人と組織マネジメントの米国動向メモ(アーカイブ)
HBS Working Knowledge など




The Social Responsibility of Business is to Increase its Profits
by Milton Friedman
The New York Times Magazine, September 13, 1970. Copyright @ 1970 by The New York Times Company.
http://www.colorado.edu/studentgroups/libertarians/issues/friedman-soc-resp-business.html

池田信夫ブログの記事で紹介されている、企業の社会的責任についてのミルトン・フリードマンのエッセイ(1970)を読む。次のような大意。

「企業の社会的責任を言うビジネスマンは、知らぬ間に、自由な社会の基礎を脅かす勢力の操り人形になっているのだ。企業経営者は株主のエージェントなのだ。その意味でのみパフォーマンスの基準も責任当事者も明確になる。それなのに、企業経営者に対して、エージェントとしての責任以外の責任を果たせ、と言うことは、株主や顧客や従業員が自分で判断して使うべき金を、経営者が自分で使え、と言っているに等しい。それは、経営者は自分で課税して自分の判断でその税金を使え、と言っているに等しく、議会制民主主義の否定、三権分立の否定だ。もしそこで、社会的責任を身にまとう方が得策だからというのならば、偽善であり詐偽に近い。企業の社会的責任とは、ルールの中で競争して利益を増やすことに他ならない。」

市場原理主義に対して根強く表明され続ける不信は、個人や企業が利己的に行動することが全体の利益になる、という理屈が腑に落ちない、という直感から来ていると思われる。ビル・ゲイツもその点を気にしているらしく、先日のダボス講演において、企業に人道的な役割を期待する「創造的資本主義」を主張しながら、アダム・スミスの次の言葉を引用し、「創造的資本主義」の根拠の一つを、アダム・スミスも否定しなかった、あらゆる人間が持つ「利他性」に求めている。

「人間がどれほど利己的であっても、明らかに、その本性においてはいくばくかの道徳指針がある。それゆえ、他人の富にも関心を持つし、他人の幸せが自分の幸せにとっても必要であると思う。たとえ、他人の幸せから、それを見てうれしいと思うこと以外には、何も得ることができないとしても。」

(ハイエクとも知的背景を一にする)P.F.ドラッカーは、その主著『マネジメント:課題、責任、実践』(1973,4)の中で、フリードマンの主張に原則合意し、企業に社会的責任を負わせることは、企業にそれだけ大きな力を与えることになり、最終的には「企業全体主義」を志向することに他ならないと指摘し、ラルフ・ネーダーの消費者運動を、企業の敵を標榜しながら逆に企業全体主義を目指すものだと、批判している。しかし一方では、フリードマンの純粋な立場を貫くこともまた不可能であり、企業の社会的責任を避けることはできない、としている。なぜなら、政府の非効率ゆえに社会的責任の空白地帯が生じるからであり、社会のリーダーシップ集団は現実に企業のマネージャー達であるからである。そして、企業は社会的責任についても、達成しようとする目的の明確化、成果の評価を通じて「マネジメント」すべきとしている。(それによってガバナンスが働くとしている。)

ルイ・ガースナーは、そのIBMのターンアラウンドの回想記『巨象も踊る』(2002)の中で、「IBMにおいては伝統的に企業の社会的責任の感覚と熱意が深く浸透してきた」ことを指摘するとともに、「企業にしかないスキルと資源を活用することによって、社会問題の解決に貢献すべき」ことを主張している。例えば、IBMであればIBMが最も得意とするITの活用方法の提案を通じて社会貢献することになる。(マイクロソフトの「PCを配る」、というのも、同じ文脈で理解することができる。)あるいは、物事を効率的に進める企業人のスキルをNPOに持ち込んで貢献することができることもあげている。ガースナーは、ハーバード・ビジネス・スクールのロサベス・モス・カンター教授の、「企業が社会問題を責任という観点からではなく機会という観点からとらえれば社会的責任から社会改革に移行できる」という主張を支持している。



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コメント
 
 
 
ご無沙汰してます (山口憲和)
2008-02-26 16:44:27
南雲さん、ご無沙汰しております。
アメリカで何とか生き残っています。
久しぶりにとても知的な刺激を受けました。

▼米国 労働法・労働事情ブログ
http://hr.cocolog-nifty.com/

▼【楽天ブログ】2003年から書いてます。
http://plaza.rakuten.co.jp/shigekinin/
 
 
 
おひさしぶりです。 (LMN)
2008-02-26 22:40:04
山口さん、おひさしぶりです。
そうですか、アメリカでしたか。
うらやましいですね。私も率直に言って、日本でよりはアメリカで仕事したいです。
 
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