372 競馬場

　東京競馬場でアルバイトを何回かやった。個人的ではなく弓道部の集団バイト、何かコネがあったのだろう。競馬開催日の、場内整理、お客さん誘導、出走前の馬の見張り、レース後の検尿などの手伝い、などいろいろあった。給料は忘れたが6時間で二千円ほどだったか。大きいレースで客がたくさん来たときは大入り袋が出て五百円入っていた。部の活動だったので給料は召し上げられて、弓具を買ったり道場整備の費用にされた。大入り袋は貰えた。出走前の見張りは怪しい人が来ないように馬とにらめっこしているだけなのだが、厩舎の人が来て馬に何か、お茶がらとか食べさせることがあった。今考えると、それはいけないことで止めなければならなかったのかもしれないが、そんな説明もなく茫然としていただけ。場内整理はつまらなかった。検尿補助は結構スリルがあった。競馬場には今も学生アルバイトがいるのだろうか。

371 ジェネリック薬品

　沖縄から帰ってきて、咳がひどかったので医者嫌いの僕としては珍しく耳鼻科の町医者にいって鼻系の抗生物質とアレルギー対処剤および痰の出をよくするとかの薬をもらって5日間飲んだのだけど良くならず、かといって気管支炎的に重症化しているとも思えなかったので、そのままぐーたらしていたら、二週間ほどで少しずつ良くなってきた。やはり自分の免疫力が上がってこないとだめなのだろうか。もらった薬はジェネリックで（自分でその希望を言うのだけれど）まあ安かった（三割）。国民医療費の削減に協力したのかな。飲まなくても良かったのかもしれないがそこまでは言わない。

370 クリスマスイヴ

　今宵はクリスマスイヴなのだがクリスチャンでない僕には特別に関係ない。妻がカトリックでそのミサに出かけたので猫と平和的に留守番。教会では小パーティーもあったようで写真はそのお土産。こうやって過ごせることは幸せである。世界各地の紛争地や災害地の方の労苦がしのばれる。今年もあと一週間、風邪で滞っていたことを頑張って取り返そう、と思うだけかなあ。

369 鴎外荘

　毎年23日は大学の恩師の墓参り＆東京名所会食の日。今年は9人集まったみな70歳台で僕が一番若い。不忍池のほとりの鴎外荘・水月ホテルで懐かしの歓談。だいたいが都立大生物学科出身なので当時の自由な教育雰囲気を懐かしむ話。僕はよそから回って入ったのでその現場にはいなかったのだけど様子がよくわかった。ところで、今は首都大学ってのになって、学部名が都市教養学部とかわけのわからない名称にさせられているのだが、理学部とか法学部とかの昔の名称に復活させる案が動き始めているようだ。よしよし。都立大学にもどす案もありそうだが、首大になったとたんに、ある工学系の私学が東京都市大学を名乗ってしまったからどうだか。
まだ咳が残るが少しずつ回復傾向。よしよし。

368 沖縄の短歌

『あやめもわかぬ』国吉茂子第三歌集　ながらみ書房2016年11月刊　国吉さんとはまだお話したことがなく、この歌集でご様子をはじめて知った。きっちりとして端正な歌が並び作歌歴が長い方だとわかる。病気で失語症になった御夫君との生活、わかれ、離れて暮らすお子さんやお孫さんの家族詠、ご自身の心を求める歌などが並んで感心させられた。しかし、何といってもふるさと・地元としての沖縄の題材に圧倒されるのは、先日僕が行ってきたからだろうか。歌集を読んでからゆっくりと旅すればよかったかと少し残念、次回の旅行はそうしよう。しかし、歴史のあるそれらの事物、風俗を理解するには相当長い時間が必要だろう、しょせん、異邦人として旅をするのか、それもまた良きかな。もちろん、沖縄の短歌、としてくくってしまっては申し訳ない作品の集まりである。

深ぶかとかうべを垂れて路の辺の一本すすき哲学をする
世界同時雇用不安に立ち向かふ夢ではいまもハローワーク職員
やまひだれまだれがんだれ寂しさを吸引してゐるあかひらく空
砂浜の白き砂より夏生れて海は海色の儒艮遊ばす
迸るいのちのかたち赤赤と梯梧は初夏の空覆ひ咲く
「犯罪現場（クライムシーン）」米軍も認めたヘリ墜落、普天間基地そのものが罪
コトバとして発するまでの脳のしくみ思ひみざりき夫病むまでは
工工四（くんくんしー）は琉球音楽の楽譜なり唐の世の名残りひく工六四（くるるんしー）
落鷹（ウティダカ）の鋭きこえのささりつつわが裡の秋深まるばかり
ヤンバルクイナがヤンバルクマヒマヒ捕食する山原（ヤンバル）の森といふ密室で
月桃の花に吸ひつくクロセセリ黒挵もまたこの香が好きで
日米合意に見え隠れする沖縄軽視復帰に燃えゐし祖国とはなに
新潟産杵つき餅が東京の娘より届きぬ都市の暮れかな