温家宝中国首相国会演説

温家宝首相の国会演説は、練りに練り上げられたものだった。

あるときは大国として、あるときは発展途上国として、自らを都合よく使い分け、歴史認識、台湾問題、東シナ海をめぐる係争については、厳格に釘を刺し、歴史的には日本文化の源流が中国文明にあり、全体としては、戦中の甚大な被害にかかわらず、日本人を手厚く遇してきた度量の大きい道義国家中国を強く印象づけることを狙ったある意味で凄みのある演説だった。

この成長著しく、自信がみなぎる誇り高い大国を相手に、今後50年100年熾烈な競争を続けていかねばならないのが我が国の宿命だ。温演説を生み出した中国の外交力、演説を練り上げた知的インフラを考えれば、我が国が安閑としていられないことは火を見るよりも明らかだ。こういう指導者の演説の背景には並々ならぬ国家の意思、国民の覇気がなければならないだろう。

国対政治に明け暮れ、選挙対策政治に血道を上げるげている場合ではない。それこそ頭のてっぺんから足の先までをも緊張させ全身全霊を傾けてオールジャパンで外交力を高め中国に対峙しなければならない。

今はまだ人口以外は、経済、政治制度、軍事などあらゆる面で比較優位を保っているが、10年20年後まで約束されているわけではない。そんなことを改めて深刻に考えさせられた中国首相演説だった。
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