楽譜が大好きです。
もとはといえば10年くらい前、
ピアニストとして活躍される今井顕先生の講座で、
「版によってこういうところが違う」
という話を聞くことができたのですね。
ショパンの曲など『こんなにも』と
驚くほど違っていて、でも確かにしっくりくるなと納得。
(今、エキエル版として出版されているのがそれです)
以来、オリジナル版と校訂版とを比較して
自分の演奏にも、レッスンにも活用しています。
すると、生徒さんの中にもマニアックな子が出てきまして
「ここはスラーがついているけれど
流れからして、ノンレガートで弾く方が自然ではないか」
などと突っ込んでくれるので
だんだん油断できなくなっていくのですが。
もともとスラーが付いていたのか、
校訂者が付け足したスラーなのか。
実際、ソナチネアルバムくらいの時代の音楽では
あまりスラーは書かれていません。
例えば、クレメンティのソナチネop.36-1、第一楽章。
原典版には、スラーが1本も書かれていないのですよ。
アーティキュレーションといえば、
30小節目の右手重音にスタッカートがあるのみ。
強弱はf(フォルテ)とp(ピアノ)だけで
クレッシェンドやディミヌエンドは表記されていないのです。
それは【そういうことをしない】という意味ではなく
弾き手が考えて自由に表現しなさい、ということ。
ですから、演奏していて「ここはスラーが付いているけれど
どうしても切って弾きたくなる」という場所があれば
実は、その感覚の方が正しいかもしれないのです。
最近出版された全音楽譜の
『初版および初期楽譜に基づく校訂版』ソナチネアルバムは
オリジナルがどうだったか
そこから考えるとこう弾くべきでなないか、
という考え方で作られているため、
こだわりたい人にはお勧め。