こんにちは「中川ひろじ」です。

みんなのお困りごとが私のしごと

第4回信大シンポジウム

2015-10-14 20:34:01 | 新安保撤回を求める信州大学シンポジウム

成沢孝人先生のパワーポイントの文字おこしです。赤色部分は中川のメモです。(動画あります)

時計の針をどうやって戻すか

1、憲法とは何か
・憲法(constitution)とは国家のあり方の土台・骨組みを作っているしくみ、最近の言葉でいえば「国のかたち」を示すもの

問題~どんな国でもよいのか
・フランス人権宣言16条(1789)「権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていない社会は、すべて憲法をもつものではない」=権力分立と人権保障をする国家の基本的仕組みのみを「憲法」という。
・J・ロールズ 公正としての正義~構成員の全員の自由が最大限平等に保障されるような国家の枠組み⇒構成員全員にとって利益となるもの。
・このような自由民主主義の国家を作り、維持するのは、本当に難しい。日本は、非西欧社会における数少ない成功例だったが、今後もそういえるかどうかが問われている。
・戦後、西欧以外の国々は軍事独裁国家へ。日本だけが、そうならなかったのは、9条のおかげ=自由の下支えとしての9条(樋口陽一)

2、憲法の仕組み
                  立法権 国会  法律をつくる
         統合機構     行政権 内閣  法律を運用
                  司法権 裁判所 法律を解釈
国民→憲法
         基本的人権


・憲法と法律の二重構造
・主権者=憲法制定権力(芦部信喜)
・国民~法律を順守 国家権力担当者~憲法を順守→さらに、国家権力担当者には、民主的な正当性⇒これで秩序ある自由という均衡がとれるはず。「秩序」だけが強調されれば息苦しい、「自由だけが強調されれば収まりがつかなくなる。「秩序ある自由」
*「秩序ある自由」・・自分の持っている自由は、他人も持っているという認識かな。

・この仕組みを「法」にしたことの意味→法は、それが適正な手続きで変更されるまで、全員が拘束される。善き国家の仕組みを「憲法」という形で国家の基本法に埋め込むことで、この仕組みを維持しようという企て~この約束事が破られるならば無法=裸の暴力
*「善き国家の仕組み」?

3、憲法はどうやって維持されるか
(横軸)
・主権者国民によるコミットメント=大前提
・権力者による応答
※国民が憲法を支持しなくなったとき⇒ファシズム
第二回シンポ 青木報告
第三回シンポ 渡辺報告
・さまざまなアクター
憲法を支持する積極的市民
憲法体制によって利益をえているプロフェッショナルの活動~研究者、教育者、公務員etc

(縦軸)
・国民とは?
抽象レベル 国籍保持者に限らない
      今生きている人に限定されない
      ただしコスモポリタンではなく、日本国というナショナルなものを中核に想定される
具体的レベル 有権者(15条①、③項、96条①項)
96条の「国民」~国のあり方を最終的に決定する権力者 自己の世代のみの利益を考えて投票してよいか?

・憲法のプロジェクトが、国民に利益をもたらすのであれば、96条の国民は本来登場すべきではない。・・・ただし、現在は、96条の国民の権限が簒奪されてしまったという状況⇒まずは、国民に返せと主張するのは筋が通っている。
・憲法のプロジェクトの本来の意義
「世代を超えた共同作業」(奥平康弘)
憲法によって保障されている人権という価値を国民にとってさらに善いものに解釈によって発展させていく。*「さらに善いものに、解釈によって発展させていく」=「善き国家の仕組み」?
~権力者が解釈によって国民の権利を制約することは許されない。

国民の権利を縮減する正式な改正は国民の権限ということは最低限確認する必要がある。
*安保法制が国民の権利を縮減したという実感がない。今日までは理屈の話。

憲法改正国民投票に登場する国民→具体的な有権者であるが、抽象的な国民を代表し、投票結果はすべての国民が受け容れなければならない。⇒のちの国民の生にかかわることであるから、慎重な上にも慎重な手続きがとられなければならない。

新安保法制の制定は、この手続きが簒奪されたということを認識する必要がある。=法的にはクーデター(石川健二)
*ポイント(運動の結集軸、スローガン)は「立憲主義」かな。


