坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

リヒテンシュタイン バロックの宴

2012年07月04日 | 展覧会
オーストリアとスイスの間にあるリヒテンシュタイン侯国。500年以上にわたってヨーロッパ美術の名品を収集、第二次大戦の戦火を逃れた奇跡のコレクションは、四半世紀国外での一般公開はされませんでしたが、このほど待望の日本初来日となりました。
国立新美術館5周年記念の秋を飾るのは、侯爵家が誇るバロック美術の饗宴です。
17世紀、イタリア、フランドル(ベルギー)を中心に巻き起こったバロック様式は、ベルギーにおいては、ルーベンスが神話画や宗教画、肖像画において、豪壮華麗な豊かな色彩の作品群を残しました。
バロックは歪んだ真珠を意味し、動感に満ちた構成と荘重な趣に特色がありますが、ルーベンスはその代表的巨匠として、右に出る人はいないでしょう。
肉感的なヌードとマッチョな男性がいかにも肉食系を感じさせる力強さに満ち満ちていて、日本人からすると、ルーベンスの弟子のヴァン・ダイク(本展では美しい貴婦人像が出品されます)の繊細華麗なタッチのほうが体質に合うかもしれません。
ですが、掲載の5歳の愛娘を描いた「クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像」は、パブリックな仕事を大前提に手掛けたルーベンスとはまた異なる、プライベートな父親としての愛情を感じさせる作品です。
愛くるしい表情の中にも、利発そうな瞳が印象的です。
本展では、この作品を含めて10点のルーベンス作品が一挙に来日。約3×4メートルの歴史画「デキウス・ムス」連作などルーペンス・ルームがつくられます。
夏の離宮の様式に基づいたバロックサロンでは、天井画も再現され、工芸品や家具調度品を含めて華麗なバロックの宴へと誘います。

◆リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝/10月3日~12月23日
 /国立新美術館 13年1月5日~3月7日/高知県立美術館

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