まんがパウチ (レビュー・ネタバレ)

漫画の絵とストーリーを、真空パウチするように書きとめました。
【ファイアパンチ】【カラダ探し】など

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進撃の巨人 19巻 78話 「光臨」

2016年10月31日 | 進撃の巨人
『鎧の巨人』の叫び声に反応して、『獣の巨人』が投げた1つの樽が宙を待った。
リヴァイ、エルヴィンは「クッ・・・やられた」と臍を噛んだが、シガンシナ区を助けに行くことは出来ない。

樽の存在にいち早く気付いたアルミンが、『鎧の巨人』にトドメを打とうとする兵達に指示した。
「ダメです!!!ライナーから離れてください!!上から超大型巨人が降ってきます!!!ここは丸ごと吹き飛びます!!!」
ライナーから逃げながら、アルミンはこの距離では爆発から逃げ切ることが出来ない事を悟って覚悟した。





樽の中では、ベルトルトが必死で『鎧の巨人』化しているはずのライナーを探しながら、爆発に適した位置を探っていた。
今だ、ここから地面を吹き飛ばし・・・と思った時だった。
ベルトルトの目に、うなじをこじ開けられ、ライナー本体が引きずり出されていのが見えた。
ベルトルトは樽から出ると、「ライナアアアアア!!!!」と叫んで、ライナーの元へとその姿のまま駆けつけた。






ライナーに気付かず巨人化していたなら、ライナー本体がその爆風で吹き飛んでしまうところだった。


ベルトルトは、目を見開いたままライナーに近づくと、そっと心臓の音を確認した。
その手に、ライナーのドクンドクンという鼓動が伝わってきて、彼がまだ生きていることがわかって、少しほっとした。

これは、自身の脳の神経を、全身の神経網に移し、さらに神経網を通じて巨人の脳を利用することで、記憶などの脳内情報を失わずに済む方法だが、これは"最後の手段"。
「まさか本当にやるなんて・・・、君がここまで追いつめらるなんてな・・・ライナー。
一つ頼みがある。デキルなら少しだけ体を動かしてくれ。出来なかったら・・・すまない、覚悟を決めてくれ。
終わらせてくる」
と言って、ベルトルトは立ち上がった。







以前なら、何があっても、ライナーの命を最優先していたベルトルトが、親友の命を犠牲にしてでも、それを失ってでもこの戦いに終止符を打つ覚悟を決めた。もう、ベルトルトに守るものも、捨てるものもない。ただこの戦いに勝つだけ。


ベルトルトの作戦中断で、ひとまずは命拾いをしたハンジ・リヴァイ104期班は、今から来るであろう超大型巨人に備えた。
「何にせよ、我々の目標が目の前に飛び込んで来たんだ。好都合だと言っていいだろう」とハンジはこの状況を"好都合"だと言ってみせた。



だが、ベルトルトのこの覚悟を調査兵団は知らない。


ベルトルトは、まっすぐにエレンの巨人と、調査兵団達がいる方に近づいてきた。
ハンジが全員に指示を出して、迎え撃とうとしたその直前、アルミンが飛び出した。
ライナーの時には出来なかった"交渉"をする気だった。



「ベルトルト、話をしよう!!」と呼びかけるアルミンに、ベルトルトは「話をしたら、全員死んでくれるか!?僕達の要求はわずか二つ!!エレンの引渡しと!!壁中人類の死滅!!これが嘘偽りのない現実だ!アルミン!!
もうすべては決まったことだ!!!」




「誰がそんな事を決めたの!?」というアルミンの問いに、ベルトルトは小さく「・・・僕だ」とつぶやいてから叫んだ。
「僕が決めた!!君たちの人生はここで終わりだ!!」

アルミンは、アニの話を持ち出したが、覚悟を決めたベルトルトにそんな話は通用せず、ベルトルトはアルミンへと近付いて行った。
「アニの話をすれば、大人しくて気の弱いベルトルトなら取り乱して、言いくるめて隙をつけると思ったのか?
だが本命はどちらでもなく、ただの時間稼ぎだ。僕の周りを兵士で囲い、ライナーを殺しに行かせるための無駄話。
僕にはわかる。そうやって震えているうちは、何も出来やしない」
ときっぱりと言った。


交渉にでたはずのアルミンが押されている。
「そこまでわかっていて、何で話に乗ったの?」と聞くアルミンに「確認したかった。君達を前にした途端、また泣き言を言い出すんじゃないかってね・・・でも、もう大丈夫みたいだ。
うん。君たちは大切な仲間だし、ちゃんと殺そうと思ってる」
とまっすぐにアルミンを見て答えた。
その言葉に、ぶれがない事は、アルミンにも見てとれた。



交渉でベルトルトの心境はくつ返せない。なら、せめて・・・。
アルミンは「それは僕達が"悪魔の末裔"だから?」と質問すると「いや、君達は誰も悪くないし、悪魔なんかじゃないよ。でも全員死ななきゃいけない。もうダメなんだ」



その時、背後からミカサがベルトルトの首を狙ったが、ベルトルトはミカサのスピードに反応し、互角に戦った。
耳を斬られても一瞬もひるまず、ミカサを蹴り飛ばすと同時にアルミンを殺しにかかる。
その反応や判断は、今までのベルトルトからは想像もできない行動だった。













だがミカサもアルミンを守る為に必死だ。
ベルトルトは、ミカサとの一対一での戦いを辞めて、ライナーの方へと飛んだ。
それを追おうとするアルミンをミカサは止めた。
「彼がいつ巨人になるかわからない」

アルミンは、ベルトルトはライナーが剥き出しの今は、ライナーの命を護る為に巨人化しないと考えたが、ミカサは否定的だった。「・・・彼には何か考えがあるように見えた・・・というか、あれが本当のベルトルトなの?まるで別人に見えた」


ライナーのトドメに打ちに出たハンジ班は、『鎧の巨人』を見て愕然とする。
『鎧の巨人』が仰向けになっているのだ。これではうなじも、その中の本体にも手を出すことが出来ない・・・。
ベルトルトがこの状態を知れば、巨人化する・・・。



ベルトルト自身も、今の自分が別人のような心境である事を自覚た。
一旦はライナーを助けに行ったのだが、飛びながらその考えを改めた。



(すごく変な気分だ、恐怖もあまり感じていないし、周りがよく見える。きっとどんな結果になっても受け入れられる気がする。
そうだ・・・誰もわるくない・・・。全部仕方なかったんだ。
だって、世界はこんなにも残酷じゃないか。)





ベルトルトは、ライナーの状態を確認することなく、ライナーの近くで超大型巨人と化した。
自分の爆風でライナーが死ぬことがあっても、それは残酷な現実の一部なのだ。
ライナーだって覚悟はついているはず。