4、新安保法制は憲法違反
・政府→従来の解釈を踏襲していると強弁
しかし、安保法制制定前と制定後を比較すれば、変更されていることは明らか。
制定前・・・一切の「戦争」はできない。
制定後・・・自衛隊がアメリカの戦争に参加できる。
国家の基本的性格が変容していることは明らかであり、そうである以上、9条の改正なしに安保法制を制定することはできないはず。
・形式的には、従来の解釈を踏襲しているような体裁を繕っているが、実質的には変更になっていることは誰から見ても明らか。
・従来の解釈 本来0(ゼロ)であるはずの武力を、国家が攻撃されるという究極事例において例外的に使用する。法律的な建前としては、戦力は0であるという規範が維持されていた。
・新解釈「自衛のための必要最低限」を集団的自衛権にまで広げたうえで、「限定」がついているから今までと変わっていないという印象を与えた。

・限定部分=これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合
・しかし、その判断は政府が行うのであり、恣意的な決定になる危険性が高い。また、国会審議では、現政権は、全く限定するつもりがないことを明らかにした。~ホルムズ海峡での機雷除去

・しかし、何もないところから、何かを引き出すことはできない。

徴兵制について
・憲法18条で禁止されているという解釈がすでに維持できないことは明らか。
・徴兵がなければ、よいのか?
→誰か他人が守ってくれるという甘い想定。しかし、そのようなことはありえない。
→日本がおかれている地勢的状況。朝鮮半島、台湾海峡。一旦戦争に巻き込まれてしまった時、自衛隊員が足りなければ、徴兵しかない。アメリカ軍が手伝ってくれるという見通しは甘い。

安全保障環境の変化について
・だからといって、正式な手続きによらず憲法を変えてよいということにはならない。
・憲法改正には時間がかかる→この理由は理由になるんですか?憲法改正の手続きをオミットしなければならないほど事態は切迫しているということを政府は示していない。
・安保法制によって世界中でアメリカ軍の支援をする方が。無用な紛争に首をつっこみ、国民の安全保障が害される危険性があるのではないか。
・次回シンポジウム→国際政治学者による解説

5、憲法違反の法律がなぜ制定されたのか
・国民の憲法へのコミットメント→ある(はず)
~改正派は、9条の明文改正を展望できていない。
・安保法制に反対する世論→過半数

疑問・・それなのに、なぜ、違憲の安保法制が制定されてしまったのか。
55年体制・・日本国憲法の承認をめぐる政治的攻防
1955年10月 左右社会党の合同
1955年11月 自由民主党結党
1956年7月  参議院通常選挙で、社会党が3分の1以上の議席を獲得⇒明文改正を不可能に

60年安保闘争~平和運動の国民的高揚⇒自民党は憲法を改正するとはいわなくなる。
80年代・・80%の国民が憲法9条を支持
・55年体制 憲法を盾に抵抗する日本社会党と憲法に嫌々従う自由民主党。自由民主党内部の派閥均衡政治→疑似政権交代(日本型立憲主義)
*中曽根康弘「行政改革でお座敷をきれいにして立派な憲法を安置する」・・抵抗勢力であった社会党をつぶすために支持母体である総評労働運動の機関車的役割を果たしてきた国労を潰す。資本の利益のおこぼれにあずかる労働運動への収斂、労働戦線の統一→連合結成へ。社会党へは「政権を担いうる国民政党への脱皮」を促され、支持母体が崩されていたにも関わらず(選挙で負けたにも関わらず)細川政権、自社さ政権に参画し社会党は解体、民主党主軸に移行。経済的には、1980年代から国際的な分業体制を確立し、資本の移動や活用をしやすくするために抵抗勢力を潰すと同時に、それに見合った政治体制=二大政党制が目指された。自民党の政策も民主党の政策も、優先順位の違いくらいしかなく、政権交代で根本的な国民の不満をそらすことができると考えられた。その意味で「小選挙区制導入」は決定的。

・1994年政治改革⇒小選挙区制の導入・・・55年体制の解体
政治改革の時に問われていたこと
①そもそも二大政党制が可能か、
②そのとき、憲法は維持されるか
悲観派→両方とも無理 楽観派→両方とも可能
 結果
・15年間政権交代は起きなかったが、憲法も変えられなかった。
・2009年 ようやく政権交代⇒しかし、大失敗に終わる。⇒2012年 消極的選択としての一強政治・・ここに安倍晋三がいた。

・イギリス型二大政党制・・与党の党首に絶大な権力を与える仕組み=選挙独裁~日本では、小泉政権がそれを実現。
・二大政党制+野党時代⇒主張の先鋭化

まとめ⇒二大政党制を消極的に選択した日本国民が、とりあえず民主党に政権を任せてみたところ大失敗したため、消極的に自民党を選択せざるを得なかったところ、その自民党は以前の自民党とは異なっていた。

