アメリカ Gabriel's Inferno Sylvain Reynard (訳)高里ひろ
早川書房〈リヴィエラ〉から発売された『トワイライト』ファンフィクション第2弾を読みました。以下、あらすじと感想です。
■あらすじ■
大学院に進学した女子学生ジュリアは、親友のハンサムな兄ガブリエルと思いがけない再会を果たした。彼は彼女をダンテ研究へと導いた人物だったが、ジュリアのことをすっかり忘れていて、冷淡で人を寄せつけない“教授”としてしか振る舞わなかった。偶然と誤解ばかりの散々な再会だったものの、それでもやがて、ふたりは惹かれあっていくのだった。教授と学生の禁じられた恋だとしても……。(早川書房Riviera 『インフェルノ(上)』より)
六年前、高校生のジュリアがガブリエルと過ごした、林檎園での一夜。ダンテの恋人ベアトリーチェの話をしてくれた年上の男性とのはじめてのキス。あの優しかったガブリエルは夢の中の天使が目の前にいると気づき、みずからを解放することができるのか。それとも過去の悲劇や教授と学生といういましめに縛られるしかないのか。(早川書房Riviera 『インフェルノ(下)』より)
※※以下ネタバレを含みます※※
☆ 感想 ☆
『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』よりも最速の3日間で上下巻制覇しました(笑)美しいストーリー展開で、(お互いに)言えない秘密、過去を持っているという設定です。話題沸騰だった『フィフティ・シェイズ』に比べると地味な宣伝しかされていない『インフェルノ』。あらすじだけ読んでもまったく話が掴めないと思うのでもう少し詳しくお話します。
主人公のガブリエル・オウエン・エマーソンは、33歳の謎めいていて冷淡な新進気鋭のトロント大学教授。専門はダンテ。教授とは思えぬほど魅力的な外見を備え、オシャレで裕福で、いつも高級ブランド品で身を包んでいる。
ヒロインのジュリア・ミッチェルは、23歳の美しく聡明なトロント大学の修士課程へ入学したばかりの優秀な女子学生。ハーバード大学の修士課程にも合格したが、金銭的な問題で行くことが困難だったため、ガブリエルがいると知りつつ、トロント大学へと入学する。
-6年前、当時高校生だったジュリアは、親友のレイチェル・クラークの家に遊びに行った際、当時ハーヴァード大学博士課程にいたガブリエルのオックスフォード大学時代の写真を見つけて一目惚れする。ある日、クラーク家に招かれた夕食に行くと割れたガラス片と血が渾然一体となっており、レイチェルとその彼氏アーロンは、「ガブリエルがスコット(ガブリエルの義理弟でレイチェルの兄)を病院送りにした。」と泣きながら説明し、ジュリアは唖然としたが、部屋の奥に誰かがいるのに気づき、入ると、そこには夢に見たあのガブリエルがいた。ジュリアはガブリエルを慰め、ガブリエルはジュリアを自宅裏の森にある林檎園へ連れ出す。ガブリエルは「君はまるでベアトリーチェだ」とジュリアを讃え、大学でダンテを専攻していることを話した。ガブリエルは天使のように優しく、そのときジュリアはガブリエルにキスされ、彼だけを待つと決めたが、ガブリエルに「地獄へ探しに来て」と言われてしまう。二人は再会までの6年の間にお互いに一生消えない傷痕と絶望を味わう。
ジュリアが入学してすぐのゼミの後、ガブリエルはジュリアを呼び出したが、ジュリアが部屋へ行くとガブリエルが泣いていたため、メモを残して帰る。ジュリアが家に帰宅すると父から電話があり、レイチェルの母グレースが亡くなったと知らされ、花を贈った。2回目のゼミの後、再びガブリエルに呼び出されたジュリアは、前回来なかったことと家に花を贈ってきたことを責められる。ガブリエルはジュリアを覚えていなかった。ジュリアは傷ついたが、芯が強く、屈しなかった。
ジュリアは初めてのゼミで、隣席したポールというガブリエルとは正反対の紳士的で優しく、正義感のある博士課程の青年と仲良くなる。二人の仲が縮まるにつれ、ガブリエルはなぜかポールに嫉妬し、ジュリアとは運命を感じはじめる。
こんなストーリーです。ダンテ研究をしている二人が、まるでダンテとそのミューズであったベアトリーチェのような運命の再会を果たし、禁断の恋に落ちるというストーリーです。上巻の最初に出てきたガブリエルと謎の女性の関係、1年間行方が分からなくなるほどジュリアが恐れ、傷ついた大学時代の過去など、共に惹かれあいながらも自分の秘密を明かせば、どちらかが去るのではないかと怯えています。しかも、その秘密は明かされそうで明かされず、最後の最後まで秘密のままで…。ところどころヒントはあるんですが、全貌が分かるのは下巻の終盤。複数人の目線でストーリー展開され、男性目線の描写も凄く丁寧に書かれていて、ユーモアも多いです。イタリア・フェレンツェの虜である教授と学生の話なので、宗教、芸術、古典文学、フェレンツェとトロントの美しい景色などが、美しく書かれています。この作品は『Gabriel's』シリーズの第1弾で、(私も確信は持てませんが恐らく)ダンテの『神曲〈地獄篇・煉獄篇・天国篇〉』を土台としていて、今回は〈地獄篇〉です。
ちなみに私が好きなキャラクターはガブリエルの義理の妹レイチェル・クラーク。家族思いで、ちょっとお節介で、彼氏や親友を家族と同じくらい大切にする心優しい彼女が好きです。あと、ガブリエルに色目を使いまくってる博士課程のセクシー系美女クリスタ・ピーターセンも(笑)
完結できそうですが、続編『Gabriel's Rapture(原題)』が発売されるそうなので、楽しみです。