駅前ロータリーに、櫓の組まれた頃は・・・・・・。

　駅前ロータリーに、櫓の組まれた頃は、二重三重にも踊りの輪が広がって、大人も子供も踊り興じたものだったのです。

　それが私の子供の頃の、７月１３日からはじまるお盆の３日間で、人のいきれと喧騒は今の夏祭りとは、どこかひと肌もふた肌も違うように思えます。

　もちろん懐かしさというものをかきたてながら、今この文章を書いているのですが、しかしノスタルジーというのとは少し違って「だから今より昔はよかった」とは言い切らないのです。

　だって私はあの頃を、あの昭和の空気を快いと思って泳いでいたわけではありませんでしたから。
　どちらかといえば、早くここから抜け出したいと思って、日々を暮らしていたのですから。
でも、抜け出しても抜け出しても今は追いかけてきて、夢見る明日は今日になる。

　そうです。今を嘆いているばかりでは、よりよい明日は訪れないのです。今日を今日として受け入れてこその明日だったのです。

　浴衣姿の同級生の女の子たちとはしゃぎながら、心の中でそんなことを考えていたあの頃の私に、そっと教えてやりたいものです。