Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

有明海

2023年10月29日 08時23分49秒 | エッセイ


10月28日6時38分 有明海に日が昇る。
朱色から黄を増していき、さざ波に向かって自らの航跡を描く。
佐賀、福岡、長崎、熊本の4県に囲まれ、天草灘から深く入り込んだ内湾──
その自然が一瞬一瞬の感動を演出する。


誰やら得体のしれない人?が有明海を眺めている


満潮時と干潮時の潮位差は最大6㍍に達し、
干潮時に現出する干潟は全国の干潟面積の約4割を占める。
言うまでもなく日本最大の干潟であり、
その泥にはたくさんの栄養分を含んでいて
ムツゴロウ、ワラスボ、ハゼクチ、シオマネキなど
多くの生き物を育んでいる。



有明海はまた日本の約4割を占めるノリの生産地だ。
地下水や多数の河川によって豊富な栄養分が流れ込んでおり、
良質なノリを生産しているのだ。
27日に養殖ノリの種付けが解禁され、養殖シーズンが始まった。
月明かりの中、その作業に忙しい。

          




こんにちは 大谷翔平君

2023年10月21日 12時47分53秒 | エッセイ


歩いても15分ほどの近さにららぽーと福岡がある。
ここの入り口すぐ近くに青果物コーナーがあり、毎週土曜日は特売日だ。
もともとこの地には青果物卸市場があったのだが、
それが移転し、跡地にららぽーとが建設されたのだ。
そういう経緯があるからなのか、土曜日の価格は男の僕でさえ分かるほど
ものすごく安くなる。

と、あってオープンと同時に大勢の人が押しかけ、
あれやこれやと放り込むようにカゴに入れる。
当然レジも大混雑で、支払いを待つ長い列が二重三重に出来、
これに結構時間がかかるのだ。
そこで僕が早めに列に並ぶ。いわゆる〝並び屋〟だ。
その間、妻は買い物に専念する役割分担作戦を取る。
そうすると早くにレジを済ますことが出来る、そういう算段だ。



買い物を済ませた妻も列に合流した。
僕らの前には2、3歳ほどの男の子の手を引いたパパが並んでいる。
「パパ、ジャガイモが食べたい」と言えば、「とっておいで」と言い、
「ついでに玉ねぎも持ってきて」「はーい」と交わして、パパのカゴに入れる。
「もう一つ、ミカンも」とパパが言えば、
少し戸惑い気味にミカンが並ぶ棚の所へ行き、「パパ、これ?」「それそれ」となり、
坊やがミカン一袋を持ってくる。ここは、パパが〝並び屋〟さん?
何とも微笑ましい。

少しよそ見した、その坊やが後ろの列の妻の手を握ってしまった。
すぐに、この手はパパではないと分かったようだ。
妻の顔を見るなり、パパの長くて大きな脚に隠れ込んだ。
そして、照れたようにこちらをちらちらと覗き見る。
こちらも「パパと間違えたんだね」と笑顔を返す。
そんなやり取りをしていた時だった。
          

「えっ、大谷翔平君?」──振り返ったパパ。
そんなことがあるはずはない。
でも黒の野球帽を目深にかぶったパパ、その顔は大谷翔平君だった。
いや、そっくりだった。
すぐに「大谷君によく似ていますね」と声をかけた。
にこっとするその顔は、まさに大谷翔平君ではないか。
パパは照れくさそうに「会社でもよく言われます」「また、この子も
『○○君のパパ、大谷翔平にそっくりだね』と言われるそうです」と話す。
そうだろう、そうだろう。
その話し方にしてもテレビで見る大谷君みたいではないか。

レジを済ませ、坊やに「さようなら」と言うと、
大谷パパが「はい、ありがとうございます」と代わって返事してくれた。
その謙虚な佇まいがまた大谷翔平君……なんだよな。



ひと踏ん張り

2023年10月18日 06時00分00秒 | エッセイ


日本の先行きが少々心細い。
国の経済規模や豊かさを表す指標であるGDPは、
米国に次ぎ世界第2位の地位を中国に譲り渡して久しいが、
間もなくドイツにも抜かれ第4位に、
さらにインドにも抜かれるのではないかと言われている。
そうすると第5位に転落することになる。



また日本の平均収入は443万円だが、
これはОECD加盟国38カ国中21位で、
先進国と呼ばれるのにギリギリのところにいる。
しかも韓国にも抜かれ、
「アジアでいちばん年収の高い国」の座を明け渡しているのだ。

なんとも気の重くなる数々のデータであるが、
さらに基礎科学研究力の長期低落が追い打ちをかける。
それを象徴するように、2年連続でノーベル賞受賞を逃した。
日本は2000年以降、20人が受賞しており、
まさに受賞ラッシュだった。
特に08年に4人が受賞して以降は、
21年まで2年連続で受賞を逃したことはなかったのだ。
それが去年も今年も受賞者の名を聞くことはなかった。
実は、数年前から受賞者自身から
「このままでは日本から受賞者が出なくなるのではないか」と
研究開発力の低落を指摘する声が出ていたが、
それが現実化してきていると言えよう。

このため政府は10兆円規模の基金を設け、
世界と競える大学を育てるとの方針を打ち出し、
東北大を初の認定候補とした。
24年度に100億円規模の支援をするという。
こうした策が実り、再びノーベル賞受賞者が続出するかどうか。
期待したいものだ。

           