爆風は、ライナーの近くにいたハンジ班を燃やしながら吹き上げた。
エレンの巨人の近くにいた104期は、かろうじて生き残ったようだが、ハンジさん達の消息は絶望的だった。

その爆弾を落としたかのような爆風は、壁の向こうのリヴァイ達からもはっきりと見えた。



覚悟を決めたベルトルト、再生を続けるライナー。
それに対抗できるのは、エレンの巨人と104期の5人だけとなっていた。









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進撃の巨人 19巻 77話-2 「彼らが見た世界----俺達が殺したんだ」

2016年10月31日 | 進撃の巨人
ベルトルトは、『獣の巨人』化したジーク戦士長のすぐ近く、『四足歩行型巨人』の荷台の樽の中にその身を隠して、ライナーからの合図を待っていた。

だが、ライナー巨人化後、いまだに合図がない事に不安が増幅していく。
奇襲が成功していない事はわかる。
成功していないなら合図はまだか、そっちはまだ無事なのか、ライナー・・・。





ベルトルトの不安は的中していた。
ライナーは、『鎧の巨人』の中から引きずり出されて、その頭は、104期同期達の手で吹き飛ばされて無残な姿をさらしていた。



同期を殺したライナーは、同期に殺された。
そして、ジャン、コニー、サシャ、アルミンはあの時ライナーが味わった気持ちを、味わうこととなる。
仕方がなかった、こうするより他に仕方がなかった・・・そんな事は頭でわかっていても、心はついてこなかった。
泣き崩れるコニーとサシャを、鼓舞しようとするジャンの目にも涙が溜まっていた。
「立て!まだ終わっちゃいねぇぞ!!まだライナーを殺しただけだ!!泣くな!!俺達が殺したんだぞ!?」



アルミンは、顔を蒼くして放心したように突っ立って、頭のないライナーを見ていた。
ミカサがアルミンの肩を叩き、やっと自分に言い聞かせるように言葉を発した。
「・・・交渉できる余地なんてなかった・・・。何せ僕達は圧倒的に情報が不足している側だし、巨人化できる人間を捕まえて拘束できる力もない・・・力がなければ、こうするしかないじゃないか・・・これは仕方なかったんだ・・・」



ギリギリのところで理性を維持しようとしているアルミンに、ミカサはかける言葉がなかった。


それはエレンも同じだった。
エレンは巨人のうなじの中で、放心したように、目の前の光景を見ていた。
わかっていたはずで、これを望んでいたはずだった・・・・。



ハンジさんが「まだだぞ!!装備を整えて次に備えろ!!」と号令をかけるも、104期はそれに反応できないでいた。



その時、そんな落ち込みを吹き飛ばすように、『鋼の鎧』が強烈な叫び声を挙げた。
同時に、頭のないライナーの体が煙を挙げて再生しだした。
まだ、死んでいなかったのだ!!!









リヴァイ兵長が、ライナーを殺しきれなかったのも、この自分達の知らない「巨人の力」のせいだったのだ。
うなじと頭を吹き飛ばせば死ぬ、と思っていたのが甘かったのだ。

ハンジ班、リヴァイ班の104期兵が反応するより前に、壁の向こうの『獣の巨人』がその声に反応し、『四足歩行型巨人』の背に積んでいた樽を、叫び声の場所まで投げ飛ばした。
樽の中のベルトルトは、ずっと、ひたすらこの声を待っていた。
ライナーは生きている!!そして自分の助けを待っている!!!!






宙を飛ぶ1つの樽を、リヴァイ、エルヴィン、アルミンの3人は見逃さなかった。
そして、その樽がこの局面を窮地に追い込むことを、一瞬で感知した。










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進撃の巨人 19巻 77話-1 「彼らが見た世界----ライナーとベルトルトの記憶」

2016年10月31日 | 進撃の巨人
ライナーが『雷槍』の攻撃を浴びている頃、ベルトルトは『四足歩行の巨人』の背の樽の中で、ライナーからの合図を固唾を飲んで待っていた。


思い出すのは、自分達が同期を殺した時の事・・・。



ライナーとベルトルトは、巨人襲来のシガンシナ区に調査兵団の訓練終わりの新兵として派遣された時。
二人は、穴から離れた家屋の屋根の上で、エレンが巨人化して壁の穴を巨石を積んで塞ごうとしている様子を見ていた。
「あれで穴を塞ぐなんて・・・無茶な作戦だ。エレンが喰われるかもしれない」
[もしそうなれば、何もわからないままだ]
「ああ、いざとなったら俺の巨人で何とかするしかなさそうだ」
[でも・・・作戦が成功したら、せっかく開けた穴が塞がれてしまう]
「構わねぇさ、俺達がこの5年間ずっと探していた手掛かりを、ようやく見つける事ができたんだ」


その無防備な会話を、マルコに聞かれてしまったのだ。
「一体・・・何の話をしてるんだ?『俺の巨人』って何だよライナー。『せっかく開けた穴』って言ったのか?ベルトルト?」






 
ライナーは焦って、「今の話は冗談だ・・・」と言うのが精一杯だった。
マルコも「こんな状況じゃバカ言いたくなる気持ちもわからなくないけど、作戦に集中しろよ!」と言って飛び立ったが、その顔はひきつっていた。

マルコは頭がいい。
飛びながら、エレンが巨人化したという事は、人間は巨人になれるという事だ。
突然現われて突然消える超大型巨人の正体も恐らく人間・・・ということになる。
つまり、どこかに人の姿をした敵の巨人がいるって事で・・・それは・・・・。

マルコは、この時点ですでに核心に迫っていた。この情報を誰かに伝えていたなら、人類の未来は違ったかも知れない。
だが、マルコはそこでライナーに捕まり、取り押さえられてしまう。
「マルコ・・・、お前は察しがいいからダメなんだよ」



マルコが人を呼ぼうとした時、そこにアニが現われた。
マルコは目に涙を溜めて「アニ!!助けてくれ!!!」と同期を頼った。



「どういう事?」と聞くアニに、マルコが「ライナー達がおかしいんだ!」と答えたとき、ほぼ同時にライナーがその質問に答えていた。 「俺達の会話を聞かれた。生かしてはおけない」

マルコは混乱したが、ライナーはお構いなしに話し続けた。
「アニ!!マルコの立体機動装置を外せ!!お前、さっきコニーを命張って助けてたよな?なぜそんな危険を冒した!?この悪の民族に情が移っちまったからか!?違うってんなら、ここで証明してみせろよ!!」

アニは、だくだくと汗をかき、顔面蒼白になって拒んだが、ライナーは許さなかった。
「お前と!!お前の帰りを待つ親父が!!穢れた民族と違うって言うんなら!!今すぐ証明しろ!!!」


