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映画「まともな男 NICHTS PASSIERT 」まともな男と思うのは本人だけ

2019-10-09 16:19:53 | 映画

                

 世界のどこの国でも10代、15歳から20歳までの女の子には手を焼かされる。それに巻き込まれて挙句の果てに相手の車を崖から突き落とすという悲劇に突き落とされるサラリーマンのトーマス(デーヴィト・シュトリーゾフ)。

 もともと酒癖の悪いトーマス。泥酔して同僚と喧嘩、その勢いで車を相手の車にぶち当てた。これは妻マルティナ(マリン・エッゲルト)にも内緒でセラピストに「酒もやめ、まともな男になった」と自ら宣言した。

 ティーンエイジャーの娘を持つトーマス夫妻。結婚して20年程、ともに40代を迎えて倦怠期の真っ最中ではあるがハンドルを握るトーマスの目には快晴の冬空、青い空がまぶしい。スキー場に向かうトーマスは、上司(ベアト・マテティ)の娘ザラ(アニーナ・ヴァルト)をピックアップするために待合場所へ。妻も娘ジェニー(ロッテ・ベッカー)も不満。家族水入らずの休暇に他人なんてというわけ。妻は小説を執筆中で静かな環境を求めていた。それでも宮仕えの哀しさ、上司のご意向には逆らえない。

 着いた山荘は雪に囲まれ電気がつかない。トーマスは管理人の家までまた車を走らせた。管理人の親父は息子セヴェリン(マックス・フーバッヒャー)を修理に向かわせる。何度もこの山荘に来るトーマスの娘ジェニーとは顔なじみ。電気も点いて温かい光が夕食の席を満たす。ジェニーが「セヴェリンに誘われているから町に行きたい」という。母親のマルティナは、強く反対する。ザラが「うちの親は気にしないわ」とまで言う。

 「母さんがダメといってるからダメ」とトーマス。この言葉にマルティナが反応。「いつも私が悪者ね。じゃあ、あなたが決めなさいよ」(子供の前で夫婦喧嘩をするというどこにでもある風景ではあるが、やめたほうがいいと外から見ると思う。この場面に限らず脚本がいい。トーマスがOKを出すまでの会話の流れが自然だった。)トーマスは、OKを出した。(映画だからこういうことになるのだろうが、現実にはティーンエイジャーを酒の席に出すべきではないと思うが)

 約束の12時に店の前に着いてみるとわが娘のジェニーだけがいる。ザラが見当たらない。探し回った挙句見つけたのは、公衆電話の床にうずくまっているザラだった。飲みすぎて苦しいんだろうかと事情を聞く。「セヴェリンにやめてと言ったのに無理やりセックスされた」なんてこった! ザラは内緒にしてくれと言う。トーマスも、許可した責任もあり、しかも上司の娘となれば内密に事が進めが何も起こらなかったことになる。

 ところが十代の女の子は、思いが猫の目のように変わる。警察に届けるのは嫌だと言っていたのが、届けたいと言ってくる。それはトーマスにとってもまずいことなので、翻意させるようやんわりと執拗な警察の事情聴取などを話す。その効果があったのか分からないが、ザラは説明内容を書き出してから届けることにすると言った。

 ホッと胸をなでおろすトーマス。ところがこのレイプ事件がどんどんと悪い方向に向かう。結局、前記の車を崖から突き落とすことになる。小雪のちらつく寒い夜という状況から、警察は運転ミスによる転落と決めつけるだろう。たった一つの秘密が悲劇を招く。帰りの車の中は、何事も起こらなかったかのように、それぞれの世界を漂っているようだ。

 ドイツ語の原題「NICHTS PASSIERT(何も起こらなかった)」は、やや皮肉な気がする。トーマスの心には、重い十字架を背負わされてしまったからだ。2015年制作

     
     

監督
ミヒャ・レヴィンスキー1972年12月ドイツ、カッセル生まれ。

キャスト
デーヴィト・シュトリーゾフ1973年10月日東ドイツ生まれ。

マレン・エッゲルト1974年1月西ドイツ、ハンブルグ生まれ。

アニーナ・ヴァルト出自未詳 

ロッテ・ベッカー1998年12月生まれ。

マックス・フーバッヒャー1993年スイス生まれ。

シュテファヌ・メーダー出自未詳 

ベアト・マテティ1972年6月スイス生まれ。


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