絵本の古本屋 【えほんやるすばんばんするかいしゃ】

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杉本さなえさん作「AGEHA」の紹介です

2024-11-07 | ●思うこと



何度かお知らせしていますが、現在、福岡PARCOでは
「BOOK MEETS FUKUOKA ~本のもりのなかへ~」を開催中です。
会期は、11月10日まで。
今回、うちはお店としてではなく出版社枠で参加しています。
いい機会なので、会期中に本のことを紹介しよう!なんて思ってたけど
あっという間に終わりそうで焦ってます。



というわけで、紹介させてください。
せっかくの機会なので、内容的なことにはあまり触れず
出版社(もしくは私個人)としての試みを書いてみたいと思います。

まずは、杉本さなえさんの「AGEHA」について。
2022年の11月発行なので、発売から2年が経ちました。
簡単に説明すると、2018年に開催した杉本さなえさんの個展「AGEHA」で
発表した作品24点を一冊の本にしました。
なので、作品集と言えば作品集ですが、自分の中では微妙に違います。
じゃあ、これはなんなのか。
おそらく、この本では「絵本の種」のようなことが出来たんじゃないかと思っています。
※この感覚は携わったメンバーとはほとんど共有していないので、あくまでも個人的なものとしてこの先お読みください



ここからは、個人的な持論と仮説が混じってしまいますが
大前提として「絵本」というものを非常に不自然なものとして捉えています。
で、ぼく自身はこの不自然さに面白みを感じています。
同時に「絵本」は、どこから発生するのか?が長年の興味です。
ただ、これを説明すると、ものすごい文章量になるのでここでは省略します。

この本「AGEHA」を通しての問いの一つに「本作りはどこから始まるのか」があります。

うちのお店と絵を描く人が、本を作るときに「お願いする・される」の関係性の中で
発生するものに対してやや違和感があります。ならば、この「お願い」をなくすことはできないか。
「お願い」からスタートする(着想する)良さ、があるのはなんとなく承知しているつもりですが
自分の活動に於いては、あまりそこに関心がありません。その「良さ」を使って生まれるものではなく
もう少し社会性の弱いもの(個人的なものに近いが、個人的なものでもないかもしれない)を
地上に持ってくることはできないかと思っています。
なので、「良い」「悪い」「おもしろい」「おもしろくない」にもほとんど関心がありません。
地面の中の土や根、深い海の底にあるものや、そこに流れる時間。
きっと、これらがあるから、地上には様々なものが存在しているわけで
当たり前に繋がっているこれらを含んだ上で、地上に存在していてほしい。
まずは、ここから。ここら辺があやしい。気になる。

これまでの展示を全て観られたわけではないのですが、杉本さんが行ってきた展示には
一つの特徴があるように感じています。
「個展」と「そのほかの展示」には若干の違いがあり
「個展」には、一本の線で脈々と繋がっているような筋があると感じます。
特に「個展」では、深く潜って潜って、見て来たもの・持って帰ってきたものを
自分たちに見せてくれているような気がしました。
観察者としての杉本さんの存在。
その視点・フィルターを通して、生まれる絵たち。
それを見て、勝手な解釈をする自分。
一人の鑑賞者としては、これが楽しいわけだけども、自分がイメージする本を作る場合
おそらく、この解釈が邪魔な気がしてます。

例えば、自分が生きてきたこれまでの数十年は、出来事の連なりでしかないのに
このことを誰かに話したり(自分の中で振り返ったり)するときに
その出来事の一つ一つを繋げる行為が発生します。
このときにその連なりは物語に変換されるのだと思います。
たぶんだけど、杉本さんの個展で発表された絵たちは、これが自動的に可能になる。
だから、本の中にぼくの(他者の)解釈は要らない。結果的に、入っちゃったけど。

ただ、これには少し時間がかかる。
絵が放つ光が眩しいから。
おそらく、展示という限られた空間では、ほとんどの人にとって時間が足りない。
人によっては、リラックスもできない。だとしたら、これは本の形がいいのかもしれない、
というのがこの本作りの始まりです。

じゃあ、どうしたらいいのか。
これが本当に本当にわからなかった。だいぶ迷いました。
完成品を見たら、所謂、「作品集」なのだけどぼく個人の本音としては、
どうしても「作品集」にしたくなかった。絵本でもないし、詩の本でもない。
でも、裏を返せば、作品集であるし、絵本でもあるし、詩の本でもある。
つまり、リバーシブルなわけだけども、リバーシブルの表の方は
絶対に抽象的にしておきたい、という感覚でした。

中学生や高校生の頃、歴史の勉強を暗記でやってるときは
何も繋がらなかったのに、暗記ではない感覚で勉強し始めたら急に繋がる感覚があって
もしかしたら、それに近いかもしれません。

なので、どう見ても頂いてもいいわけですが
「ただただ、在る。は、繋がる。」
というのが、この本が出来たことの一つなのかも、と思ってます。

これが、ぼくにとっての「絵本の種」じゃないかと思っているところです。
こういうことを書くと、余計なことを書いたかもしれない気がして妙に緊張します。
できれば聞き流す程度に受け取って頂けたら助かります。


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「BOOK MEETS FUKUOKA ~本のもりのなかへ~」
会期|2024年10月25日(金)~11月10日(日)
時間|10:00‐20:30 ※最終日は18:00閉場
会場|福岡PARCO本館5F PARCO FACTORY
入場|無料
主催|福岡PARCO
企画|ブックオカ実行員会/ブックスキューブリック
イラスト|日高あゆみ
デザイン|中川たくま

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