青空はどこまでも青く澄み、農場の緑が目にまぶしかった。
停車場へと真っ直ぐに伸びる畑の中の一本道を、フォックスは歩いた。パペトゥーン宙港へと向かうフロートシャトルが、数十分のうちには出発するはずだ。
空気はつめたく、吐く息は朝日を浴びて白くかがやく。道の両脇に植えられた果樹のすき間から、ペッピーたちのものとよく似た、飾り気のない家がいくつか見えていた。
轍ののこる田舎道には、雑草が伸び石ころが転がっている。足元に目を落としながら、フォックスは黙々と歩いた。
突如、脳裏にひらめくものがあり、その足が止まった。
思い出したのだ。握手を交わした後のビビアンの笑顔の中に浮かんでいた、言葉にならない哀しみの色を。
うちの夫をお願いするわ――十数年前、父さんも同じように、ビビアンからその言葉を聞いたのだろうか、あの戸口で?
惑星べノムの峡谷で、無数の砲門に狙いを定められたとき……父さんは本当に不意を突かれたのだろうか。スターフォックスのリーダーとしてペッピーの命を預かっていた父さんが、その命を守るため盾になったのだとしたら?
どうかこの人を死なせないで。無事に帰してやって。
そう言いたくとも言えないもどかしさが、ビビアンの顔貌に浮かんでいたのだとしたら。
愕然として、フォックスは振り返った。
自分はあまりにも重いものを背負ってしまった。そう思った。
苦しいほどに青く、高い空に、氷のような雲がたなびいている。その真下に、人形の家のように小さくなって、ペッピーたちの住家が建っていた。
しばらくの間、フォックスは振り返ったまま立ちつくし、一枚の風景画のようなその景色を眺めていた。