4人のすぐ近くに巨人が迫ってきていた。
今、立体軌道装置を外されたなら、マルコは巨人のエサになる。

アニは、悲壮な顔でマルコの立体機動装置を外した。
マルコは悲鳴に近い声で叫び続けた。
「やめろおおおおお!!!アニ!?やめてくれよ!!なんで?なんで?なんで?なんでだよ!!!?」その問いにアニは何も答えられなかったが、ライナーが言った。
「それでこそ戦士だ。アニ・・・よくやった」




マルコはそこで悟った。そうか・・・アニもライナー、ベルトルト同様、巨人側の人間なのだ。
3人はマルコを屋根の上に残して急いで飛び立ち、入れ替わりに巨人がマルコに手を伸ばした。




3人は、マルコが巨人に喰われていくのを少し離れた所から見ていた。
泣き叫び、抵抗し、それも虚しくペキン!と骨が噛み砕かれる乾いた音と共に、マルコが死んだ。



3人は、覚悟してきたはずだった。
それでも、3人は目に涙を溜め、そうした張本人であるライナーが「・・・おい、何でマルコが・・・喰われてる・・」と茫然とつぶやいた。

ベルトルトは、ゾワッと全身を悪寒が走るのを覚えた。
共に訓練兵として辛い訓練を受け、語り明かし、笑いあった友を殺すということがどういう事かを知った。
だけど・・・、それでも・・・・。




--------------
次の記憶は、すぐ最近のものだった。
壁の上で調査兵団らが来るのを、ライナー、ベルトルト、そしてジーク戦士長の3人で待っていた時の記憶。
ライナーとベルトルトは、エレンから座標を奪還するより先に、囚われている可能性の高いアニの救出を優先したかったが、ジーク戦士長はそれを許さなかった。

二人にとっては、リヴァイ兵長よりジーク戦士長の方が畏れる存在だった。
ジーク戦士長が、アニの事にこだわる二人に「へぇー、まだ決意が固まっていないってこと?そーですか。じゃあこの間決定したことは一体なんだったのでしょうか?もう一度やってもいいんだぞライナー?
ただし、次お前がまけたら、『鎧』は他の戦士に譲ってもらう。」
との言葉に、二人の心臓はドクンドクンと音を立てて、冷や汗が流れた。



「じゃあしっかりしようよ。目標は一つだろ、ここで『座標』を奪還し、この呪われた歴史に終止符を打つ。
・・・もう終わらせよう。終わりにしたいんだよ、俺達で」




ジーク戦士長のその言葉に、二人は同意だった。
そしてベルトルトは決心した。
「わかりました。アニの事は一旦頭から外します。こんな地獄はもう僕達だけで十分だ。もう終わらせましょう」



友人を裏切り、殺したかったわけではない。
何も知らない人々に、地獄を味わわせたかったわけではない。
好きな人を、手の届かない敵地に放っておきたいわけじゃない。
仕方がなかったんだ、全部、仕方のない事だった。
こんな思いは、もう誰にも味わわせたくはない。
それを全部終わりにしてしまえるのなら・・・。


その時、偵察に出ていた『四足歩行型巨人』が、調査兵団が近づいていることを知らせに来た。
いざ、決戦の火蓋が開く。3人は熱いコーヒーで乾杯した。
「勇敢なる戦士達よ、ここで決着をつけ、我々の使命を果たそうじゃないか」




それから、焚き火やコーヒーセットを壁から下に投げ捨てて、各自調査兵団を待ち構える準備に入った。
後で、アルミンが見つけた3つの鉄のカップはその時使用された物だった。



ジーク戦士長と別れて二人きりになると、ライナーはベルトルトに語りかけた。
「ベルトルト、散々言ってきたことだが・・・俺とはこれから離れた位置につくわけだ。少しは自分で考えて行動しろよ。俺の指示を仰ぐばかりじゃなくてな。
本当は誰よりも高い能力を持っているはずなのに、肝心な所で人任せだ。正直今まで頼りにならなかったぜ」


ベルトルトは、小さく「・・・わかっているよ」と答えた。

ライナーはその答えを聞いてから「今まではな。終わらせるんだろ?ここで」と聞いた。
ベルトルトは、ライナーの言いたい事がわかっていた。
「そうさ、ここで勝って終わらせてやる」と力強く答えた、ベルトルトの顔には決意がみなぎっていて、ライナーは満足そうだった。




ライナーは、その後の事に言及した。
「その調子で愛しのアニの元まで頑張ろうぜ、アニだって絶対絶命のピンチに駆けつける野郎を王子様だと誤認するはずだ。
そして・・・クリスタだ。ユミルとの約束だ。絶対に救い出してやるぞ」
と言って、自分の心臓をドンと叩いた。
心臓を捧げる・・。それは調査兵団の習わしだった。

ライナーは、クリスタ救出はユミルの為だと言ったが、自分の為だった。



二人が別れる地点で、ライナーは前を向いたまま、後ろにいるベルトルトの背をドンと叩いた。
「じゃあな、頼んだぞ相棒」

ベルトルトと前を向いたまま、ライナーの背をドンと叩いた。
「任せろ」



戦いに絶対はない。
いくら絶対的な力や武器を有し、作戦を練っても、何が起きるかはわからない。
不安がまったくないわけではないが、こ最終局面を生きて乗り越える事を互いに信じてライナーとベルトルトは別れた。
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進撃の巨人 19巻 76話「雷槍」

2016年10月30日 | 進撃の巨人
【ウォール・マリア内門内】
ウォール・マリアの内門内では、クラース班、マレーネ班、ディルク班で馬を守るよう命じられていた。
そこに、2~4m級の小型の巨人が強襲してくる。

今の調査兵団は、付け焼刃のように集めた、巨人の姿すら見たことのない、立体軌道装置をろくに使えない新兵が多い。
中央憲兵から調査兵団へ移ってきたマルロも、その一人だった。

初めて見る、自分達を喰おうとする巨人の姿に、マルロ達新兵は呆然と立ち尽くした。
数少ない先輩調査兵団員達は、馬と同時に新兵達を守るのに飛び回った。
だが、それでも、あちらこちらで負傷者を出している。

リヴァイも、3~4m級の駆除に忙しく飛び回っていた。
これでは、隙を見て『獣の巨人』に到達しそうもない。
リヴァイが現場の兵達に叫んだ。



「小せぇのをさっさと片付けろ!!『獣の巨人』が動く前にだ!!損害は許さん!!一人も死ぬな!!!」
その後「クソ・・・うんざりだ、弱ェ奴はすぐ死ぬ、雑魚はそこにいろ」とつぶやいて、壁の上を見上げた。そこには、1人の男が立って街を見下ろし続けていた。








壁の上のエルヴィンの目にも、この苦戦は見えていた。
今の調査兵団がここまで弱体化したのは、兵達が皆、死んでいったからだ。
それだけの損害がなければ、決してここまで辿り着けなかった。

