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映画 クリント・イーストウッド監督の「ピアノ・ブルース(03)」

2005-10-25 12:49:27 | 映画
 2003年にアメリカでブルース生誕100年を記念して、マーティン・スコセッシの製作総指揮により音楽好きの監督たちが、アメリカ音楽のルーツとも言うべきブルースをそれぞれの思い入れでドキュメンタリー“THE BLUES Movie Project”7本を作り、これはそのうちの1本である。

 クリント・イーストウッドはチャリー・パーカーの伝記映画「バード」を始め、アカデミー受賞作品「ミリオンダラー・ベイビー」にも作曲していると聞く。「トゥルー・クライム」という小品のエンドクレジットにかぶせて、ダイアナ・クラールが歌う「Why should I care」も共同で作ったという。スローテンポでメロディラインが美しい。ジャズに造詣が深いことでも有名である。

 この作品のほかにヴィム・ヴェンダース監督「ソウル・オブ・マン(03)」マーティン・スコセッシ監督「フィール・ライク・ゴーイング・ホーム(03」マイク・フィギス監督「レッド、ホワイト&ブルース(03)」リチャード・ピアース監督「ロード・トゥ・メンフィス(03)」チャールズ・バーネット監督「デビルズ・ファイヤー(03)」マーク・レヴィン監督「ゴッドファーザー&サン(03)」がある。

 イーストウッドのナレーションを引用すると“20世紀初め、ピアノは米国音楽のルーツに入り込みブルースの主楽器となった。ピアノ・ブルースは、酒場や伐採場や売春宿や教会でも演奏され、ミシシッピ、ルイジアナ、アラバマ、テキサスの一帯からニューオーリンズを経てシカゴハーレムへと急速に拡大、1920年代から現在までピアノ・ブルースは米国音楽の確かな礎であり続けている。ブギ・ウギ、ジャンプ・ブルース、ストライド、ゴスペル・ブルース、リズム&ブルースを始めあらゆるジャズに取り入れられてきた。これはピアノ・ブルースに深い足跡を残す演奏家の物語だ。ピアノ・ブルースはジャズを包んできた。酒場のピアノ弾きの孤独もデューク・エリントンの洗練もビ・バップの熱気もブルースはすべての土台だ。ブルースとジャズは、真の意味での米国芸術だと思う。おそらく唯一の独自の芸術形式だ。”

 耳を澄まして演奏に聴き入るとよく分かる。天才カントリー・シンガーのハンク・ウィリアムスやエルビス・プレスリーの曲に色濃く反映されている。アメリカン・ポップス全体にも影響を与えているはずだ。この作品に出てくるレイ・チャールズやジェイ・マクシャン、ドクター・ジョンなどの話を聞くと子供のころからブルースに囲まれた環境だったことが分かる。レイ・チャールズなどは、カントリー音楽もよく聞いていたという。レイ・チャールズの音楽的感性はより鋭敏だったこともうなずける。

 また、アート・テイタムについて“鍵盤は88鍵で指は10本なのに二人分に聞こえた”といって、その豊かな音量と表現力に驚嘆していた。現在アート・テイタムに近い演奏家は、オスカー・ピーターソンだそうだ。そしてこの映画は、イーストウッドが愛国の歌もブルースになると言って、レイ・チャールズが“America the Beautiful”を歌って終わる。ちなみにこの映画は、劇場未公開である。
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