【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

雑誌

2010-02-14 15:02:56 | Weblog
 新聞の将来はずいぶん暗いように思えますが、雑誌はもっと大変かもしれません。雑誌の“価値”は、独自の視点、記事の多様性あるいは深さ、文章のレベルの高さ、記事の実用性、美しいあるいは何かを強く訴える写真、印象強い広告などが上手にパッケージされていることにあると私は思っています。ところが、独自の視点や多様性は今の時代にはネットのニュースやブログで十分間に合ってしまいます。深い記事は「それを専門にしている人」のサイトで得ることができます。さらにネットでは基本的に情報は無料で入手できます。文章のレベルも、一部のブログでは明らかに「プロ」を越えたものが見られます(さすがに低レベルの方が圧倒的に多いのではありますが)。
 だとしたら雑誌の生きる道は? 私個人としては、たとえば外国(それも英語圏以外)の雑誌記事の紹介、なんてのは非常に嬉しいものに感じます(「多様性」のさらなる追及です)。さらに、言語の多さだけではなくて、様々な視点からの記事が一覧できる雑誌だったら、それは読みたくなるでしょう。
 かつては「活字になった」だけでそこに「価値」が生まれました。しかし今は誰でもプリントアウトができる時代。「文字が印刷されている」ことだけでは「価値」は生まれません。グーテンベルグは(印刷の“結果”としての印刷物によるものだけではなくて、「大量複製が可能である」という“概念”を確立することによって)「社会と文化の質」を変えましたが、パソコンとインターネットの普及はかつての印刷機と同じように「文化の質」を変えています(現在完了進行形)。だとしたら「雑誌の価値(セールスポイント)」は何なのか、「変質しつつある現代社会」の中でそれぞれの雑誌が文字通り自分自身の存亡をかけて考え行動しないといけない、しんどい時代のようです。

【ただいま読書中】
クーリエ・ジャポン 2010年3月号」講談社、680円(税込み)
 「レビューを書いてくれ」と送(贈)られてきた雑誌です。読者のターゲットはどのへんなんでしょう。30代サラリーマン、英語はある程度できるけれどネイティブの人と議論ができるほどではない、といった人たちかな? 世界中1500以上のメディアから記事をセレクトして翻訳していることがウリとなっているようです。
 いろいろ新鮮な視点の記事がありますが、特に目についたのは「ミシュラン覆面調査員とランチを食べてみた」(ニューヨーカー)でした。ニューヨークに住むミシュランガイドの覆面調査員が、接客業・ホテル経営・調理に関する視覚が必要で、出張だらけで一年に200日以上昼も夜も外食をし、しかも親にも自分の職業を言ってはならない、なんてシビアな生活をしているなんてインサイト情報が知らされます。また、この記事が出るきっかけが、ミシュランガイドが北米市場で苦戦している(「ニューヨーク・タイムズ」や、口コミ情報の「ザガット・サーベイ」に負けている)ため、キャンペーン戦略の一環としてミシュランが「覆面調査員の秘密保持原則」を曲げた、ということまで明らかにされます。覆面調査員のお仕事も大変ですが、出版のお仕事も大変なんですねえ。ただ、ミシュランの評価がきわめて「デジタル的」なのは気になりました。調査員が言う「……ねばならない」の列挙・「料理の科学性」の重視・「一貫性と正確さ」へのこだわり……料理は「完璧」か「完璧でないか」のどちらかしかない、という態度は、たしかに「評価」をするときにはたいへん便利でしょうが、「料理を楽しむ」ときには鼻につくんじゃないかな、なんてことを思ってしまったのです。そういえば日本版ミシュランガイドも発売されていますが、売れ行きはどうなんでしょう?
 特集「『貧困大国』の真実」はなかなかインパクトがあります。アメリカの、フードスタンプ・民間医療保険の問題・教育問題・刑務所ビジネスなどを、「ニューヨーク・タイムズ」「タイム」「ワシントン・ポスト」「ル・モンド」「ロサンゼルス・タイムズ」「ポートフォリオ」などの記事で再構成してあるのですが、それぞれの問題はもちろんばらばらには知っていましたが、こうして一覧できるようにしてあると「アメリカという国の一面」がみごとに浮き彫りになり、さらには「日本はどうなのか」にまで思いが及びます。これは責任編集者(堤未果さん)のお手柄でしょう。


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