ここに辿り着く・・・。
エルヴィンはザックレーの言葉を思い出した。
(君は死にたくなかったのだよ、私と同様に人類の命運よりも個人を優先させるほど・・・)

エルヴィンはその言葉を否定しなかった。
訓練兵時代、父と自分の仮説をよく仲間に話していた。調査兵団に入ってそれを証明してみせる、と。
だが、調査兵団に入ってからは、その事は一切口にしなくなった。
気付いていたのだ。
皆が人類の為に命を捧げているのに、自分だけが自分の夢の為に戦っていることに。



いつしか私は部下を従えるようになり、仲間を鼓舞した。「人類の為に心臓を捧げよ」と。
そうやって、仲間を騙し、自分を騙し、築き上げた屍の山の上に私は立っている。
死んでいった者達が、私に問いかける。










・・・それでも、脳裏にちらつくのは、地下室のこと。
壁の外から来た男、グリシャ・イェーガーが残した”世界の真相”に。
この作戦が失敗しても・・・死ぬ前に、地下室に行けるかもしれない。

エルヴィンは、地下室のあるシガンシナ区を眺めた。





【シガンシナ区】
シガンシナ区では『鎧の巨人』と『エレンの巨人』が戦っている最中だった。
硬質化を身に着けたエレンと、巨人の経験の長いライナーは互角の戦いで決着がつきそうもない。

その戦いを、ハンジ率いるハンジ班と、ミカサ達104期兵のリヴァイ班は、取り囲むようにしながら見守っていた。
まだだ・・・まだ。エレンが”絶好の機会”を作るその瞬間まで待たねばならない。




新兵器”雷槍”には、使い方に条件が必要だからだ。
ハンジは体制変革後、それまで中央憲兵が隠し持っていた新技術を導入して、対『鋼の巨人用』の武器を開発していた。
今までは、巨人化したエレンが戦うのを、指を咥えて見ているしか成すすべがなかったが、人類は壁を塞ぐと同時に、壁の破壊者であるライナーとベルトルトを殺さねばならないのだ。

新武器のその威力は、まるで雷が落ちたようであるから「雷槍(らいそう)」と呼ぶ。

ただその威力ゆえ、撃った本人にも危険が及んでしまう。
それを回避する為には、巨人に「雷槍」を打ち込んだ後ピンを抜いて、早急に巨人から離れる必要がある。
したがって「雷槍」を使える条件は、目標の周囲に十分な立体物がある時と、エレンが目標から離れている時に限られる。
その機会がくるまでは、エレンを信じて待つしかない。

長い戦いの中、エレンがライナーに関節技を決めて投げ飛ばした。
ライナーは、自分一人の力では、エレンをかじり取る事は出来ないと諦めて次の手段にでようとした時だった。

「今だ!!」とのハンジの掛け声と共に、兵士達が『鎧の巨人』に向かって飛び出した。
だが、ライナーは全身硬質化で覆われた体に、兵士など取るに足らないと思っていた。
単に、相手にしなかっただけなのか、それとも同期達に手を出せなかったのか、とにかく『鋼の巨人』は兵士達を払いのけようとはしなかった。



だが『鋼の巨人』の目の前に躍り出たハンジとミカサの手には、ライナーの見たことのない武器が装着されてある。
あっ!と思った時には、もう二人は『鋼の巨人』の両目に「雷槍」を撃ち込んでピンを引いていた。










やった・・・・!!!ハンジ恵心の武器が全身硬質化した巨人に効いたのだ!!

今、ここで決めるしかない!!!
『鋼の巨人』のうなじをめがけてジャン、コニー、サシャを含む別の兵達が一斉に9本の雷槍を撃ちこみ、一斉にピンを引くと、
その爆発によって、硬質化の鎧がはがれ落ちた。







ハンジが叫ぶ!「もう一度だ!!雷槍を撃ち込んでとどめを刺せ!!」だが、その声にミカサ以外の104期達の顔が歪んだ。
「ライナー・・・」とつぶやくサシャに、ジャンが怒鳴りつけた。
「お前ら!!こうなる覚悟は済ませたはずだろ!!やるぞ!!!」それはジャン自身に向けた言葉でもあった。ここでもしなければ、自分が奮い立たない。








『鋼の巨人』のはがれおちた鎧の隙間に、本体であるライナーめがけて、幾本もの「雷槍」が撃ち込まれて爆発した。
ライナーの「待って・・・」の声は誰にも届かない。





















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進撃の巨人 19巻 75話 「二つの戦局」

2016年10月29日 | 進撃の巨人
ウォール・ローゼ領の内門の壁の上の調査兵団を取り囲むように、『獣の巨人』を中心として大量の巨人が半円状に発生した。




背後の「シガンシナ区」からは、鎧の巨人が壁を登ってくる。
完全に敵の策中にはまっているが、敵が何らかの策を練って待ち構えているのは折り込み済みだった。ただ、予想より敵の規模は大きかったが。
エルヴィンは総員に、『鎧の巨人』との衝突を回避するにだけ指示を出し、敵の動きを見て動かなかった。


敵の中に1体、『四足歩行型の巨人』がいて、その背に荷物を運ぶ蔵が取り付けられているのが見えた。
・・と、いうことはこいつは先程一斉に発生したのではなく、その前から居たことになり、敵の「斥候」と考えられる。
調査兵団の接近にいち早く気付き、ライナー達をそれを伝えたとするなら・・・
エルヴィンは、リヴァイとアルミンに「あの『四足歩行型の巨人』は、知性を持った巨人だ」と伝えた。



アルミンは”荷物”にひっかかった。
巨人は何を準備したのだろう・・・?

静かな均衡を破ったのは、『獣の巨人』だった。
その長すぎる手を大きく振り上げて、地面を叩きつけたと同時に、2~3m級の小型の巨人群が一斉に壁に向かって走り出した。






エルヴィンは、敵の行動を分析していく。
ウトガルド城の襲撃同様、奴がまず狙うのは馬。
敵の主目的はエレンの奪取であるが、その為にまず、我々から撤退の選択肢を奪うはず。
巨人の領域であるここ、ウォール・マリア領から我々が馬なしで帰還する術はない。
馬さえ殺してしまえば、退路を閉鎖するだけで、我々の補給線は絶たれる。
持久戦に持ち込み、調査兵団の飢餓を待てば、敵はリスクを冒すことなく、弱ったエレンを奪い去ることが出来る。
大型巨人が、隊列を組んで動かないのは、それ自体が檻の役割を担うものだと確信できる。



今、何より危惧すべきは、成すすべなく馬を殺されること・・・ならば。

エルヴィンはここまで考えて指示を出した。
「ディレク班、マレーネ班は内門のクラース班と共に馬を死守せよ!!
リヴァイ班とハンジ班は、『鎧の巨人』を仕留めよ!!
各班とも”雷槍(らいそう)”を使用し、なんとしてでも目的を果たせ!!
今この時!!この一戦に!!人類存続のすべてが懸かっている!!!
今一度、人類に心臓を捧げよ!!!」




