つながる読書術 (講談社現代新書) 価格:¥ 798(税込) 発売日:2011-11-18 |
評価 (3点/5点満点)
本書のタイトルの「つながる」には次の5つの意味が込められています。
1.ある本を読んで、次の本へと「つながって」いく読書の愉楽。
2.書物を通じて、人と人とが「つながって」いく醍醐味。
3.ネットやリアルの読書会などを介して、本来出合わなかった名著と「つながる」贅沢な時間。
4.本を読んで、無知または未知または無関心だった多彩な現実世界と向き合う「つながり」。
5.自己目的の読書にとどまらず、何が起きても不思議ではないこの時代に、良かれと思ったことを即行動に移せるか否か、という「つながり」方。
著者の日垣隆さんは、読書の多くはこの5つの楽しみのためにやめられないそうです。
おもしろい本を読んで自分の中にとどめておくのではなく、発信する。その広がりが、また自分にも影響を及ぼす。「自分一人ではなく、みんなでおもしろがる読書術」という点が、他の読書術と異なる特徴です。
書物は先人の知恵で満ち満ちています。また読書は、「なんとなく」とか「だらだら」とか「意志とは無関係に」というレベルで続けられるものではありません。本を読むことで、パソコンでは出せない答えを考え出せる人間になりましょう。
30歳から49歳までの社会人が読書に使っている時間は7分半ほどでしかなく、毎月数冊の本を読む人は1%もいません。名著があるのは事実ですが、まずはどんな本でも必ず学ぶことはあるという姿勢で読み始めてください。
【my pick-up】
◎まず「ベーシックな読み方」を身につける
本の書き手もまた、「相手にもっと伝えなければ」というサービス精神を発揮します。本には、著者が書き終えた時点で「ここだけの話を伝える」というサービスがあらかじめ盛り込まれています。時と場所と読み手のスキルにかかわらず、貴重な情報が得られるメディアだからです。本とは比較的廉価なセミナーであり、会えないような人に会えるインタヴューでもあります。こうした意識をもったうえで、選んだ本を実際にどんどん読んでいきましょう。
◎読書ノートではなく「本」にメモる
「読み終えた本はブックオフに売るから、きれいに読むことにしています」などと言う、なんとも情けない貧乏根性を披露する気の毒な人がいますが、どんな希少本だろうと新品同様だろうと、ブックオフの買い取り価格は、せいぜい定価の10分の1程度でしかありません。1000円の本を読み終えたあとで100円儲けたいからといって、借りたもののように及び腰で読んで、いったい何が身につくというのでしょう。
他方、100円をすっぱりあきらめ、線を引き、印を付け、余白に自分の感じたあらゆることを書き込むといった読み方をすれば、それは世界に1冊だけの本になります。書店にいけばたやすく手に入る1000円の本を、読み手としての自分が希少価値のある唯一の本に〝育て上げる〟という心意気を持ってはどうでしょう。あとあと100円より多くの利益が返ってくることは、言うまでもありません。
◎読書会は参加もいいけれど主宰せよ
本を通じた仲間は、〝経験〟としての共通項よりも、興味、関心、知性、教養など、〝考え方〟としての共通項をもって結びつきやすい仲間です。大人になって、こうした仲間を見つけるのは、かつては至難の業だったと思います。しかし、ネットが状況を一変させてくれそうです。その意味で読書会は、今後、有意義なコミュニティづくりの機会にもなるのではないでしょうか。
◎本を読むという習慣を維持するためには
まとまった時間が2時間はないと、本を読む習慣が減っていく可能性は非常に高いでしょう。知的コミュニケーションの糧となる本、咀嚼することで自分の血肉となる本、さらに言うと〝キョーヨー〟を培うための本は、従来の紙の本が最も適していると確信できます。ここで肝要なのは、いかに「2時間の固まり」を確保するかということです。