22日の日曜日、市原悦子さんの講演会を見に行きました。
聴きにいったというのが正解でしょうが、『市原悦子、お話と朗読』です。
会場は、国府町の『さくらホール』です。
400席くらいあるでしょうか、全席指定の満杯でした。
大盛況です。
チケットは完売だったので、駐車場の混雑も予想できたのでしょう、駐車場整理員の方も、シルバー人材からの派遣だと思いますが、10人ちかくいました。
お客は中高年のご婦人が目立ちましたが、ファンの方も多いのでしょう、市原さんが登場したときから、大盛り上がりになりました。
会場がどよめくのです。
そんななかで、自分の半生を語り始めました。
戦時中の少女時代、疎開先での、腕白な振る舞い等です。
そうとう活発な少女だったようで、手下を連れての、男の子顔負けの活躍ぶりを語られました。
それから、高校での演劇部でのこと。
恩師である演劇部の顧問とのふれあいなど、独占欲が強くて、自己主張も強くて、強烈な個性を発揮していたようです。
そして、銀行への就職が決まっていたのですが、不安神経症を患い、就職を断念し、俳優座の研究生になったそうです。
俳優座にはいるための試験では、何も特技はなかったのですが、ピアノ伴奏に合わせて自由に踊るという科目で完全に解放されて、それが評価されたのだろうと、おっしゃっていました。
基本、超前向きな方です。
そして、演劇では、稽古が好きで、ずうっと稽古をし続けていたい、といつも思っていたそうです。
「稽古ができれば、本番はいらない」、と言って、江守徹さんに叱られた、と仰いました。
ある意味、長嶋茂雄さん的、においがします。
ですが、稽古の重要性を、何回も説いていました。
舞台では失敗ばかりしていましたが、稽古を積んでいるから乗りきれたと。
毎回、”ここまで遣ったんだから”、という気持ちで本番に臨んでいたそうです。
さて、御歳、80歳の朗読です。
まず驚いたのは、ダイナミックレンジの広さです。
音程も、男の低い声から子供の高い声まで出てきます。
3オクターブほどあるのではないでしょうか。
柔らかい口調から、床を踏みしめての、ほとばしる声まで出てきます。
プロ中のプロなのですから、当たり前なのかもしれませんが、圧倒されました。
グリム童話は怖いのです、と仰った、怖い話を朗読されましたが、階段を一段づつ踏みしめて上がっていく場面とか、大きな箱の重い蓋を開ける仕草とか、見えるようでした。
朗読なのに・・・
動きと視線が具体的というか、読む間をうまく使い、聴く側のイメージを喚起させているのですね。
ややこしい表現になりましたが、引きこまれていくのです。
というのも、この講演会に行ったのには、妻が読み聞かせをしているので、そのためもあって行きました。
私はどちらかというと、それほど興味があったわけではありませんでした。
会場の中でも、比較的冷静に観ていた方です。
最初、登場なさったとき、会場がどよめいたので、まるでロックスターの登場ですよ、それが異様に思えたくらいです。
それほで引いて見ていたのですが、いつのまにか、引きこまれてしまっていたのです。
市原悦子ワールドに。
しかも年齢を思えば、この人は、言葉は悪いですが、バケモノか! といったくらいの衝撃を覚えました。
未だ現役、あれもしたいこれもしたい、と常に前を向いていらっしゃいます。
健さんに似ていますね。
健さんも、80歳の時に、「幸せになりたい」、と仰っていましたから。
素晴らしい方でした。
観られて、幸せでした。
感謝しております。
余談ですが・・・
『さくらホール』は、演劇に使用できないかと見たのですが、反響版が常時設置されているようで、演劇公演には向いていないのでは、と思ってしまいました。
どうなんでしょうか・・・