(イラスト未挿入)
そんなある日、唐突に政府の「司法船」が島にやってきて、トムさんが逮捕されて連れて行かれた。
それは、先日処刑された"海賊王"ゴールド・ロジャーの海賊船「オーロ・ジャンクソン号」を製造した事を、世界的凶悪犯への加担とみなし、造船技師トムを、エニエス・ロビーに連行し、死刑にするというものであった。
裁判長は「本来、船大工が誰に船を売ろうとも罪ではないが、"海賊王"に限っては特例だ。
奴の海賊行為に肩入れしたもの、全てが危険人物とみなされる、よって死刑」と淡々と申し渡した。
それがおかしな法であれ、法によって決められた事。
トムさんは、それについては何の反論もせず、別の事を訴えだした。
「わしは今、海上の線路をドンと走る蒸気機関外車船(バドルシップ)を構想している。
今や廃れたこの島の原因が、ままならぬ交易だとして、今や荒んだこの町の人の心が、沈み行く島を不安に思う気持ちだとして、"海列車"の開通は、必ずウォーターセブンの救いになる!!!」
周りのざわめきも、連行しようとする海兵にも構わずトムは訴えを続け、裁判長はその話に聞き入った。
「客も物資も船も運び、天候に左右されることなく、誰でも自由に海を渡れるようになる。
海の線路は水面の少し下をゆらゆら揺れて、波には決してさからわない。
列車は、ロープを手繰るように、線路を道しるべにするだけだ、これでログは必要なくなる。
列車と線路と外車の間に、魚達の嫌がる不協和音を出す仕組みをいれると、海王類もよってこない。
「セント・ポプラ」「ブッチ」「サン・ファルド」の島と結べば交易で産業は潤滑に発展する。」
裁判長は身を乗り出して質問した。
「そこにエニエス・ロビーを繋ぐことは?」
トムはどんと即答した。 「可能だ」
「この技術がドンとし完成すれば、世界中の島々の交流がかわる。"海列車"は、ウォーターセブンの希望だ!!!」
死刑宣告された罪人の言葉に、裁判長も兵士も町の人々も呆然と聞き込み、辺りは水を打ったように静かだった。
裁判長の言葉だけが司法船の中で響いた。
「何年かかる?」
「10年」
裁判長の小槌が、判決の音頭をとった。
「では、創ってみせよ!!!!造船技師トムに、"海列車"開発期間として10年の執行猶予を言い渡す!!!!」
「トムズワーカーズ」に戻ってきたトムさんは、何事もなかったかのようにいつものように大笑いし、皆は無事の帰還を祝福した。
フランキーを除いては。
フランキーは怒り心頭だった。
ゴールド・ロジャーの船は「グランドライン」を一周した世界でただ一隻のスゲェ船で、それを創ったトムさんが死刑なんておかしい。
トムさんの会社がこんな橋の下にあるのも、海賊王の事で、街を追い出されたことも、世界一の大工がこんな仕打ちにあっていることも、全てが許せなかった。
トムさんはわかっていた。
カティはいつもまっすぐで、"怒り"という形でしか現せない程不器用だけど、仕事に誇りを持ち、トムや会社を愛してくれていることを。
トムさんは、そんなカティをいつものように大笑いした。
怒りのもって行き場のないカティは、カエルの「ヨコヅナ」相手にクロールを教えることで気を紛らわしていた。
"海列車"の設計図ができた頃、当初はカティはトムさん達を全く手伝わなかった。
一人で、「バトル・フランキー号」を作って、トムさんの気をひこうとしていた。
だが、作業が佳境に入って来た頃には、カティも「トムズワーカーズ」の職人として汗水垂らして働くようになっていた。
それはたった3人で進めるにはあまりに過酷な作業で、何度も失敗し、何度も頓挫し、何度も危険な目に遭い、多忙の中でいつしか10年という月日がたっていた。
その10年のうちにの衰退は激化し、人々の生活の貧困さは過酷を極め、絶望と死と怒りと涙に島は埋め尽くされるようになっていた。
あの判決から12年後、とうとう"海列車"が完成した。
この日初めて、閉ざされ、廃れてゆく絶望の町から、悩める人々を乗せた『海列車パッシング・トム』が大海原を渡って走り出した。
