○FRANK ZAPPA「Lumpy Money - an FZ audio documentary 」(2009)
やっと「Lumpy Money」のことを書ける状況になった。物理的にも精神的にも。
まずは概要説明から。
この3枚組CDは、1967年に録音され翌68年にリリースされた二つのアルバム「Lumpy Gravy」(あえて訳せば「塊だらけの肉汁」)と、「We're Only In It For The Money」(「俺たちは金のためだけに音楽業界にいる」)に関する音源を集めたものである。
ただし、現在の公式音源(いわゆるFZ承認マスター)はこの3枚組に含まれていないので、マニア向け商品といえばいえる。少なくとも二つのアルバムを聴いたことのある人向けだろう。
ちなみに、発売が当初予定より遅れてしまっているのでなんだけれども、いちおう発売40周年記念盤という位置づけになる。
おおもとの二つのアルバムをご存じない方のために簡単に解説しておくと、「Lumpy Gravy」(以下「ランピー」と呼ぶ)は、もともとザッパがキャピトルレコードの金でセッションミュージシャン(ピート・ジョリーとかシェリー・マンとかトミー・テデスコとかライル・リッツとか)を使って録音し、リリースしようとした"オーケストラ"アルバムである。
ザッパが率いるバンド、マザーズ・オブ・インヴェンションはMGM/Verveと契約していたので、本来は他のレーベルでアルバムを作ることはできないはずだが、「作曲家」としてならいいだろうという判断のもとにキャピトルで制作されたものだ。録音が完了し発売直前までいったものの、結局はMGM/Verveからクレームがついて、キャピトルでの発売は中止となった。(4トラックまたは8トラックテープカートリッジでは発売されたとの話も。)
しかし完全なお蔵入りにはならず、最終的にはキャピトル音源にさらに手を加えたものが、ザッパのソロアルバムとしてMGM/Verveからリリースされた。
これに対し「We're Only In It For The Money」(以下「マネー」と呼ぶ)は、マザーズ・オブ・インヴェンション名義で制作されたアルバムである。
内容は、変調されたヴォーカルで歌われる辛辣な歌詞のポップソングと、ミュージックコンクレート風の奇妙なノイズがブレンドされた、悪意と皮肉と揶揄の渦巻くアンチ・フラワーポップ。ジャケットデザインが、ビートルズ「サージェント・ペパーズ」のパロディになっていることでも有名な作品だ。
続いて「Lumpy Money」各ディスクの詳細。
(全体のトラックリストは、前にも紹介したここを参照してもらうとよい。)
【ディスク1】
ザッパがキャピトルからリリースしようとしたオリジナル「ランピー」と、オリジナルモノヴァージョンの「マネー」が収録されている。
キャピトル版「ランピー」は、MGM版「ランピー」にある冒頭のサーフギター的インスト部分や「ピアノの中の人」の会話などがない分、"オーケストラ"音楽としての全体像が把握しやすいものになっている。めまぐるしく移り変わる曲調も、映画のサウンドトラックみたいなものだと思えば楽しめる。MGM版「ランピー」よりも上品な手触りなのは、「キャピトル」というレーベルのカラーだろうか。(というより、キャピトルが好んで起用していたスタジオミュージシャンのカラーか。)
ところで、以前からZappateersなどの音源トレードサイトで出回っていたキャピトル版「ランピー」と、今回の3枚組に収録されたキャピトル版「ランピー」が違うものだったのにはちょっとびっくりした。あの「キングコング」パートで始まる「ランピー」がオリジナルだとすっかり思い込んでいたので。使われている音源はほぼ同じだが、曲構成(パートの並び方)が異なっているのだ。じゃあ、いったいあれはどの段階のものだったんだろう。
と思っていたら、すでにこんな解説&比較表があった。さすがIINK。ついてけねえよ。
オリジナルモノ版の「マネー」は、「This is NOT a fold-down mix from stereo to Mono」(これはステレオを単純にモノ変換したものではありません)との但し書きがあるとおり、現在の公式盤(1995リマスター。ステレオ)とはいくつかの点でミックス違いがある。
その詳細を知るにはここを見るといいと思う。緑色で書かれているのが、モノヴァージョンに関する記述だ。
このモノ版は、音質がいいせいか新鮮に聴けた。ザッパの数あるアルバムの中では割と苦手な方だったのだが(だって、ロック的ダイナミズムはほとんどないし)、ストレンジなポップソング集としてのおもしろさがダイレクトに伝わってくる。
思ったより長くなってしまった。疲れたのでひとまずここまで。ディスク2以降については次回書きます。
これが音源トレードサイトで出回っていたキャピトル版「ランピー」の冒頭部分。
やっと、Lumpy Money のお話になりましたね。これ、聞いていて飽きません。
ご紹介のサイトへ行き、久しぶりに Quintessential Media Playerがあってよかったと思いました。多謝。
「マネー」の中で「God, I see God」とか言ってたんでしたっけ。
「Lumpy Money」は楽しいですね。こんなに楽しいとは思いませんでした。音がいいせいかもしれません。
ちなみにメディアプレーヤを使われたサイトってどれですか?
Lumpy Gravyはある程度ザッパを聞き込んだ人には、楽しめるアルバムだと思います。最初に聞くには難しいアルバムだとは思いますけど。
以前、少し話題にしたパーディのビートルズ参加説はおそらくこういう事だと思います。
ロバート・スティグウッドが作った映画SGT.Peppersのサントラ用にビートルズ曲を演奏したという話が、間違って現在まで伝わっているような気がします。プロデュースはマーティンだし、確か20数曲録音しているはずなので。
中山本より説得力あると思うのですが、どうでしょう?
確かに「ランピー」と「マネー」をある程度聴きこんでいないと楽しめないアルバムかもしれませんね。でも聴きこんでいる人間にはたまらなくおもしろいです、やっぱり。
バーナード・パーディは、RSOサージェントで演奏していたんですね。
うーん。でもちょっと時代が空きすぎてませんか。十年以上離れてますから。
パーディ氏がいつごろからそのホラを吹き始めたか、ということが確認できると傍証にはなるんですが…。
ウィンドウズのメディア・プレイヤーではありません。
バーナード・パーディーは、かなり眉唾ですが、アラン・ホワイトとかクレム・カッティーニがビートルズで叩いているのはあると思います。
ロスでいつも録音していたストーンズはかなり怪しいし。
なるほどマネーFAQの音源サンプルでしたか。
再生できるプレーヤ持ってない…。
ビートルズ、アンディ・ホワイト(「Love Me Do」)以外にセッションプレーヤがドラムを担当した記録は公式にはないですよね。ストーンズはあるでしょうけど。セッションマンではないですが、ケニー・ジョーンズが叩いたのがたしかありましたね。