その指示を合図に、兵士達は一斉に飛び出した。
だが、エルヴィンはリヴァイとアルミンを呼び止めた。
「リヴァイ、お前だけはこっちだ。馬を守りつつ、隙を見て奴を討ち取れ。『獣の巨人』はお前にしか託せない」
リヴァイは「・・・了解した。さっき鎧のガキ一匹殺せなかった失態は・・・そいつの首で埋め合わせるとしよう」と言って飛び出して行った。

それからアルミンに向き直って「アルミン、『鎧の巨人』用に作戦がある。人類の命運を分ける戦局の一つ・・・その現場指揮はハンジと君に背負ってもらうぞ」と言って、作戦を伝授した。



アルミンは、エルヴィン団長からの作戦を持って、シガンシナ区のリヴァイ班・ハンジ班と合流した。


エルヴィンは指揮官として、一人壁の上に残って両方の現場を見ていた。



調査兵団が飛び立った壁の上に、『鎧の巨人』が這い上がってきた。
壁の上からは、戦士長が作戦を遂行しているのが見渡せた。
ライナーの仕事は、馬を殺してここから離れること、ただそれだけすればいい。
リヴァイ兵長がどれだけ強くても、俺達の戦戦士長には敵わない。



ライナーは、リヴァイ兵長の事を思い出して背筋が凍る思いを思い出した。
今、巨人の中にいるライナー本体の首には、リヴァイ兵長の突き刺した刃が突き刺さったままだ。
危なかった・・・。あの時、意識を全身に移すのが一瞬でも遅れていれば、あのまま即死だった・・・。




しかし、壁の中を調べようなんてどうやって思いついたんだ・・・、アルミンか?


ライナーがふと脇を見ると、そこにはエルヴィン・スミスが一人立ってこちらを横目で見ていた。



手を伸ばせば、エルヴィン団長を叩き殺すことも出来る距離・・・だが、ライナーはそれをしなかった。
そうする必要はない。迷わずに、作戦通りに先に馬を殺せばいい・・・と思ったその時、ライナーの背後、シガントシナ区で巨人化の閃光がひかった。


エレンが巨人化したのだ。

ライナーには、これは意外だった。
自分達の主目的であるエレンが、自分から姿を現すとは思ってもいなかったからだ。

その『エレンの巨人』は『鎧の巨人』を睨むと、ライナーから遠ざかるように走って行った。






ライナーは考えた。
エレンが巨人のまま、シガンシナ区の壁を乗り越えてトロスト区まで逃げたなら、俺達がここに留まって戦う理由がなくなる。
ここで調査兵団を壊滅させることは出来ても、2ヶ月で硬質化を身につけたヤツを、再び壁内に戻すのはまずい・・。
ヤツが、完全な”座標の力”を身につけた後では、手遅れだ・・・。



とまで考えて気付いた。
エレンの狙いが『鎧の巨人』の目標を、馬から自分に移させるための囮であることに。

この作戦はエルヴィン団長の考案に違いない。
『鎧の巨人』はエルヴィン団長を見て、それから、エレンを追ってシガンシナ区へと降りて行った。
「考える時間もくれねぇってわけですか・・・。ったく団長、せっかく登ったってのによぉ・・」と思いつつ。


エルヴィン団長がアルミンに伝えた作戦はこうだ。
・馬を『鎧の巨人』から護る為に、エレンをシガンシナ区で巨人化させて囮とする。
・ライナーがエレンを無視して馬を殺しに動いたなら、エレンの巨人はそのまま外を大回りして『獣の巨人』の背後を追い、
リヴァイ兵長とエレンの巨人で、『獣の巨人』を挟み撃ちにする。
・『獣の巨人』を討ち取れなくても、主目的であるエレンが逃げたなら、敵は包囲網を崩すはず。

そこにアルミンが付け加えた。
・超大型巨人がどこに潜んでいるかわからないので、念のために壁から離れた位置で戦うこと。



エレンは、噴水広場を『鎧の巨人』と戦う場に決めた。
前回の戦いでは、ほとんど勝ってた。一対一ならオレは勝てる!!
単純な格闘能力なら、アニ・・・『女型の巨人』の方がずっと手強かった!!!
そして、今は”硬質化”の能力も身につけている。
硬質化を体の一点に集中させると、よく強固になる。だから、全身に硬質化を張り巡らせた『鎧の巨人』の鎧など、簡単に打ち砕けるのだ。








エレンは、ライナーの顔面を渾身の力で殴りつけた。
お前には、ここがどこだかわかるか?ここは・・・オレの・・・オレ達の故郷があった場所だ!!!!!
取り返してやる!!!お前らをぶっ殺して、お前らに奪われたすべてを!!!!

エレンのその強い思いは、『エレンの巨人』の叫び声となった。


















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進撃の巨人 18巻 74話 「作戦成功条件」

2016年10月19日 | 進撃の巨人
エレンは壁の上から一気に穴へ向かって飛ぶと、穴の真下で巨人化し、一気に壁を作った。
巨人から自力で這い出てきたところを、ミカサが立体起動装置で救い上げる。
この日の為に、何度も何度も練習を積んできたことだった。







外門の穴は、エレンの巨人で完全にふさがった。
いとも簡単に成功した事に、エレン自身が信じられなかった。



あの時、超大型巨人が開けた穴・・・自分達の生活をめちゃくちゃにした穴が・・・ふさがった。
リヴァイが声をかけた。「まだだ、ヤツラが健在なら何度塞いでも壁は破壊される。わかってるな?
ライナーやベルトルトらすべての敵を殺しきるまで、ウォール・マリア奪還作戦は完了しない」

エレンはその目に闘志を宿して答えた。 「当然・・・わかっています」



エレン達はそのまま次の内門の穴へと向かっていたが、巨人を一体も見かけることはなかった。


その時、エレンと別行動をとっていたアルミンがある事に気付いた。
壁の上で野営していたらしき跡があり、その下には鉄製のカップが3つ、すでに冷め切っていました、とエルヴィンに報告した。
エルヴィンもこの事にピンときた。
調査兵団は馬と立体起動装置を駆使して全速力でここに到達した。目視なら2分前が限度なはずで、鉄製のカップが2分が冷め切るはずがないのだ。という事は、調査兵団がここに来る事を、もっと事前に感知していた、と考えられる。

エルヴィンは、アルミンに向かって「アルレルト、君はその頭脳て何度も我々を窮地から救い出してくれた。まさに今、その力が必要な時だ」と言うと、兵士達を集めて「これより、アルミン・アルレルトの指示に従い捜索を続けよ」


