アヴァンギャルド精神世界

冥想により、限りなき知性と底知れぬ優しさを。そこに次の時代が・・・。この世はドリームでもあり、リアルでもあり。

アレクサンダー・セトン-2

2006-12-27 01:33:56 | 錬金術
◎秘密を明かさない

シュトラスブルグで、セトンは、グステンホーファーという金細工師に出会い、なにくれとなく生活の面倒を見てもらった。セトンは彼の家を辞去する時に、自分の本名も名乗らず、賢者の石の赤い粉末を与え、金属変成の方法を伝授した。

早速グステンホーファーは、友人を駆り集め、皆の前で鉛を黄金に変えてみせた。噂を聞きつけた市議会の調査人の前でもグステンホーファーは実演してみせた。グステンホーファーの評判は高まり、ついに神聖ローマ皇帝ルドルフ2世は、彼をプラハの宮廷に召還した。

ところが、彼は既に賢者の石の粉末を使い切っており、自分ではその石を造ることはできないと弁明した。ところが、皇帝は、彼を白塔と呼ばれる天上に小さな穴が一カ所開いているだけの錬金術師用の牢獄に収監し、グステンホーファーは一生をその牢獄で送ることになった。

一方セトンはそんなこととはつゆ知らず、偽錬金術師が跋扈するケルンで、近所の人々を集め、アンチモニー・ガラスを溶融して、例の粉を混ぜると坩堝に黄金を作り出すことに成功し、更にアンチ錬金術のゲオルグという外科医の前でも金属変成を成功させた。このようにヨーロッパ各地で錬金術師としての名声を高めたことから、彼はコスモポリタンという異称を得ることになったほどである。

セトンは、ミュンヘンの選帝侯クリスティアン2世の前で金属変成を実演したが、どうしても賢者の石の秘密を聞きたがったクリスティアン2世に対してその秘密を明かさなかった。その結果、先の尖った鉄棒に刺されたり、溶けた鉛をかけられたり、火で焼かれたりする拷問にあい、地下牢に幽閉されたが、セトンは秘密を明かすことはなかった。

ポーランド貴族センディボギウスが地下牢から出してくれ、セトンは、感謝の気持として、彼に賢者の石を贈呈した。しかし、拷問の傷がもとで、セトンはまもなく亡くなった。

後にセンディボギウスもグステンホーファー同様に、賢者の石の製法を知らない錬金術師として名を残した。

セトンは、確かに賢者の石の製法を何かの拍子につかんだに相違ない。しかしニコラ・フラメルが語るような、錬金術には心の正しさが必要条件であるという警告は知らなかったようだ。

どうもセトンは、金属変成の技術が実在するということを世間に証明するためにキャンペーン・ツアーを行っただけの、純真な心根の人でしかなかったように見える。仮にその技術の出て来る源を承知していれば、それこそ、見込みのある弟子、つまりそれを知るに値する人だけに、その技術を相伝したに相違ないのだ。

その技術を利用するに足る精神的な成熟のない人にこうした技術が渡ることは、いたずらに世の中を混乱させるだけである。挙げ句の果て、強欲な権力者に出会えば、錬金術師本人が金の卵を産む鶏よろしく始末されるのは当然の流れではあった。この技術は、17世紀に出るには、早過ぎたのだ。当時の世人は金だけに関心があり、心には関心が薄かった。21世紀の今も、錬金術と言えば、株などの資金運用の代名詞であり、17世紀とあまり変わらないが・・・。


    1日1善。1日1クリ。

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