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映画「リトル・アクシデント~闇に埋もれた真実」

2018-12-28 10:12:01 | 映画

           
 サブタイトルの「闇に埋もれた真実」ではなく、「闇に埋もれかけた真実」が正しい。アメリカの小さな炭鉱町。二つの真実が明らかにされるまでの物語。

 山あいにたたずむこの町の風景を見ていると、日本の山村が連想された。特に私が連想したのは、大平宿(おおだいらじゅく)だ。長野県飯田市から県道8号線大平峠を経由して嬬恋宿方面への大平街道の途中にある大平宿。ずいぶん昔に行った所。1970年に集団移転して廃村となる。そのうらぶれた風景は、この映画の炭鉱町に重なる。

 この炭鉱町の住人は、トランプ大統領の支持層をなしているのかもしれない。いわゆるプアホワイトの階層だ。石炭採掘会社の幹部の住む家と、炭鉱夫の住む家の違いは貧富の差を如実に現わしている。

 炭鉱で事故が発生し、ただ一人の生き残りがエイモス(ボイド・ホルブルック)だった。当初彼は多くを語りたがらなかった。それは仲間内からのプレッシャーだった。事故が会社の落ち度だと分かれば、倒産に追い込まれ仕事を失うと言う恐怖を共有しているからだった。

 その事故で父親を亡くした高校生のオーウェン(ジェイコブ・ロフランド)は生意気盛り。町の少年たちとつるむために家のビールを持ち出したりする。しかし、この少年たちの親は鉱山会社の幹部で、炭鉱夫の家族を貧しい下層階級の白人に言う「トレーラー・ゴミ」と呼んで蔑んでいる。

 ビル・ドイル(ジョシュ・ルーカス)とダイアン・ドイル(エリザベス・バンクス)夫妻の息子JT(トラヴィス・トープ)にも影響を与えオーウェンにも必要以上に邪険に扱う。そんな折、炭鉱事故を指して「お前の親父は人殺しだ」とオーウェンがJTに言ったのがきっかけで喧嘩になり、逃げるオーウェン、追うJT。
 木陰に身を潜めたオーウェンが、追ってくるJTに石を投げつける。それをよけた弾みで足元の石に頭を打ち即死した。オーウェンは、死体を隠した。

 エイモスとオーウェン、大人と少年の出会いから、行方不明のJTに関する事実。エイモスの知る会社側の責任。映画は、エイモスの事情聴取を受けるシーン、オーウェンの自白によって行われるJTの捜索シーンで終わる。

 うらぶれた風景の中に纏わりつく出口のない生活。真実を明らかにすれば明るい出口があるのだろうか。裏切り者のエイモス。殺人者のオーウェン。彼らのこれからは、この町を出て行くしか出口がない気がする。暗くさびしいお話だった。

 この映画を監督したのは、サラ・コランジェロ。ニューヨーク大学大学院映画科で学び、この映画は2014年1月サンダンス映画祭でプレミア公開された。日本では劇場未公開。
  
  
  
  
監督
サラ・コランジェロ出自未詳

キャスト
エリザベス・バンクス1974年2月マサチューセッツ州ピッツフィールド生まれ。
ボイド・ホルブルック1981年9月ケンタッキー州生まれ。
ジェイコブ・ロフランド1996年7月アーカンソー州生まれ。
ジョシュ・ルーカス1971年6月アーカンソー州リトルロック生まれ。
トラヴィス・トープ出自未詳
コメント
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