アルミンはびっくりした。
まだ考えもまとまっていないのに、自分にこの局面を突然任されても・・・。
エレンが出来る出来ないにかかわせずやれ、と言われ続けていたプレッシャーをアルミンも感じた。
アルミンは次の指示を!と詰め寄る兵士達に、とりあえず思いつく作戦を言ったが、自信はなかった。

エルウィンは「彼は我々の大きな武器の一つだ」と言って、そのまま任せた。
「この敵地で長居は出来ない。我々には短期決戦のみに活路が残されている。
全てが敵の思惑通りなら、それにつきあうのも手だろう。まあ何も、隠し事があるのは彼等だけではないからな」
と作戦続行を命じた。


アルミンは焦っていた。
もうすぐエレンが来てしまうのに、敵がどこにいるのかわからない・・・・。
まずい・・・どうする…失敗したら・・もう本当に後がない・・・終わりなんだ、何もかも。
わからない・・・敵はいつもありえない方法で僕らの予想外から攻めてくる・・・。



そう思った時、アルミンは閃いた。

そして、全員を集めると「全員で壁の中を調べてください!!」と指示を出した。
だが「その根拠は?」と言われると「・・・勘です」と答えたので、兵士達に冗談じゃないと責め立てられた。
アルミンは必死に「誰でも思いつく常識の範疇にとどまっていては、到底敵を上回れないのです!!」と言い切る。

それを聞いていたエルヴィンは、作戦を中止して、アルミンの指示に従うようにと命じた。
「時に厳格に、時に柔軟に、兵士の原理原則に則り、最善を尽くせ。指揮系統を遵守せよ、我々はここに勝利する為に来たのだ」と。

エルヴィンの期待に応えるかのように、アルミンも「二手に分かれて壁の調査を!!捜索開始!!」と指示を出した。
兵士達は納得していない。何も見つからねば全責任はアルミンにかかってくる。


兵達は一斉に、巨大な壁をコンコンと根気よく叩いて回った。
すると、ある一か所に異変を見つけた。
「ここだ!ここに空洞があるぞ!!」
そう叫んだ兵は、壁の空洞から出てきたライナーによって殺された。



次の瞬間、ライナーがその首を切られていた。
壁の上に居たリヴァイ兵長が物凄い勢いで飛び出し、ライナーの命を狙ったのだ。



右手でライナーの首を切り、左手でライナーの胸から背を突き刺してトドメを刺した。
普通の人間ならこれで死んでいたはずだったが、ライナーはそのまま落下すると、眩しい閃光を放って巨人化した。

リヴァイは大きな声で「クソッ!!これも『巨人の力』か!?」と自分の失敗を悔やんだが、もう遅かった。







エレンは、鋼の巨人をじっと睨みつけるように見ていた。
全てを奪った憎き敵、巨人化したならば、自分が相手になる。


エルヴィンが鋼の巨人対策を命じた時だった。
調査兵団のいる壁をぐるりと取り囲むように無数の閃光が半円を描いてて光った。
その光の一つ一つが巨人で、その中心に全身を毛で覆われた猿のような「獣の巨人」がいた。








形成逆転。
すっかり罠にはまるのを、じっと待っていたのだ。
調査兵団は、この状況に目を見開いて驚き、おののくばかりだった。

さらに『獣の巨人』は遠く離れた距離から巨石を投げて、穴をふさいだ。
これで調査兵団が馬を使って逃げる事は出来ない。
全ては、計算されつくされた事のようだった。




エルヴィンはこの戦いを受けて立つ他ない事を覚悟した。その為にここに来たのだ。
「我々は互いに望んでいる。ここで決着をつけようと。人類と巨人共、どちらが生き残り、どちらが死ぬか」













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進撃の巨人 18巻 73-2「はじまりの街---オレ達ならできる」

2016年10月19日 | 進撃の巨人
エレンは、ウォール・マリアの真っ暗な夜の森の中を歩いていた。
ここは人類の居住区ではなく、巨人の居住区だ。

ウドガルト城の襲撃時、夜だけというのに巨人が活動できたのは、月明かりの微量な太陽の反射を糧にして動いていると仮説が立つ。その新種[月光の巨人]を避けるために、新月・・・月の光すらもない日を選んだのだ。

闇は人の視界も奪う。
巨人に、超至近距離まで近寄らないと、こちらもまた気付くことができないのだ。
調査兵団達は、緊張の中を進んでいく。





エレンは、自分の手がガタガタと震え、心臓がドクンドクンと音をたて、冷や汗をかいていることに気付いた。
(くそっ!こんな調子で失敗したらどうなる!?ウォール・マリア奪還に失敗したら・・・・!?
どれだけの人が失望すると思う?
また次の機会なんてもんがあると思うか!?
やっぱオレじゃダメなのか・・・?
こなヤツが・・・どうやって人類を救うっていうんだよ?こんなヤツがどうやって・・・!)



エレンの異変に気付いたアルミンが声をかけた。 「どうしたの?怖いの?」
エレンは弱気を悟られまいと「はぁ!?怖くねぇし!!」と声を荒げて反論した。



アルミンは淡々と自分の話をはじめた。
「僕なんかずっと震えが止まらないんだけど。エレンって巨人が怖いと思ったことある?
普通は皆巨人が怖いんだよ・・・。僕なんか、君と仲間が喰われている時、まったく動けなくなったんだ・・・。
でもそんな僕を君は、巨人の口の中から出してくれたんだ。・・・なんで君はあんなことができたの?」



あの時とは、新兵として初めて巨人と戦った日、エレンは巨人に足をちぎられ、死にかけていた。
エレンはその時の事を思いだしていた。

「あの時・・・思い出したんだ、お前がオレに本を見せた時のことを。

それまで壁の外の事なんて考えたこともなかった、毎日空か雲を見て過ごしていたっけ。
そこへお前が本を持って来たんだ。
オレとお前は街の子供達と馴染めない、はみ出し者同士、ただそれだけだった。
あの時、お前の話を聞いて、お前の目を見るまでは。
お前は楽しそうに夢を見ているのに、オレには何もなかったんだ。そこで初めてオレは不自由なんだと知った。








オレはずっと鳥かごの中で暮していたんだって気付いたんだ。
広い世界の小さな籠で、わけのわかんねぇ奴らから自由を奪われてる。
それがわかった時、許せないと思った。



何でか知らねぇけど、オレは自由を取り返すためなら、力が沸いてくるんだ。
そう言ったエレンは、もう震えてはいなかった。
「ありがとうなアルミン、もう大丈夫だ」とアルミンに礼を言った。




山の中をどれくらい歩いただろうか、いつしか見覚えのある山だった。
いつもエレンとミカサが薪を拾いに来る裏山に辿り着いていたのだ。
エレン、ミカサ、アルミンの3人の心臓はドクンドクンと大きく音を立てて動いた。
「僕達・・・帰ってきたんだ・・、あの日、ここから逃げて以来、僕らの故郷に」



