まんがパウチ (レビュー・ネタバレ)

漫画の絵とストーリーを、真空パウチするように書きとめました。
【ファイアパンチ】【カラダ探し】など

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ファイアパンチ 69話「テナ、父親を殺したのは俺だよ」

2018年01月03日 | ファイアパンチ
倒れた鉄仮面の男をかばうように、アグニの前に立ち塞がったテナに、アグニは「どけよ」と言った。
ルナを襲った鉄仮面の男の息の根を止めなければならない。

テナは微動だにせずに、アグニに言う。
「ファイアパンチを殺そうと思ったんだよ・・・。でも今の・・・今のアンタはアグニだろ!誰かを殺したら、ファイアパンチから戻れなくなるよ・・・」



アグニとファイアパンチの事に言及するテナに、アグニは表情を変える事なく「テナに俺の何がわかるんだよ」と突き放した答えをした。一緒に暮らしてはいたが、テナ達にアグニの素性など、まして心の内などわかるわけがない、と思っていた。

だが、テナは気づいていた。
「おまえさ、寒くないのに服着てただろ!味なんてわかんないくせにメシ食って、眠れないのにずっと目瞑ってて・・・」
これにはアグニは少しびっくりして「なんで、それを・・・」とつぶやくと、テナは強い口調で言った。
「十年一緒に生きたからだよ!!」




その言葉に言葉を失ったアグニに、テナはまっすぐにアグニを見て頼んだ。
「無理してでも、イアと・・・・私達の為にアグニでいてくれよ」
だけど、アグニは鉄仮面を殴ろうと振り上げた右手の拳を突き上げたまま、「ルナを、ルナを助けに行かなくちゃ・・・」と答えた。ルナもまた共に暮らした者だし、兄妹で、特別な存在だ。

テナは、アグニがルナを何よりも大事に思っている事はわかっていた。それを承知で頼んでいるのだ。
「ルナも・・・ルナは・・・べヘムドルグのユダなんだろ?私は見たことあるから知ってんだ。でもそれでよかった・・・。だって、よかっただろ?なんも悪い事なんかなかった。
でもルナを助けに行くのはやめろ。あいつらは、ルナが欲しくて襲ってきたんだ。ルナを助けに行けば、アンタは人を殺すことになるだろ」


テナは、少し言葉を止めてアグニの反応を見たが、アグニは拳を突き上げたまま固まっていて、何も答えない。


テナは、ヘタリとアグニの前で脱力し、下をむいて、声を少し震わせて言った。
「ルナがいなくたって・・・私達がいるじゃんか・・。もう拳をおろせよ、アグニ・・・。アンタ以外は全員、アンタの幸せを願っているのに・・・・」
その言葉に、アグニはハッとした。誰かが自分の幸せを願って・・いる?






アグニはゆっくりと、振り上げていた拳を下し、握りしめた自分の拳を見て目を閉じた。
そもそもアグニの幸せって何なのだろう、何がどうなればアグニは幸せなのか、アグニにもわからない。
ずっと誰かの為に生きていた、誰かが幸せでいる事を自分の生きる糧としていて、自分が自分の為に生きるという事をアグニは子供の頃からしてはいなかった。願われても、本人が自分の幸せがわからないのだ。

握りしめた自分の拳に、誰かがコツンと握りこぶしを当てた気がした。
---これは約束を忘れないって意味だ----

その声が聞こえた瞬間、アグニの脳裏にあのシーンが甦る。
幸せを願ってやまなかった大切な人が業火に燃やされて死ぬ、その瞬間。



それから走馬燈のように、アグニの脳裏に思い起こされる数々の"拳の約束"のシーン。
記憶を失くし、無垢な少女となっ新生ルナとの生活の日々で交わしてきた、拳の約束。
子供だった頃、本当のルナと交わした拳の約束。

その一つ一つは、どれも日常だった。
「釣りに行く時はルナも一緒に連れていくこと」とか、「兄さんもごはんをちゃんと食べる事」とか、「洗濯物を干すときはシワを伸ばすこと」とか…生活の中で、何気なく拳の約束を交わしてきた。
あの日・・・、本物のルナと最後に交わした言葉も拳の約束だった。

ルナの声がする。
(暖かい時の話をする兄さんは、いつも楽しそう。私・・その顔がすごく好きです、ねぇ兄さん)



記憶の中で、「兄さん」と呼ぶルナの顔が燃えていく。
(いつか外が暖かくなったら、一緒に世界を見てまわりましょう?)



本当は「生きて、兄さん」との約束だったが、アグニにとっては同じことだ。


アグニは目を開けて、自分の拳を見て・・・そしてほんの少し笑った。
この拳は沢山の約束をして・・・、沢山の人殺しをしてきた拳だ。
今更人を殺さなかった頃には戻れないし、別の何者かにもなれやしない。




決意したアグニは立ちあがると、「テナ、お前の父親を殺したのは俺だよ、お前の家族も大切な人も全員燃やした。俺はアグニじゃない。俺はファイアパンチだ」と言った。




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