評価 (3点/5点満点)
自民党が今国会での成立を目指しているカジノを含むIR(統合型リゾート)施設法案。
そんなタイムリーなテーマに関し、この本ではこのIRの成功こそが2020年以降の日本という小さな島国の経済を再び活性化させるための大きなチャンスであると指摘します。一時的に人が集まるオリンピックではなく、恒常的に海外から多くの人たちを集める装置・・・それがIRだとしています。
また、カジノ=IRという誤った認識を改め、ジリ貧の衰退に向かっているカジノと、国の経済を支えるほどに成長しているIRの違いにも触れています。
第1章から4章までは、世界各国(シンガポール、マニラ、マカオ、フランス、ラスベガス、ニューヨーク)の経緯と最新事情を紹介し、最終章で世界のカジノから、日本は何を学び何を生かすべきなのかを考えます。最終章の一部を抜粋します。
●最も見習うべきは、「外国人による外国人のためのIR施設」
外国資本を導入し、外国人を楽しませ、自国民のカジノ入場は高額な入場料で規制する。国家も国民も労せず、痛まずして、利益の一部を頂戴する方法は取り入れるべき必須ポイントだろう。
●英語力のレベルの低さが雇用におけるハードルになる
大型IR施設が誕生すれば、雇用の増加は当然期待できるが、外資系のカジノ運営企業であれば、英語力があることは大前提となる。日本が英語教育に力を入れて全体の底上げをしない限りは、バイリンガルやトライリンガルの外国人に雇用を持っていかれる可能性も否めないだろう。
●実は、日本人の20人にひとりが「ギャンブル依存症」。自国民向けのカジノはありえない!
入場料や各種規制などで自国民がギャンブルにはまらないようにコントロールしていくことが重要だ。なにより、正解有数のギャンブル大国である日本は、IRの導入を機に多くを改めねばならない。
●IRは旧型社会システムを変える「ラストリゾート」だ!
IRの成功の鍵は、今までの日本式システムを破り、新しい型をつくることにある。だからこそ、外資によるオペレーションが鍵を握ると考えている。もし東京でIRを実現するのなら、いくらお金がかかっても、これまで見たことのないようなIRをつくらなければならない。
つまりIRの真髄は、税金を使わずに街のランドマークをつくることです。あくまでもカジノは、巨額投資をしてもらう企業への担保に過ぎません。そして、そのカジノの顧客は、成熟した都市であるならば自国民であってはなりません。
IR(統合型リゾート)は、今後の日本の社会・経済を考えるうえで、押さえておくべきキーワードでしょう。