もう二度と戻れるなんて思ってもいなかった。
街はあの日のまま、時間を止めたように静まり返っていた。

シガンシナ区の街に出た調査兵団は、馬に乗って一気に壁まで駆け抜けた。
エルヴィンが叫んだ。
「日が昇ってきたぞ!!巨人に警戒せよ!!これより作戦を開始する!!総員立体起動装置に移れ!!!」

その号令と同時に100人のフードを深くかぶった兵士達が、壁へ向かって飛び出した。




敵の目的はエレンを奪う事はある。敵がエレンに壁をふさぐ能力があると知っているかどうかはわからないが、
我々がここに向かっていると知った時点で、壁をふさぎに来たと判断するだろう。
そして、破壊された外門をふさぐと踏んでるはずだ。

我々の目的が壁の修復以外に、シガンシナ区内のどこかにある「地下室」の調査だということは、既に敵(ライナーとベルトルト)に伝えてある。
ならば、先にふさぐ外門にエレンは必ず現れる。
ただし、フードで顔を隠した100人の兵士が同時に外門を目指す。
だけがエレンかわかった時は、既に外門をふさいだ後だ。



エレンは、壁の上に降り立って、故郷の街を見下ろした。
そこには人類の生活があった。生まれ、育った町は狭くて人々がいかに密集して暮らしていたかがわかる。
ついさっきまで人々が楽しく平和に暮らしていた街が、今は廃墟だった。



オレの家はあの辺りだ。あそこに・・・全てを置いてきたんだ。



故郷を前に呆然と立ちすくむエレンをリヴァイが叱責した。
「止まるな!!外門を目指せ!!」

エレンはその声に突き動かされるように、再び外門を目指して飛んだ。
後ろにはぴったりとミカサがついている。
(大丈夫だ、取り返してやる、オレには出来る・・・イヤ、オレ達ならできる
なぜなら、オレ達は生まれた時から皆特別で、自由だからだ














エルヴィン、ハンジ、リヴァイはこの巨人の巣窟で、1体の巨人も現れない事におかしいと気付いていた。
だが、作戦を実行するしかない。なにせここは敵の懐の中なのだから。

調査兵団のこの動きを、ライナーとベルトルトが息を殺して見ていた。
















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進撃の巨人 18巻 73話-1 「はじまりの街---人類は何を叫ぶのだろう」

2016年10月19日 | 進撃の巨人
ウォール・マリア領は、人類に残された領土の3分の1にあたる。
5年前にこの領土を失った人類は、多大な財産と人命を失った。

そしてそれらの損失は始まりでしかない。
残された二枚の壁の中で、誰もがそう思った。
私達は、もう生きてはいけないのだ、と。



人類が明日も生きられるか、それを決めるのは人類ではない。
全ては巨人に委ねられる。
なぜなら人類は、巨人に勝てないのだから。

だが、ある少年の心に抱いた小さな刃が



巨人を付き殺し、その巨大な頭を大地に踏みつけた



それを見た人類は何を思っただろう。
ある者は誇りを、
ある者は希望を、
ある者は怒りを、叫び出した。







では、ウォール・マリアを奪還したなら、人類は何を叫ぶだろう。
人類はまだ生きていいのだと、信じる事ができるのだろうか。
自らの運命は、自らで決定できると信じさせる事ができるだろうか。
ウォール・マリアさえ奪還すれば



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進撃の巨人 18巻 72話-2 「奪還作戦の夜---開始!!」

2016年10月19日 | 進撃の巨人
エルヴィン団長を初めとする調査兵団幹部は、ザックレー総統やピクサス指令に出発の報告をした。
その拳を心臓にあて、この奪還計画にその命を捧げることを誓った。





翌日の日没前、調査兵団は馬と遠征用荷物を壁の上へとあげていた。
「いよいよだな」



今回の作戦は秘密裡に行われるはずであったが、壁の下から不意に大歓声が上がった。
前日の肉を仕入れてもらったリーヴス商会のフレーゲルから、情報が漏れたようだった。

大観衆は口々に調査兵団へ向かって叫んでいた。
「ハンジさーーーーん!!!ウォール・マリアを取り戻してくれぇぇ!!!」
「人類の未来を任せたぞぉぉぉぉ!!!」
「リヴァイ兵長!!この街を救ってくれてありがとお!!!」
「全員無事で帰ってきてくれよーー!!!でも領土は取り戻してくれぇぇぇぇ!!!」



リヴァイは「勝手を言いやがる」と言うも、まんざらでもなさそうだった。

そんな大観衆に、ジャン、コニー、サシャらの若い新兵は両手を挙げて応えていた。
「任せろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」



エルヴィンはこの光景に感動していた。
「調査兵団がこれだけ歓迎されるのはいつ以来だ?私が知る限りでは、初めてだ」
いくら人類の為に命を懸けても、命を捨ててもそれでも馬鹿にされ、罵られ、理解などされなかった自分達の戦いが、今、皆の戦いとして受け入れられている・・・。

エルヴィンは、誰よりも大きな声で「うおおおおおおお!!!」と叫んで拳をつきあげた。
ここに帰ってこれるかどうかはわからない。
けれど、人類の未来の為につき進むのみ!!





「ウォール・マリア最終奪還作戦!!開始!!!!」
人々の大歓声に送られて、調査兵団は壁を降りた。











ウォール・マリアの壁の上では、ライナーとベルトルトが調査兵団が来るのを待ち構えていた。

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進撃の巨人 18巻 72話-1 「奪還作戦の夜---奪還した後はどうする?」

2016年10月19日 | 進撃の巨人
シャーディス教官が話した内容は、ハンジからエルヴィンを初めとする調査兵団幹部の5人に伝えられた。



・エレンの父、グリシャ・イェーガーは壁の外から来た人間である。
・壁の中の人類に協力的であった。
・壁に入ってから、独学で王政を探っていた可能性が高い。
・ウォール・マリアが突破された瞬間に、王政の本体であるレイス家まですっとんで行き、レイス家を皆殺しにした。

ハンジはエルヴィンの顔を見ながら「そんなお父さんが、調査兵団に入りたいと言った10歳の息子に見せたいと言った家の地下室、死に際にそこにすべてがあると言い残した家の地下室・・・そこに一体何があると思う?」と聞いた。

エルヴィンの意識は、遠く自分が子どもだった頃の父の言葉を思い出して、ぽつりとつぶやいた。
「言ってはいけなかったこと・・・・」

だが、すぐに気を取り直して「いや、グリシャ氏が言いたくても言えなかったこと、つまり初代レイス王が我々の記憶から消してしまった『世界の記憶』・・だと思いたいが、ここで考えたところでわかるわけがない。

