節電の世界で見えるもの 川上未映子
スーパーや薬局などに日用品の買い物にでかけても「節電」がくっきり目に見えて、それにも案外慣れてしまった。当初は「暗っ」とか反射的に思ったものだが、文字が見えぬわけでもなし、そもそも昼間から煌々(こうこう)とフルで電気をつけているのもどうかしてるといえばそうなんであって、これを機にこれくらいの明るさが常識になってくれればいいことずくめなんじゃないですか。
しかし微妙なのは百貨店のお化粧品売り場なんだよね。このあいだふらりと入ったらもちろん節電態勢でこれまでとの差を思えばかなりの薄暗さではあったのだ。あの場所の素晴らしいところは「すわハレーションか」と思うほどに何もかもを光で照らして輝かせ、5割増しで美しく見える点、見せてくれる点なのであって、しかしその効果が著しく衰退しているのは根本的にけっこうつらいものがあるのだった。 記事へ asahi.com FATSHION STYLE