6、どうやって時計の針を戻すか
・新安保法制による憲法の実質的改正⇒憲法政治と通常政治のずれ
・二大政党制の失敗の間隙をつくという手法で行われた法的なクーデター
・この矛盾はどちらかの方向で解決されるはず。
→法律が憲法に従うか、国民が憲法を失うか。

(1)安倍非立憲の手法
・2013年7月の参議院選挙までは、「安全運転」参議院選~アベノミクス、ねじれの解消 参議院選後、牙をむく
*第1次安倍政権の失敗・・小泉構造改革で格差が拡大し、国民の不満が高かったが数の力で「防衛庁の省格上げ」「教育基本法の改悪」「憲法改正のための国民投票帆の制定」「在日米軍再編」などが行われ、参議院選挙で大敗し退陣。したがって、先ずは経済・景気対策。アベノミクスは一部の大金持ちや輸出企業に利益をもたらしたが、国民にはおこぼれ(トリクルダウン)がない。しかし、野党にアベノミクスに変わる経済政策がないのでだめだとわかっていても期待するしかない。

・96条改正に失敗し、「解釈改憲」に舵を切る
・内閣法制局の人事に介入~「お友だち」の小松一郎(外務省)を内閣法制局長官に(2013年8月)⇒2014年3月には、これまでの見解を踏襲する形で解釈を変更することを決定。
・安保法制懇報告書(2014年5月)の「政治的利用」・・メンバーの中には、「まじめに」集団的自衛権の全面的行使を主張していた人もいたが、彼らの議論は取り上げられなかった。
・公明党を抱き込む形で、閣議決定(2014年7月1日)
・任期2年残しながら、衆議院解散(2014年12月)。総選挙の争点は、「アベノミクス解散」「消費税をあげない」解散
・安保国会~異例の90日間の延長~衆議院3分の2での再可決をちらつかせる。
・衆議院でも参議院でも、特別委員会での強行採決。

卑怯な手法による実質的な憲法改正~法的なクーデターにふさわしい。
形式的にしか法によらない統治→いつかは破たん。そのときには、憲法を実質的に失った国民の多くは害悪を受けていると思われる。

形式的には法によっている→共和主義による批判の視点が必要。

(2)共和主義憲法の可能性
・共和主義的憲法
自由主義→憲法を破壊する自由も可能性としては認める。

共和主義→憲法を維持することが、国民全体の利益であるということを前提に、憲法を破壊しないシステムを構築しようとする。

憲法を破壊するもの→専制

共和主義~立憲≒法の支配 正義、まじめ、正直、実直、勇気、公共
専制~非立憲≒人の支配 不正、ふまじめ、嘘、浪費、私的利益

憲法体制が維持されるためには、立憲にコミットするさまざまなアクターが必要。
・積極的市民~存在した 学生、主婦による反対運動、従来の市民運動の活性化
・プロフェッション~存在した 憲法学者、学者、元最高裁判所長官、元最高裁判所裁判官、メディア

⇒楽観すべきではないが、悲観すべきではない。

共和主義憲法~ボディ・ポリティクスの発想
・国家が病気←直さなければ死。構成員は不幸になる。
・憲法が破壊されるときは病気。病気を予防し、治癒させるシステムが憲法。共和主義的アクターは、病気を治すために、必要な存在。

今回の事例~行政権が法を逸脱するという典型的な病気
①共和主義的市民・・権力に法を守らせるために勇気をもって活動する責務
憲法というシステム~さまざまなアクターが、憲法を維持しやすくするための仕組み=基本的人権 表現の自由、学問の自由⇒本来の憲法保障の機能を働かせる。デモ、集会の必要性
②行政権の専制←立法府の強化=国会議員の行政権からの独立(43条)~現在の政党国家においては、なかなか難しい。選挙区からの圧力が必要・・落選運動は可能性がある。

政権交代~民主党のマニフェストに安保法制廃止を書かせる必要。
政権交代~立憲主義のメカニズムとして理解する必要

③違憲訴訟
・法の擁護者としてのプロフェッショナルとしての裁判官のプライドを引き出す努力が必要。裁判官の職業倫理に訴える。

①~③は別々ではなく、相互に関係している。
政治的空間において「憲法」を。
「違憲訴訟」も運動の広がりと市民の共感がなければ成功しない。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする