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「 I.D.」ワークショップ


「 I.D.」ワークショップ

ELECTRIC FOR ALL

2018 年 9 月、ドレスデン




概要
ELECTRIC FOR ALL:
フォルクスワーゲンは、e-モビリティの革新を加速

MEB と「I.D.」ファミリーに関する重要な事実

・フォルクスワーゲン(以下:VW)は、「ELECTRIC FOR ALL(すべての 人々のための電気自動車)」という PR キャンペーンを開始します。「I.D. (アイ.ディ.)」ファミリーの登場により、何百万人もの人々にとって、EV は 身近な存在になるでしょう。
・ 生産開始は、2020 年の予定。「I.D.」および「I.D.」の SUV モデルは、 新世代 EV の最初のモデルとなり、同じ年に発表される予定です。 
・e-モビリティのブレイクスルー:VW は、2020 年に15 万台の EV 販売を 計画しています。2025 年には、販売台数を100 万台以上に増やす 予定です。 
・100%電気:「I.D.」ファミリーは、電気自動車用に開発したモジュラー エレクトリック ドライブ マトリックス(MEB)をベースにしています。 
・妥協しないクルマ:「I.D.」ファミリーは、航続距離、室内空間、 ダイナミクスの面で、e-モビリティの境界を拡げます。 
・新基準:全ブランドによる最初の EV 攻勢では、MEB テクノロジーに 基づく約 1,000 万台の電気自動車の販売を目指しています。 
・ハードウェアとソフトウェアのアップデートに対応:「I.D.」ファミリーは、新しい E3エンドトゥー エンド エレクトロニクス アーキテクチャーと、vw.OS という 新しいオペレーティング システムを搭載します。 
・新開発のバッテリーシステム:「I.D.」ファミリーにはパワフルで拡張性のある バッテリーを搭載しています。 
・拡張性のあるバッテリー:MEB モデルは、最大 550km(WLTP)の 範囲で、さまざまなバッテリー容量を構成することが可能です。 
・大規模投資:VW は、e-モビリティに 60 億ユーロを投資しています。 そのうちの 13 億ユーロは、ブラウンシュヴァイク、ザルツギッター、カッセルの コンポーネント製造工場に割り当てています。 
・充電インフラ:VW は、欧州全体の高速道路で充電ステーションネット ワークを開発・拡張する合弁会社、IONITY のメンバー企業です。

ターニング ポイント
パーソナルモビリティは新時代に突入しています。電気駆動とデジタル化は、自動車 業界における 100 年以上の歴史の中で、もっとも大きな基本的変化をもたらして います。自動車技術とインフラは根本的な変化の対象となり、それに伴ってバリュー チェーンも移行しています。この勢いは、あらゆる所で見られます。電気自動車 (BEV:バッテリー式電気自動車)の販売台数は、過去 1 年間で 60%増加 しました。2018 年は、新規登録された電気自動車が 100 万台に達した最初の 年になるでしょう。この数字は、VW が新しい「I.D.」ファミリーの最初のモデルを発売 する 2020 年から再び急上昇するでしょう。今日のガソリンエンジン搭載車と同等の 航続距離を備えた「I.D.」ファミリーは、コンパクトな「I.D.」が最初に発売され、その後 すぐに「I.D.」の SUV モデルが導入される予定です。VW ブランドの e-モビリティ部門 担当取締役であるトーマス ウルブリッヒは、次のように述べています。「私たちは、 2020 年に 15 万台の EV を販売する予定で、そのうちの 10 万台が I.D.と I.D. SUV になるでしょう。e-モビリティへの移行をスピードアップすることは、欧州、中国、 米国で設定された、とても高い CO2 目標を達成するために重要な役割を果たし ます。」 VW は 2025 年までに「I.D.」ファミリーの販売台数が、年間百万台規模に 達すると予想しています。

手頃な e-モビリティ

世界的には、毎年 600 万台以上の新しい VW が、生産工場からお客様に納車 されています。VW ブランドは、数多くのドライバーに、技術革新を手頃な価格で 提供しています。そして、まったく同じ理論が、未来の電気自動車である新しい「I.D.」 ファミリーにも適用されます。VW の目標は、電気自動車を可能な限り多くの人に とって魅力的な存在にし、e-モビリティのブレイクスルーの道を切り拓くことです。 「I.D.は、技術開発の面でマイルストーンとなることが証明されるでしょう。このクルマは、 日常での使用に 100%適合し、完全なコネクテッド機能を備えた電気自動車で あり、何百万人もの人々が買うことができるクルマです」と、VW e-モビリティ製品群 開発責任者のクリスティアン ゼンガーは述べています。

成功要因としてのプラットフォーム戦略
「I.D.」ファミリーの技術的な基盤は、新開発の車両プラットフォームである、モジュラー エレクトリック ドライブ マトリックス(MEB)です。VW は、自動車業界でもっとも 成功したプラットフォーム開発企業の一つです。その一例は、おそらく現在使用して いる中で、もっとも成功した車両アーキテクチャーであるモジュラー トランスバース マトリックス(MQB)です。グループ全体で、第 1 世代の MQB ベースの車両が、 約 5,500 万台生産されています。今回、VW は、この同じプラットフォーム戦略を 電気自動車に適用します。MEB は、VW の「I.D.」ファミリー専用の技術基盤では なく、アウディ、セアト、シュコダ、VW 商用車など、他のグループ ブランドで生産する 数多くの電気自動車にも使用します。

妥協しない電気自動車
MEB は、2 つの大きな特徴を備えています。第一に、内燃エンジン車用のプラット フォームを改造したものではなない。ということです。純粋な電気自動車専用に設計 したモジュラーアセンブリーマトリックスを採用することで、VW は、このテクノロジーを 最大限に活用できます。クリスチャン ゼンガーは、次のようにコメントしています。 「MEB は、車両構造を再定義し、スペース効率の点で、大幅な改善を成し遂げて います。さらに、I.D.ファミリーのすべてのモデルは、急速充電に対応しています。」 第二に、車両コンセプトとデザインを、これまで以上に柔軟な方法で構成できること です。これは、コンパクトカーから SUV、MPV に至るまで、幅広い範囲に及びます。 MEB は、「生産することを念頭に置いた設計」により、迅速かつ効率的な生産にも 適しています。これにより VW グループは、スケールメリットを活かし、電気自動車を 多くの人々に、より手頃な価格で提供できるようになります。トーマス ウルブリッヒは、 次のように付け加えています。「MEB は、おそらく Beetle(ビートル)から Golf (ゴルフ)への移行にも似た、VW の歴史の中でもっとも重要なプロジェクトです。 これは、最初の電気自動車攻勢において、グループ全体で 1,000 万台以上を 販売するための基礎を構築し、e-モビリティへの道を切り拓きます。」

4 つの「I.D.」モデルは、すでにプロトタイプとして公開
VW は、すでに4 つの「I.D.」プロトタイプ、「I.D.」、「I.D. CROZZ(アイ.ディ.クロス)」、 「I.D. BUZZ(アイ.ディ.バズ)」、「I.D. VIZZION(アイ.ディ.ビジョン)」を発表して います。各モデルのデザイン同様、車両技術の開発は、ほぼ完了しています。 バッテリーサプライヤーとの契約も締結しました。さらに VW は、ツヴィッカウに工場で MEB 車を生産するための準備として、10 億ユーロ以上を投資しています。 VW は、包括的な充電インフラの開発にも取り組んでいます。つまり VW は、 e-モビリティ攻撃を多方面で実施しているのです。 VW のビジョン:ELECTRIC FOR ALL!







主な特徴
アーキテクチャー

「I.D.」へのカウントダウンが開始。

VW は、2020 年に、新たに開発した先進的でアバンギャルドな電気自動車、「I.D.」 ファミリーを市場投入します。このファミリーは、現在のガソリンモデルのラインナップに 似た多彩なクラスのゼロエミッション車で構成されます。手頃な価格、4 ドア、完全な コネクテッド機能を備えたコンパクトカーである「I.D.」は、2020 年に発売する「I.D.」 ファミリーの最初のモデルです。プロトタイプのデビューは、2016 年 9 月のパリモーター ショーでした。それから 24 ヶ月が経過した今、すばらしい最高速度を誇る VW の 電気自動車を生産する準備に取り掛かっています。

妥協しないクルマ
「I.D.」は、市場に初めて投入するモジュラーエレクトリックドライブマトリックス(MEB) をベースに構築した世界初のモデルです。MEB は、今後登場するすべての「I.D.」 ファミリーをつなぐ技術要素であり、電気自動車用に開発した専用プラットフォーム です。従って、電気駆動システムのコンポーネントとパッケージは、一貫性をもって 関連付けられています。現在のガソリンモデルと同等のラインナップを用意し、 ディーゼルモデルと同等の価格で販売する「I.D.」は、環境に優しい電気自動車の ブレイクスルーとなる可能性を秘めていると同時に、電気駆動システムの新時代を 告げる役割を果たします。

長いホイールベース、短いオーバーハング
VW は、MEB の設計上の特徴を活用することで、航続距離、スペース、使い勝手、 快適性、運動性能などを引き上げることを可能にしました。これらの利点は、 ドライバーと乗員にまったく新しい形のモビリティをもたらすことになるでしょう。 「I.D.」の室内寸法と使い勝手は、クラスの枠を超えています。同様に革命的なのは、 全長に対してきわめて長いホイールベースと短いオーバーハングです。それを可能に したのは、フロントに内燃エンジンを搭載する必要がなくなったためで、これにより、 アクスルをより前方に移動することができます。

MEB ドライブマトリックスの全貌
「I.D.」のゼロエミッションドライブの主な構成要素は、パワーエレクトロニクスやギヤ ボックスとともにリヤアクスルと一体化した電気モーターとスペース削減のため、フロアの 下部に設置したフラットで高電圧なバッテリー、車両前方の統合した補助パワー トレインなどです。パワーエレクトロニクスは、モーターとバッテリーの間に流れる高電圧 エネルギーの流れを制御するリンクとして機能します。このパワーエレクトロニクスは、 バッテリーに蓄えた直流電流(DC)を交流(AC)に変換します。さらに、DC/DC コンバーターが、車内の電装品に 12V の電力を供給します。1 速のギヤボックスは、 モーターのパワーをリヤアクスルへと伝達します。電気モーター、パワーエレクトロニクス、 ギヤボックスは、1 つのコンパクトなユニットを形成しています。2016 年のパリ モーター ショーで展示した「I.D.」コンセプトカーの電気モーターの出力は、125kW/170PS でした。このプロトタイプは、0~100km/h を 8 秒未満で加速し、最高速度は 160km/h でした。2020 年に発売する市販モデルでは、出力が増加あるいは減少 する可能性があります。これと平行して、異なるバッテリーサイズを用いた違う仕様の 「I.D.」を製作することも検討しています。これにより、ガソリンやディーゼル車とまったく 同じように、電気自動車の電気駆動システムも、特定の利用状況に正確に適応 させることができます。WLTP(乗用車等の国際調和排ガス・燃費試験法)基準 での「I.D.」の航続距離は 330~550km を達成しています。

理想的な重量配分
「I.D.」の航続距離は、バッテリーが決定的で重要な要素になります。バッテリーを 車両下部に搭載することでスペースを節約し、重心を大幅に下げることができました。 車両の中心部にバッテリーを搭載することで、50:50 に近い理想的な重量配分を 実現しています。低い重心と優れた重量配分により、ダイナミックでありながら、 バランスの取れた走行特性を生み出しています。

アップデートに対応するハードウェアとソフトウェア
MEB は、新しいアシスタンスシステム、快適機能、インフォテインメント、コントロール およびディスプレイ関連の多彩なシステムを搭載できます。パリモーターショーで展示 した「I.D.」プロトタイプは、ナビゲーションシステムのガイドといった視覚的情報を車両 前方の空間にバーチャルに投影する AR(オーグメンテッドリアリティ)ヘッドアップ ディスプレイを採用していました。この機能は、新しいプラットフォームなしでは、決して 実現できなかったテクノロジーです。「I.D.」モデルに搭載する膨大な機能を管理するために、VW は、完全に新しいエンド ツー エンドのエレクトロニクスアーキテクチャー である E3と、新しいオペレーティングシステム(OS)である vw.OS を設計しました。 「I.D.」は、E3と vw.OS をフルに活用する最初のクルマです。 この新しい E3 は、今日の自動車産業界で広く受け入れられているコントロール ユニットを統合し、よりパワフルで集中的なプロセッサーユニットを作り出します。 各モデルの性能及び優れた技術は、新車時だけのものではありません。クラウド 経由でシステム更新やアップグレードができることから、クルマのライフサイクルを通じて 魅力を保つことが可能になります。

常にオンラインに接続
「I.D.」ファミリーの各モデルは、オンラインに常時接続され、各種情報やサービスに アクセスできます。その一部は、まったく新しいものです。VW は、自動車メーカー という存在から、広範囲なデジタル化を特徴とする車両およびサービスを提供する モビリティプロバイダーへの変革を目指しています。その変革プロセスで焦点になる のは、e-モビリティとコネクティビティ(車両とユーザー/インターネットを接続)ですが、 2025 年以降は、自動運転も視野に入っています。

1 つのシャシー、多くのボディ バリエーション
MEB モデルラインナップは、現在の MQB 車両と同じ程度になる予定です。 MQB は現在、「Polo(ポロ)」や近日登場する「T-Cross(T クロス)」に始まり、 米国向けの SUV である 7 シーターの「Atlas(アトラス)」に至るまで採用されて います。それに対して「I.D.」の MEB プログラムは、1 つ上のクラスから始まります。 MEB を世界に展開する際には、MQB と同じく最大 7 座の大型モデルが牽引役に なるでしょう。ゼロエミッションの SUV コンセプトカーである「I.D. CROZZ」は、コンパクト カーの「I.D.」と同じ 2020 年に販売が始まる予定です。その一方でコンセプトカーの 「I.D. BUZZ」は、VW のゼロエミッション MPV の道を切り拓きます。そのデザインは、 伝説になっているブリー(米国の愛称はマイクロバス)の DNA を継承しており、 2022 年に市販車として登場する予定です。アバンギャルドな「I.D. VIZZION」は、 サルーンの未来の扉を開くモデルです。このサルーンの市販車も 2022 年に投入の 予定です。VW AG 傘下のその他のブランドも MEB を活用します。

2020 年から製品の方向性を 2 つに分岐
「I.D.」ファミリーは、VW のモデル方針のパラダイムシフトとなるクルマです。 電気自動車の先駆的なメーカーとして VW は、従来型のエンジンを搭載する「Polo (ポロ)」、「Golf(ゴルフ)」、「T-Roc(T ロック)」、「Passat(パサート)」、 「Tiguan(ティグアン)」、「Arteon(アルテオン)」などのモデルに、「I.D.」を始めと する電気自動車を、独立したモデルラインナップとして提供します。 マルチトラクションドライブキット(従来型エンジンと電気駆動システムの両方に適用 可能なプラットフォーム)をベースにした他の戦略とは対照的に、製品ラインナップを 2 つに分割することは、お客様に様々なメリットをもたらします。純粋な電気駆動 システムを念頭に設計した MEB は、ボディのオーバーハングを短く詰めて、ホイール ベースを拡大することが可能で、よりダイナミックなプロポーションが完成します。 デザイナーは、新しいゼロエミッション車の独立したデザイン DNA を生み出すための 基礎として、MEB を用いました。前述のとおり、ホイールベースを延長することで、 より広く、使い勝手のよいインテリアを創り出すことができます。

ELECTRIC FOR ALL
「I.D.」と「I.D.」の SUV モデルは、2020 年に約 10 万台の販売を目標としており、 e-モビリティの躍進にとって、とても重要な役割を担っています。VW はその後、ゼロ エミッション車を新たな市場にも導入し、この新しい駆動システムを大きく飛躍させる ことを目指しています。「I.D.」と「I.D.」SUV モデルの最終開発段階時期に並行して、 VW は 2018 年の秋に、「ELECTRIC FOR ALL(すべての人々のための電気 自動車)」という PR キャンペーンを始めます。このキャッチフレーズは、e-モビリティを すべての人々にとって身近なものにするという VW の決意を表しています。 「I.D.」モデルファミリーは、新しいマイルストーンを打ち立てることになるでしょう。それは、 1950 年代に伝説のビートルが、1970 年代にはゴルフが築き上げてきたモビリティの 歴史を、現代に再現するものです。

バッテリー テクノロジー





バッテリーは、決定的に重要な駆動コンポーネント

電気自動車のバッテリーシステムは、最高の要件を満たす必要があり、長期間に 亘り、可能な限り、最高のエネルギー容量を達成するだけでは十分ではありません。 ユーザーは、バッテリーの価格が低下し、寿命が延び、あらゆる使用条件と温度で 日常的な利用環境に適していることも期待しています。さらに、できるだけ短い充電 時間も望んでいます。「I.D.」ファミリーに採用するバッテリーは、このような要件を全て 満たします。

VW グループ コンポーネントが、バッテリーと駆動システムを供給
ドイツ最大の自動車メーカーである VW は、現在、数十年にもおよぶエンジンとギヤ ボックスの開発、生産、スケーリングから得られた豊富な経験を活用しています。 過去数年間、こうしたノウハウは、電気自動車(BEV/バッテリー式電気自動車) とプラグインハイブリッド車(PHEV)に活かされてきました。現行モデルラインナップ には、「e-up!(e アップ!)」、「e-Golf(e ゴルフ)」といったゼロエミッション車と、 「Golf GTE(ゴルフ GTE)」、「Passat GTE(パサート GTE)」、「Passat Variant GTE(パサート ヴァリアント GTE)」といったプラグインハイブリッド車が含まれます。 これら各モデルには信頼性が高く、極めて安全な高電圧バッテリーを搭載しています。 エネルギー容量は、8.7kWh(Golf GTE)から 35.8kWh(e-Golf)まで様々です。 これらのバッテリーは、主にブラウンシュヴァイクにある VW のコンポーネント工場で 製造しています。駆動システムを担当し、2019 年 1 月から独立した事業部門に なる予定の VW コンポーネントは、現在、将来的に、年間 50 万基のバッテリー システムを製造するために、工場の拡張工事を行っています。これにより VW は、 バッテリーの供給を安定的に確保できるようになります。さらに、ザルツギッター工場 では、現在、バッテリーセル製造用の試験操業ラインを構築中です。 VW コンポーネントは、電動駆動システムも製造します。そのためカッセル工場では 改築を行っています。こうした状況下で VW は、ブラウンシュヴァイク、ザルツギッター、 カッセルの各工場だけで、e-モビリティ分野に13 億ユーロを投資しています。

バッテリー システムは、MEB の一部に。
VW コンポーネントは「I.D.」ファミリー向けに、従来よりもシンプルな構造でありながら、 大幅にパワーアップしたまったく新しいバッテリーシステムを開発しました。これまで 採用してきたバッテリーに比べ、MEB システムには、バッテリーの規模を柔軟に変更 できるメリットがあるため、様々な性能レベルで、「I.D.」モデルに容易に組み込める ようになります。例えば、「I.D.」オーナーが、主に市街地で使用(短距離のみで 長距離ドライブに余り関心が無い)する場合には、容量の小さいバッテリーを選択 することができます。その結果、車両価格を抑えることができます。頻繁に長距離を 走行するドライバーは、大容量バッテリーを望まれるでしょう。このようにユーザーは、 より柔軟にクルマを選べるようになります。こうした性能のカスタマイズ機能こそ、 新しいバッテリーシステムの大きな魅力です。その他の利点としては、(アルミニウム ハウジングの採用による)重量の最適化、様々なセルタイプの適応性や統合した 冷却機能などが挙げられます。こうしたバッテリーは、片側のアクスル、または両側の アクスル駆動用に使用できます。セルモジュールは、板チョコのように配置されるので、 バッテリーの設置も容易です。VW では、充電能力を、これまで「I.D.」が属する セグメントで実現できなかった 125kW まで引き上げることに成功しており、充電 効率の向上と充電時間の短縮を実現しています。

バッテリー コンポーネントの詳細
MEB バッテリーの構成は、次の通りです。最下層は、丈夫なバッファー保護部です。 その上部にアルミニウム製バッテリーハウジングとクラッシュフレームを配置、一体型の バッテリー冷却機能と高/低電圧の電装システム(AC、DC、12V)用の接続 ボックスを内蔵しています。新開発の MEB セルモジュール(個々のバッテリーセルで 構成)は、バッテリーハウジング内に装着しています。セル(電圧、電流、温度)と セルバランス(日常的な使用におけるセルの均一な利用)を監視するコントロール ユニットであるセルコントローラー(CMCe)は、バッテリーハウジングの縦ビームに 組み込まれます。バッテリーシステムの後部には、別のコントロールユニットとして、 バッテリーエレクトロニクス(BMCe)を統合しています。セルモジュールコネクターが、 セルモジュール同士のリンクに用いられる一方、計測ケーブルが、バッテリーエレクトロ ニクスとの通信を担当します。バッテリーハウジングの上部は、カバーで閉じられて います。カバーは、メンテナンスが必要になった際、簡単に取り外しできます。

あらゆるセルタイプを利用可能
セルの種類として、パウチ型(ラミネート型)と角型の両方を使用できるため、セル サプライヤーと協力して作業を行う際の柔軟性が高まります。 VW は、セルモジュールの充填密度を最大限に高めることで、可能な限り高い エネルギー密度を達成します。バッテリーのエネルギー密度とエネルギー容量は、 今後数年間に、引き続き増加する見込みです。全固体電池(ソリッドステート バッテリー)を使用することで電気自動車は、次の 10 年の後半に、大きな躍進を 遂げる可能性があります。

センター オブ エクセレンス
2017年、VWは、リチウムイオンバッテリーの開発業務を、“センターオブエクセレンス” (最先端技術研究所)に移管しました。セルサプライヤーは、製品を開発する際、 バッテリーセルの仕様に関する詳細をここから入手します。そのため同センターは、 VW グループが使用するすべてのバッテリー セルに責任を負っています。

バッテリーセルの作動原理
リチウムイオンバッテリーのセルは、陰極(カーボン、銅製フォイル)、セパレーター (セラミックコーティングした多孔質ポリオレフィン膜)、陽極(リチウムメタル酸化物、 アルミニウム膜)、そして、電解液(有機溶剤、導電性リチウム塩、添加物)で 構成されています。充電時は、リチウムイオンが陽極から陰極に移動して、そこに 蓄えられます。次に、電力網から供給された電気エネルギーは、化学エネルギーに 変換されます。電子は電気回路内を流れて、リチウムイオンがセパレーターを通過 します。例えば、電動モーターを作動させるといった放電プロセスの間は、リチウム イオンが陽極に移動します。すると、化学エネルギーが再び電気エネルギーに変換 されます。この場合は、電子が電気回路内を流れ、リチウムイオンがセパレーターを 通過して反対方向に移動します。


充電インフラ

全体的なコンセプトが決め手に




e-モビリティが躍進するには、価格、航続距離、充電インフラが重要な要素になり ます。新型「I.D.」は、まさにこれらの要素に秀でています。 「I.D.」は、優れた費用対効果と航続距離を実現しています。「I.D.」の充電は、 一日の終わりにスマートフォンを電源に接続するのと同じようにシンプルで簡単です。 将来は、必要に迫られて「充電ステーション」まで出向いたり、遠回りして充電する ことは、稀になるでしょう。しかし、短時間に手軽に充電するには、あらゆる環境 (車両、モビリティ サービス、インフラ)が整っていなければなりません。VW では、 e-モビリティにとって重要なのは、優れた EV を製造することだけではなく、包括的な コンセプトを構築することであると考えています。このような考えに基づいて、VW ブランドは、クルマの全般的な環境に目を向け、ハードウェアとソフトウェアの双方で 独自の充電/エネルギーエコシステムを構築しつつあります。そのため VW は、EV の あらゆる利用分野(家庭、職場、公共施設、高速道路)に関与しています。 あらゆるサービスの質を高めるために、可能な限り多くの活動に自社で取り組んで います。

家庭における充電
最新の調査によると、大半の「I.D.」オーナーに想定される充電回数は、一週間に 一回のみです。多くの人々は、通勤で一日に 50km 以上、走行しないためです。 VW の分析では、すべての充電の約 50%は家庭で、20%は職場で行われると 見込んでいます。そのため VW は、車庫、駐車場、企業の駐車場に設置可能な モジュール式ウォールボックスを発売します。標準的な 230V 電源では、EV を 2.3kW で充電できますが、「I.D.」と他のモデルは、最大 11kW(AC)で充電 できる予定です。これにより、VW 製バッテリーを(安価な電力を入手可能な) 夜間に(一晩で)、あるいは就業中に満充電にすることができます。VW 製の ウォールボックスは、約 300 ユーロで発売する予定です(設置費用は別途)。 さらに、22kW(DC)の充電能力を有するウォールボックスの製造も計画しており、 このタイプは、エネルギーを電力網に供給することも可能な、双方向利用に対応 しています。夜間(家庭や企業でエネルギー消費量が低下する時間帯)には、 この双方向ウォールボックスに接続した EV を余剰電力の蓄電用バッテリーとして 使うこともできます。

外出時の充電
充電の 25%は公共の急速充電ステーションで、5%は高速道路で行われることが 想定されます。いずれのケースでも、125kW 以上の出力で充電することが可能です。 一回の充電で約 700km の長距離走行が可能です。「I.D.」を上記の出力 125kW の急速充電ステーションで充電した場合、約 30 分で充電が完了します。

IONITY 合弁企業
充電インフラの拡充は、もっとも重要な課題です。この課題を解決するための一つの 選択肢が、IONITY 合弁事業です。IONITY を通じて VW は、BMW グループ、 ダイムラーAG、フォードモーターカンパニーと協力して、欧州の高速道路沿いに、 信頼性の高い高出力急速充電ステーション網を構築する予定です。「未来の給油 ステーション」と呼ばれる合計 400 ヶ所の急速充電ステーションの営業は、2020 年 までに開始する予定です。「I.D.」モデルは、こうした充電ステーションで、最大 125kW で充電できるようになります。

全般的に、あらゆる国々で、充電インフラの拡充を強力に推し進めることが急務に なっています。VW も充電インフラの拡充に貢献していることは言うまでもありません。 欧州域内の全 4,000 店の VW ディーラー施設内に、充電ステーションを設置する 予定です。VW の充電施設には、最大で 150kW の出力に対応する急速充電 スタンドも設置する予定です。こうした動きと並行して VW は、2020 年までに、 自社工場の従業員向け駐車場内の充電ステーション網を 1,000 から 5,000 に 増やす予定です。さらに、自社の充電ステーションで可能な限り再生可能な電力を 提供できるように全力を上げています。

将来、支払いはカードなしで可能
VW が将来的にモビリティプラットフォーム“WE”で提供する“We Charge”オンライン サービスは、同社が自動車メーカーから本格的なモビリティサービスプロバイダーへと 変革を遂げていることを示す、もう一つの例です。アプリを使用して管理するこの サービスは、充電に関するあらゆる疑問に答えます。例えば、どこで充電可能か? 所要時間は?費用は?支払方法は?など、このアプリで実用的な回答や解決策 が得られます。“We Charge”は、“Planning & Finding”(充電計画と充電 ステーション検索)、“Charging & Paying”(充電&決済)を管理します。 このスマートなオンラインサービスは、最適な充電ステーションを表示し、予約して、 そこまでの道案内をしてくれます。このようにして“We Charge”は、欧州全域で、最高の密度で充電ネットワークにアクセスできるようにすることで、EV のバッテリー 容量が不足するという不安を解消してくれます。さらに、自由度の高い料金プランと 透明な請求システムも特徴としています。それらはすべて、VW が Hubject に出資 することで実現しました。Hubject は、e ローミングプラットフォームを提供し、欧州 全土で充電サービスのプロバイダーに関係なく、EV への請求が可能になります。 このプラットフォームの下で、300 社のパートナー、55,000 ヶ所の充電ステーションが 管理され、快適な認証と決済を実現します。現在、支払いは RFID(Radio Fre quency Identification)または、スマートフォンのアプリ(QR コード使用)を介して 行われています。近い将来、システムは“Plug & Charge”(プラグ&チャージ) 機能により、大きな変革を遂げる見込みです。この機能が実現すると、ブロック チェーンテクノロジーによって、「I.D.」自体による充電プロセスの直接決済が可能に なります。事実上、「I.D.」ファミリーのモデルは走るクレジットカードになります。

電力網の一部としての「I.D.」ファミリー
e-モビリティの未来では、他のスマートソリューションもいくつか実用化される予定です。 家庭の電力網に組み込まれたゼロエミッション車が、電力網の余剰電力(夜間に 頻繁に発生し、これまで未活用)を蓄電することで、いわゆる、スマートグリッド ソリューションとして電力網を安定させる役割を果たします。VW は、単にウォール ボックスを提供するだけでなく、その一歩先を目指しており、デジタル的に家庭内の 機器をリンクするホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)の開発も計画して います。HEMS により、家計とモビリティ、双方のエネルギーコストを削減できるだけで なく、「I.D.」を電力網の一部に組み込むこともできます。HEMS は、太陽光発電と 家庭用バッテリーの状態を把握しつつ、EV/家庭用ヒートポンプのエネルギー需要を 管理するインテリジェントなコンピューターで管理されています。ユーザーは夕方、 翌日の走行予定距離を「I.D.」に入力します。「I.D.」は HEMS と通信して、最新の 電力料金と利用可能な電力量を基準に、最適な充電サイクルを導き出します。 さらに HEMS は、例えば、家庭の電力ニーズに一時的に応じるために、EV に残って いる電力を活用する機能も備えています。こうしたあらゆる機能が、すべて自動で 行われます。

電力量は十分
EV の新規登録台数が急増したとしても、利用できる電力は不足しません。例えば、 100 万台の EV が消費する電力量については、ドイツの場合、1 年間で 2.4TWh (2,400,000,000kWh)程度と推定されています。ドイツの年間電力消費量は、 517 TWh なので、EV の利用に伴う電力消費量の増加は、わずか 0.5%です。 余剰電力を活用できる夜間充電を行えば、これの影響は、さらに軽減するでしょう。 電気自動車は、極めて高効率であるという点も特筆すべきことです。同じエネルギー 消費量では、EV はディーゼル車の 4 倍の距離を走行できます。VW の試算では、 EV の耐用年数までの CO2 バランスは、すべての駆動形式の中で最も良いものです。 この値は、テュフ(TÜV)で検証済みです。再生可能な発電源から供給される 電力が、これまで以上に増加するので、中長期では、このメリットはさらに拡大するでしょう。

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