本日ですべての準備は整った。ウォール・マリア奪還作戦は2日後に決行する。
地下室には何があるのか?知りたければ見に行けばいい、それが調査兵団だろ?」

この作戦は秘密裏に実行されることを互いに確認しあって、解散した。




だが、解散後もリヴァイはエルヴィンの部屋に残った。
「気の早い話だが・・・ウォール・マリアを奪還した後はどうする?」

エルヴィンは淡々と答えた。
「脅威の排除だ。壁の外にはどうしても我々を巨人に食わせたいと思ってる奴らがいるらしいからな。もっとも、それが何なのかは地下室に答えがあると踏んでいる。だから、それから後は地下室に行った後に考えよう」

リヴァイはその答えに不満そうに顔をしかめた。
「その体では巨人の格好のエサだ、現場の指揮はハンジに託して、お前はここで果報を待て。それでいいな?」

だがエルヴィンは反論した。「ダメだ。エサで構わない、囮に使え。指揮権も私がダメになったらハンジだ。確かに困難になるだろうが、人類にとって最も重要な作戦になる。私がやらねば成功率が下がる」



リヴァイは納得しなかった。
困難な作戦は失敗するかもしれない、その上エルヴィンまで失ってはその後が続かない。人類の”その後”の為にはエルヴィンに残ってもらい、その頭脳をフル回転させていることが、人類にとって一番いい選択だと思っていた。
それでも反論しようとするエルヴィンに向かって「待て待て、これ以上俺に点前を使うなら、お前の両脚の骨を折る。
ウォール・マリア奪還作戦は確実にお留守番しねぇとな」
と凄んだ。




エルヴィンは「ハハ・・・それは困るな」と力なく笑ってから、まっすぐにリヴァイを見て、
「でもな、この世の真実が明らかになる瞬間には、私が立ち会わねばならない」と言い切った。




リヴァイはエルヴィンに近寄りながら「それが・・・そんなに大事か?てめぇの脚より?」と凄んだ。
「ああ」
「人類の勝利より?」
「ああ」

その答えにリヴァイの足は止まり「・・・そうか・・・。エルヴィン・・・お前の判断を信じよう」と言い残して部屋を去った。



エルヴィンの夢。人類の勝利より、自分の命より大事なことは、父との思い出の中にあった。
父が立てた仮説の真実を知りたい。その思いは強かった。




その夜、2ヶ月分の食糧費を使って、調査兵団の兵達に肉が振舞われた。
数ヶ月以上肉を食べていない兵士達は、気が狂ったように肉にむさぼりついた。
特にサシャは、他人の肉にまで喰らい付く勢いで、コニーとジャンが力付くで止めた。



コニーは「こんな奴でも、以前は人に肉を分け与えようとしてたんだよな・・・」とつぶやいた。
以前とは、3ヶ月前の固定砲整備の日で、あの時もウォール・マリア奪還作戦にでる前日だった。
きっとウォール・マリアを取り戻す、そうすればまた牛も羊も増えるから、だから今は肉を皆に分けてもいい、とサシャが言ったのだ。
その日、超大型巨人がまた現われて・・・・・、いろんな事があって・・・・。
「あれからまだ3ヶ月しか経ってないのか」とつぶやくエレンに、コニーは「まだ3ヶ月だ。でも3ヶ月で俺達あのリヴァイ班だ、スピード出世ってやつだよな?」と笑った。



エレンは、コニーの前向きな考え方に少し笑って、少し元気になった。



食事の席で、ジャンが話の流れで「一番使えネェのは死に急ぎ野郎だよ」とエレンに向かって言った。訓練兵だった頃にあだ名にまでされた話題だ。
ここのところ意気消沈していたエレンだったが、その日は珍しく挑発にのり、ジャンとエレンは訓練兵だった頃のように二人でとっくみあいのケンカを始めた。



だが、あの頃と違って、二人の思いは同じ方向を向いていて、対立する要素はない。
「お前、巨人の力がなけりゃ何回死んでたんだ?その度にミカサに助けてもらって、これ以上死に急いだらぶっ殺すぞ!」とジャンが殴れば「お前こそ母ちゃん大事にしろよ!」とエレンが殴り返した。

いつのなら、ここでミカサが止めに入って・・・のはずが、今日はミカサも誰も止めてくれず、二人はケンカの収集が付けられずに困っていたら・・・騒ぎを聞きつけたリヴァイ兵長が止めに入った。












食事の片付けが終わり、エレン、アルミン、ミカサは3人で外にでた。
訓練兵だったときも、よくここで3人で話していたっけ。

エレンは「教官にあって楽になったよ、考えてもしょうがねぇことばかり考えてた。
何でオレはミカサみてぇな力がねぇんだって妬んじまったよ。オレは美夏さリヴァイ兵長にはなれねぇからダメなんだって・・。
でも兵長だってミカサだって、一人じゃどうにもならないよな、だからオレ達は自分に出来る事を何か見つけて、それを繋ぎ合わせて、大きな力に変える事ができる。
人と人が違うのは、きっとこういう時の為だったんだ」
と言った顔は穏やかだった。


その時、道を駐屯兵のおじさんが歩いてきて、3人にはその人とハンネスさんとがダブって見えた。
3人でいると、よくハンネスさんが声をかけてくれてったっけ・・・。
でも、もうハンネスさんはいない。
ミカサは「ウォール・マリアを取り戻して・・・襲ってくる敵を全部倒したら・・・また戻れるの?あの時に・・・」とこぼれるように言った。



にぎわう街、駆け巡る子供達、優しい駐屯兵のおじさん、帰る家、お父さん、そしてお母さん・・・。
それはもう二度も戻ってこない。


エレンは「戻すんだよ。でも・・・もう全部は返ってこねぇ・・・、ツケを払ってもらわねぇとな」と言い、3人はそのまま黙り込んでしまった。



その時、アルミンが顔をあげた。
「それだけじゃないよ、海だ!商人が一生かかってもとり尽くせないほどの巨大な塩の湖がある!!
壁の外にあるのは巨人だけじゃないよ、炎の水、氷の大地、砂の雪原、それを見に行く為に調査兵団に入ったんだから!」




だが、エレンはアルミンから力なく目をそらした。
「あ・・あぁ、そう・・・だったな」
エレンが調査兵団に入ったのは、巨人を駆逐し、復讐する為だった。




エレンの目を見たアルミンは立ち上がって、わざと元気に力説した。
「だから!!まずは海を見に行こうよ!!地平線まですべて塩水!!エレンはまだ疑っているんだろ!?絶対あるんだから!見てろよ!!」
立ち上がったアルミンを見るエレンの顔は、あがっていた。
「しょうがねぇ、そりゃ実際見るしかねぇな」
アルミンのはしゃいだ声が響いた。
「絶対だよ!?約束だからね!?」
アルミンの思いは、エレンにあった。




その3人の話を、リヴァイが聞いていた。


それぞれの夢や思いを抱えて、ウォール・マリア奪還作戦は明日の日没と共に決行される。


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