日本はまったくダメな国になってしまったのか。
ネガティブな話が多い中で、「いや、まだまだ」と思わせることもある。
例えば対外純資産だ。
2022年末時点で日本の企業や個人、それに政府が
海外に持つ資産、つまり対外資産は1338兆2364億円に達する。
対して海外投資家などが日本に持つ資産を示す
対外負債は919兆6079億円で、
対外資産から対外負債を差し引いたものが対外純資産となる。
これが418兆6285億円で過去最高となった。
加えれば、32年連続で世界最大の対外純資産を持つ国なのである。

こんな話を聞くといささか誇らしい気になる。
おまけに海外から多くの観光客がやって来て
口々に「日本はすばらしい国」と言ってくれる。
正すべきところを正していけば、まだまだ日本は捨てたものではない。
子や孫たちに輝かしい未来のある日本を渡したいものだ。


100m競歩

2023年10月12日 06時00分00秒 | エッセイ


ちょっと調べてみたら、効果的なウォーキングは
「1日30分、時速5km、週3、4回程度が理想」だという。
そして、「時速7kmで3分間歩き、次の3分間は普通の速度で歩く。
これを繰り返すとより効果的」とも書いている。
これをインターバルウォーキングと言うのだそうだが、いやはやだ。
ウォーキングをするのは、何とか健康を維持したいからに他ならないが、
このインターバルウォーキングは80過ぎの爺さんにはとても無理だ。
それで足腰を痛めたのでは何にもならない。



今日のウォーキングの結果をスマホで見ると、
「43分間に歩いた距離は2.67km」だった。
およそ時速4kmの速さで歩いたことになる。
歩数はおよそ4200歩だった。
コロナ禍前は、だいたい60分、8000歩歩いていたから
年を重ねるごとに歩く速さもうんと落ちてきたわけだ。
時速7kmなんて……。

「いけない、いけない」と思いつつも悲観もしていない。
まだ、歩こうと思えば時速4km程度なら
1時間以上は休むことなく歩けるはずだ。
腰にわずかばかりの古傷の名残がありはするが、
膝はもちろん脚は全く問題ない。
もちろん、杖の世話になってもいない。
「何の世話にもならず歩けることがいちばん」と割り切っている。
とにかく無理をせず、マイペースが大事だ。



そして、歩く時の姿勢。
イラストが示すように「顎を軽く引き前方を見る」「背筋を伸ばし胸を張る」
「腕はリズミカルに振る」「足先は真っ直ぐ自然に振り出す」
「歩幅はやや大きく」などとある。
5、6m先を行く妻が振り返り、
「ほれ、胸を張り、腕を振って…」と声をかけるのはいつものことだ。
さらにこの日は「3分間速足で歩きましょう」と促す。
つられて早く歩く。これでせいぜい時速5km程度だろう。
特に息切れすることもなく歩けた。
するとムラムラときた。
目の前には100mほど道が延びている。
「よし、もっと速く7kmほどの速さで歩いてみよう」そう思い立った。
時速7kmの速さなんて分かりはしないが、とにかく精一杯速く歩く。
あの競歩のように腰を振りながら。
無事ゴール。ハァハァハァ……100m競歩の激しい動悸が続く。




タクシー難民

2023年10月08日 06時00分00秒 | エッセイ


こんなことがあった。
ある日の夜、12時は過ぎていたと思うが突然体調がおかしくなった。
そこでタクシーを呼ぶことにしたのが、
これが何件かけてもつかまらなかったのである。
苦痛は増すばかりで、やむなく救急車を頼み事なきを得たのだった。

「福岡市は日本一タクシーを拾いにくい都市」と言われている。
街中でタクシーを拾うのは至難の業になっているようで、
〝タクシー難民〟なる言葉も生まれているという。
タクシーに乗ってみると分かるが、運転手は比較的高齢の人が多い。
伴って高齢化による退職が増えているのが運転手不足の最大の原因で、
さらにコロナ禍により感染を恐れて
退職者が相次いだことも拍車をかけたようだ。

         

運転手不足はタクシー業界だけでない。
運送業界はさらに深刻だし、バス業界にしてもそうだ。
「2024問題」というのがある。
自動車運転業務の時間外労働(残業時間)を年間960時間までに
規制(現在は規制なし)しようというもので来年4月1日から実施される。
働き方改革の一つであるが、これにより運送会社の利益はもちろん、
トラック運転手の給与も減少すると予測され、
それによって運転手の離職・不足=輸送量の減少に
つながることが懸念されている。
物流が滞ることになれば、日々の生活のみならず
日本の経済活動そのものにも大きな影響を与えるに違いなく、
業界は対応に追われている。
バス保有台数が日本一の西日本鉄道が10月から
福岡県内の路線バス32路線の減便・廃止に踏み切ったのも、
経営効率化ということもあろうが、最大の理由はやはり運転手不足である。

 

医療・福祉、特に介護業、それに建設業や旅館・ホテルの宿泊業、
さらには小売業などさまざまな業界もそうだし、
人口減少、少子高齢化の中で、人手不足は深刻化していくだろう。 
それは日本経済に大きな影響を及ぼすに違いない。

日本経済云々という話の中で恐縮だが、81歳になる当方も
「そろそろ免許を返納しなければならないだろうな」と思いつつ、
それに多少のためらいがある。
たとえば、しばしばの病院通い。
現在は自分で運転して通院しているが、ほぼ50分かかる。
バスなど公共交通機関を使うとまず1時間は間違いない。
そのバスも運行便数は減る一方。
ではタクシーかといえば、まずうまくつかまえられるかどうか。
おまけに料金もバカにならない。
そんなことを考えていると、
テレビでは今日もまた高齢者の自動車事故を報じている。