らしの費用だって寄付すべきじゃない?
でも、どうやって、寄付すべきお金の線引きをするの?そんなの、どうやって決めていいのか分かりませんでした。

まだまだ迷いはあります。

スーパーに行ったら食べ物がいっぱいに並んでいます。でもじゃあ、私たちがスーパーのその食べ物を食べなければ、正しいのか。輸送もできないのに。
夕方、電気を消してみて過ごしてみた事もありました。節電したらどうなるんだろうと思って…
でも元々炊飯器は使わないし、冷凍庫は元々大して機能してなかったので、あんまり普段と変わらなかったです(苦笑)
でもそうやって節電し続けても、ドイツの電力が送れるわけではない。

ドイツの過熱していく原発報道。他にも問題は山積みなのに。それなら、今回の問題は、原発が片付いたら終わりじゃない。
でもどうしてもテレビをつけてしまって、ニュースを見てしまう。
救助隊もすぐに帰ってしまった。

優しいドイツの人たちも知っているのに、こんな一面にも気づいてしまうのも辛い。


そんな事をしているうち、無意味な事はやめようと思いました。
もちろん、自粛すべき選択を取った方はそれで構わないと思います。それがその人の選択なのですから。
でも私は自粛という選択を取りたくありません。何故ならそれは、一生自粛し続ける事なんです。私の中のラインでは。

それが無理なら、もう、自粛をしないで動くという選択肢だけです。動くと言っても、大した事は何もできません。
私の役目はいつも通りに過ごす事。今までと変わらず、ご飯を食べ、寝て、オペラを見て、歌います。

明日から、友人と旅行の予定があります。

もう友人に会いたくてたまりません。
今まで当たり前のように会えていた人たちと会えるという事が、どれだけ幸せな事だったか。
友人の笑顔が見たい。それが私の喜びです。彼女が生きていてくれてよかった。生きていてくれて、楽しそうに笑って、おしゃべりして、ご飯を食べてほしい。
それ以上に望むことなんてありません。

大事な人にいつでも会える。
普通の昨日の次に、普通の今日がある。
今回の震災で、そんな事が当たり前じゃなくなった時。今までの生活がいかに恵まれていたか、気付きましたが。
でもやっぱり、それでも、その事が「当たり前」であってほしいんですよ。
だから当たり前の事として、普通に友達とも遊び、買い物し、ご飯を食べ、寝て、オペラを見ます。

次からは、そういう日記を書こうと思います。 ごく普通の日記です。

それは「当り前」でなくてはいけない事だと思うので。 そういう生活に戻すんだ、という気持ちもこめて。

本当を言うと、歌はまだ歌えません。 歌うと必ず泣いちゃってね。 宗教曲なんて絶対無理です。

でも、戻さなくてはいけない。当たり前にしなくてはいけない。地震が奪った当たり前の幸せを、返してほしい。
被害から一番遠いところにいるであろう私がそう思ってしまうのです。日本に、増して被災地にいた方たちはどんな思いなのか。想像する事すら出来ません。
日本という国を、元通りにしたい。それには、本当に小さくても、でも、やれる事からやらなくてはいけないと思いました。

本当は家族親戚、他の友達にだって会いたい。許されるなら飛んで帰りたい。
でも、それは自分が愛する人たちの顔を見て、そして故国に帰って安心したいだけ、という気がするのです。今私がするべき事は、そうじゃないと思うのです。
しっかり発言する事、前を向いて進む事。相手の目を見る事。

地震におびえたくない。負けたくない。

甘い事を言うな、そんな生易しい状況じゃない、という声が聞こえてくるようです。
確かにその通りだと思います。
でも地震の恐ろしさはドイツからではわかりません。だからこそ、その恐怖を味わう事がなかった人間が、今、とても立てない状況の人の代わりに、しっかりと自分の足で立たなくてはいけないんだ、と、私はそう思います。
怖くなかった分、恐怖や辛さで足が震える事はないんです。
立って、歩き出すべきは、被害を受けていない自分だと思いました。

オペラも見ます。お茶も飲みます。ご飯も食べます。
私は普通に暮らします。
当たり前の生活をするんです!普通に生きるんです!
これが当たり前の生活だと胸を張って言うんです!!

だからこそ、当たり前じゃない避難所の生活、避難できても寒くて亡くなってしまう方、他にも家に居ても辛い環境の方…

私には到底分らない、考えられないようなという生活。それを、当たり前の生活に一刻も早く改善すべきだ、と、私のように普通の生活をしている人間が、誰よりも声高に叫ばなければいけない気がするんです。

普通の生活をしていることに、罪悪感を感じる方がたくさんいらっしゃると思います。でも、それがおかしいんです。
あの日までは、誰しも普通の事だったのに。

私も、食事するたび、布団に入るたび、罪悪感は変わらずですが。罪悪感を生み出したのは何?いま、苦しんでいる人たちを生み出したのは何?
悲しさと怒りと、責める矛先を間違えてはいけない。
そして、責めても何も生まれない。
なら、動くべきだと思いました。

気分を害された方は申し訳ありません。

けれど、私なりに悩んで考えた結論です。言わずに、こちらでの生活を曖昧模糊とした日記でごまかして、旅行した事、自分がオペラを見ていること、それを悪い事のように隠し続けて、うやむやにしたくない。

それで私のブログを見るのに不快感を覚えて、私自身と疎遠になる方もいるかもしれません。でも、それが私という人間です。私は自粛しません。生活をして、歌の勉強をし、そして遊びます。
これが人間の生活のはずです。後ろめたい事ではありません。だって、地震がなければ別に後ろめたい事ではなかったのですから。
当たり前の日本を取り戻しましょう。

ご飯を食べて、寝て、オペラを見れて。遊べる事が普通の世の中にするべきなんです。後ろめたく思うような事ではないはずなんです。十日前まではそうだったのに。

だから私は、ご飯食べて、寝て、オペラを見て、旅行もします。

そんな当たり前の日が、後ろめたくない日が少しでも早く来る事を祈って。

私信になりますが。
両親へ。ドイツで勉強させてくれてありがとう。今はこうしてただ練習するしかできないけど、それでも応援してくれてありがとう。
この国で音楽家としてできる事は全然ないけれど、いつかどんな形でも必ず人の心に残るような歌い手になれるように努力します。

そんな当たり前に努力できる事が、どれだけ幸せな事なのか、やっと気付きました。本当にありがとう。
そして、おばあちゃん、お兄ちゃん、ジニちゃん…親戚や友達の皆。
私の歌を聴いて下さった方。このブログを見て下さっている方にも。

生きていてくれてありがとう。
本当に心から思います。
こんな当たり前の事がこれほどまでに幸せだなんて。こんな事が起きるまで気付かないなんて。

本当は、すごく日本に帰りたいです、たまらなく帰りたいです。
でも、今はドイツにて、普通に暮らします。それが私の役目です。

そして、ドイツのこんな記事も見つけました。個人の方がブログでドイツの週刊誌の記事を翻訳して下さったものです。

ドイツ『週刊経済』誌 編集長 Roland Tichy氏のメッセージ
(ブログ内の、最初のドイツ語見出しをクリックすると、元のドイツの記事に飛びます。)

ドイツの中には、ちゃんと報道してくれている人もいる。という事は、きっと情報の取捨選択している人もいるに違いないのです。
落ち着いたら、やっとそういう事にも気づけるようになりました。

三回続けて、重いブログになってしまってすみません。


次の日記からは、通常仕様に戻ります。能天気だと思う位ね。

明日から友達とドイツ国内旅行です!そんなわけで一週間ほど更新あきますよ~。




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