そんなある日、唐突に政府の「司法船」が島にやってきて、トムさんが逮捕されて連れて行かれた。
それは、先日処刑された"海賊王"ゴールド・ロジャーの海賊船「オーロ・ジャンクソン号」を製造した事を、世界的凶悪犯への加担とみなし、造船技師トムを、エニエス・ロビーに連行し、死刑にするというものであった。
裁判長は「本来、船大工が誰に船を売ろうとも罪ではないが、"海賊王"に限っては特例だ。
奴の海賊行為に肩入れしたもの、全てが危険人物とみなされる、よって死刑」と淡々と申し渡した。
それがおかしな法であれ、法によって決められた事。
トムさんは、それについては何の反論もせず、別の事を訴えだした。
「わしは今、海上の線路をドンと走る蒸気機関外車船(バドルシップ)を構想している。
今や廃れたこの島の原因が、ままならぬ交易だとして、今や荒んだこの町の人の心が、沈み行く島を不安に思う気持ちだとして、"海列車"の開通は、必ずウォーターセブンの救いになる!!!」
周りのざわめきも、連行しようとする海兵にも構わずトムは訴えを続け、裁判長はその話に聞き入った。
「客も物資も船も運び、天候に左右されることなく、誰でも自由に海を渡れるようになる。
海の線路は水面の少し下をゆらゆら揺れて、波には決してさからわない。
列車は、ロープを手繰るように、線路を道しるべにするだけだ、これでログは必要なくなる。
列車と線路と外車の間に、魚達の嫌がる不協和音を出す仕組みをいれると、海王類もよってこない。
「セント・ポプラ」「ブッチ」「サン・ファルド」の島と結べば交易で産業は潤滑に発展する。」
裁判長は身を乗り出して質問した。
「そこにエニエス・ロビーを繋ぐことは?」
トムはどんと即答した。 「可能だ」
「この技術がドンとし完成すれば、世界中の島々の交流がかわる。"海列車"は、ウォーターセブンの希望だ!!!」
死刑宣告された罪人の言葉に、裁判長も兵士も町の人々も呆然と聞き込み、辺りは水を打ったように静かだった。
裁判長の言葉だけが司法船の中で響いた。
「何年かかる?」
「10年」
裁判長の小槌が、判決の音頭をとった。
「では、創ってみせよ!!!!造船技師トムに、"海列車"開発期間として10年の執行猶予を言い渡す!!!!」
「トムズワーカーズ」に戻ってきたトムさんは、何事もなかったかのようにいつものように大笑いし、皆は無事の帰還を祝福した。
フランキーを除いては。
フランキーは怒り心頭だった。
ゴールド・ロジャーの船は「グランドライン」を一周した世界でただ一隻のスゲェ船で、それを創ったトムさんが死刑なんておかしい。
トムさんの会社がこんな橋の下にあるのも、海賊王の事で、街を追い出されたことも、世界一の大工がこんな仕打ちにあっていることも、全てが許せなかった。
トムさんはわかっていた。
カティはいつもまっすぐで、"怒り"という形でしか現せない程不器用だけど、仕事に誇りを持ち、トムや会社を愛してくれていることを。
トムさんは、そんなカティをいつものように大笑いした。
怒りのもって行き場のないカティは、カエルの「ヨコヅナ」相手にクロールを教えることで気を紛らわしていた。
"海列車"の設計図ができた頃、当初はカティはトムさん達を全く手伝わなかった。
一人で、「バトル・フランキー号」を作って、トムさんの気をひこうとしていた。
だが、作業が佳境に入って来た頃には、カティも「トムズワーカーズ」の職人として汗水垂らして働くようになっていた。
それはたった3人で進めるにはあまりに過酷な作業で、何度も失敗し、何度も頓挫し、何度も危険な目に遭い、多忙の中でいつしか10年という月日がたっていた。
その10年のうちにの衰退は激化し、人々の生活の貧困さは過酷を極め、絶望と死と怒りと涙に島は埋め尽くされるようになっていた。
あの判決から12年後、とうとう"海列車"が完成した。
この日初めて、閉ざされ、廃れてゆく絶望の町から、悩める人々を乗せた『海列車パッシング・トム』が大海原を渡って走り出した。