MY研究所

(えむわいけんきゅうじょ) ピアノの先生の日常と、音楽教室や音楽についてのお話。

原典版楽譜

2010年03月10日 | 音楽

楽譜が大好きです。

もとはといえば10年くらい前、
ピアニストとして活躍される今井顕先生の講座で、
版によってこういうところが違う
という話を聞くことができたのですね。

ショパンの曲など『こんなにも』と
驚くほど違っていて、でも確かにしっくりくるなと納得。
(今、エキエル版として出版されているのがそれです)
以来、オリジナル版と校訂版とを比較して
自分の演奏にも、レッスンにも活用しています。

すると、生徒さんの中にもマニアックな子が出てきまして
ここはスラーがついているけれど
流れからして、ノンレガートで弾く方が自然ではないか
などと突っ込んでくれるので
だんだん油断できなくなっていくのですが

           

もともとスラーが付いていたのか、
校訂者が付け足したスラーなのか。


実際、ソナチネアルバムくらいの時代の音楽では
あまりスラーは書かれていません。

例えば、クレメンティのソナチネop.36-1、第一楽章

原典版には、スラーが1本も書かれていないのですよ
アーティキュレーションといえば、
30小節目の右手重音にスタッカートがあるのみ。
強弱はf(フォルテ)とp(ピアノ)だけで
クレッシェンドやディミヌエンドは表記されていないのです。
それは【そういうことをしない】という意味ではなく
弾き手が考えて自由に表現しなさい、ということ。

ですから、演奏していて「ここはスラーが付いているけれど
どうしても切って弾きたくなる」という場所があれば
実は、その感覚の方が正しいかもしれないのです。

最近出版された全音楽譜の
『初版および初期楽譜に基づく校訂版』ソナチネアルバム
オリジナルがどうだったか
そこから考えるとこう弾くべきでなないか、
という考え方で作られているため、
こだわりたい人にはお勧め